地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2018年1月中央の動き


中央の動き


◎生活保護制度の国と地方の協議で合意 ― 厚労省等
 生活保護制度に関する国と地方の協議が12月5日に開かれ、生活保護制度の見直しで合意した。生活保護受給者の生活習慣病発症・重傷化予防事業の創設や医療扶助適正化のため「付き添い指導員」による真に必要な受診奨励を求める一方、窓口負担では子どもを対象外とすることが必要だとした。同時に、無料低額宿泊所など「貧困ビジネス」排除とともに、被保護者就労準備支援事業について小規模自治体も取り組めるようにすべきだとした。
 これを受けて、厚労省の社会福祉審議会生活保護部会は12月11日、報告書をまとめた。生活困窮者の定義・理念を法令で明記するほか、従事者研修・市域を超えたネットワークづくりを都道府県事業と位置付ける、希望する町村は一時的な自立相談支援機能を担えるようにするとした。併せて、「健康管理支援事業」の創設、無料低額宿泊事業の最低基準の法令化などを盛り込んだ。なお、厚労省が12月6日発表した被保護者調査(2017年9月分)によると、被保護者は212万5,803人で前年より1万9,311人減ったが、被保護世帯は164万2,273世帯で、前年より5,371世帯増えた。


◎新しい経済政策パッケージを閣議決定 ― 政府
 政府は12月8日、新しい経済政策パッケージを閣議決定した。ひとづくり革命では、幼児教育費を3~5歳児はすべての子どもで無償化するが、1~2歳児は対象を住民税非課税世帯にとどめた。併せて、保育士賃金をアップする。また、年収590万円未満世帯を対象に私立高校を実質無料化する。これらの財源は消費税10%アップ分を活用する。また、生産性革命では3%の賃金アップ企業に法人税負担を引き下げるほか、中小・小規模事業者には固定資産税が3年間ゼロとなる制度も創設するなどとした。
 一方、12月14日開催した国と地方の協議の場では、地方財政対策と少子化対策を協議。地方六団体は、少子化対策の抜本強化が必要だと指摘し、①結婚、妊娠・出産の希望をかなえる支援②子育て負担の踏み込んだ支援③子どもの貧困対策の充実強化 ― などを要請。併せて、地方が主体的に取り組めるよう①地方の実情に合わない「従うべき基準」抑制②地方の自由度が高い財源確保 ― なども求めた。
◎2018年度の与党税制改正大綱決定 ― 自民・公明両党
 自民・公明両党は12月14日、2018年度税制改正大綱を決めた。森林環境税、国際観光旅客税を創設。また、地方消費税の配分基準見直し、中小企業設備投資の固定資産税軽減措置なども盛り込んだ。なお、ゴルフ場利用税は引き続き「検討」とされた。同改正を受けて、総務省は12月22日、18年度地方税の収入見込額を発表した。総額は前年度比3,639億円(0.9%)増の39兆5,022億円で、うち都道府県税は17兆6,930億円(前年度比3,088億円,1.7%減)、市町村税は21兆8,092億円(同6,727億円、3.2%増)。税目別では道府県民税5兆4,950億円(同6.5%減)、事業税4兆2,433億円(同2.2%減)、市町村民税9兆9,748億円(同6.8%増)、固定資産税9兆306億円(同0.5%増)など。
 森林環境税(国税)は、24年度から市町村が年額1,000円を個人住民税に上乗せ徴収、同額を森林環境譲与税(市町村10分の9、都道府県10分の1)を譲与。配分は私有林人工林面積10分の5、人口10分の3などで按分。使途は、間伐や人材育成・担い手確保などに限定する。今回の税制改正について、地方3団体は森林環境税の創設や地方消費税の配分基準見直しを評価する一方、固定資産税の特例措置について「国の経済対策のため削減することはなじまない」と批判した。
◎2017年の人口動態年間推移を発表 ― 厚労省
 厚労省は12月22日、2017年の人口動態年間推計を発表した。同年の出生数は94万1,000人と、2年連続して100万人を割り、統計開始(1899年)以来の最少。一方、死亡数は134万4,000人で戦後最多。この結果、40万3,000人の自然減となった。11年連続の自然減で、減少数も年々増加している。なお、結婚は60万7,000組で戦後最少を更新。離婚は21万2,000組だった。
 また、同省が12月14日発表した16年の医師などの調査結果によると、医師は31万9,480人で2年前調査に比べ2.7%増加した。なお、人口10万人当たりの医師数は240.1人(前回調査比6.5人増)で、徳島県315.9人をトップに京都府314.9人、高知県306.0人で多く、逆に、埼玉県が160.1人で最も少なく、次いで茨城県180.4人、千葉県189.9人で少ない。
◎2018年度の地方財政対策・予算案を公表 ― 総務省
 総務省は12月22日、2018年度の地方財政対策を公表した。子ども・子育て支援や地方創生への歳出を計上し、一般財源総額は前年度比356億円(0.1%)増の62兆1,159億円を確保。地方財政計画の規模は同2,800億円(0.3%)増の86兆9,000億円程度とした。地方交付税は同3,213億円(2.0%)減の16兆85億円。また、財源不足は同7,927億円(11.4%)減の6兆1,783億円に縮小。臨時財政対策債も同587億円(1.5%)減の3兆9,865億円に抑制した。歳出では、公共施設等の老朽化対策で公共施設等適正管理推進事業費の対象に河川や港湾等の長寿命化事業やユニバーサルデザイン化事業を追加し総額4,800億円(37.1%増)を計上、まち・ひと・しごと創生事業費も1兆円を確保した。
 また、総務省は同日、2018年度予算案を発表した。総額は同803億円(0.5%)減の16兆969億円で、新規にシェアリングエコノミー活用推進事業1億円、地域IoT実装総合支援パッケージ施策4.6億円、地域におけるIoTの学び推進事業1.5億円、会計年度任用職員制度の円滑な制度導入支援0.2億円、企業・大学等との連携による女性・若者等の消防団加入促進支援事業1.2億円などを計上した。
◎地方提案の対応方針を閣議決定 ― 政府
 政府は12月26日、地方からの提案の対応方針を閣議決定した。提案207件のうち186件(90%)に対応、今通常国会に提出する地方分権一括法案に盛り込む。具体的には、地域公共交通の制度・運用の見直し(全国知事会等)、観光地等でのドローン利用の確保(山梨県忍野村等)、所有者不明土地・空き家等の適正管理の見直し(鳥取県等)、保育所等の面積基準の見直し(大阪府等)、無床のへき地診療所の管理者の常勤要件緩和(兵庫県等)、罹災証明制度の見直し(大分市等)などが盛り込まれた。
 一方、政府は12月22日、まち・ひと・しごと創生総合戦略(2017改訂版)を閣議決定した。東京一極集中の是正に向け地方に新しい人の流れをつくるための施策を拡充。きらりと光る地方大学づくり、企業の地方拠点強化・税制拡充、空き店舗等の遊休資産の活用などを盛り込んだ。また、18年度政府予算案のまち・ひと・しごと創生関連事業が総額1兆7,844億円となった。地方創生推進交付金は前年度同額の1,000億円、新規に地方大学・地域産業創生事業100億円を計上。このほか、地方のしごとづくり2,041億円、若い世代の結婚・出産・子育て1,878億円などを計上した。
◎投票環境の向上方策で研究会発足 ― 総務省
 総務省は12月26日、投票環境の向上方策研究会の初会合を開いた。ICTを活用した投票環境の向上策のほか、①期日前投票等の利便性向上②選挙人名簿制度の見直し③在宅介護を受ける選挙人等の投票機会の確保 ― などを検討。今年夏にも報告をまとめる。
 昨年10月の衆院選では投票率(小選挙区)が53.7%と前回を上回ったものの低下傾向が続いている。このため、インターネット投票の課題なども検討する。障害者や離島・山間部等で投票がしやすくなるほか、開票事務の効率化も期待できる。一方、同研究会が16年9月にまとめた報告書では、マイナンバー制度を活用したネット投開票の可能性を示すとともに、課題に本人確認の確実な実施、セキュリティ対策、システムダウン・データ改ざんへの対応などを挙げ、国際的にも普及していない。さらに、電子投票が12年に新見市で初めて実施されたが、翌年の可児市議選で機器が故障、その後普及していない。なお、自民党の「若者の政治参加検討チーム」は12月6日、インターネット投票の活用などを求める提言を野田総務相に提出した。
◎地方団体の定員管理調査結果を発表 ― 総務省
 総務省は12月26日、2017年の地方団体定員管理調査結果(4月1日現在)を発表した。総職員数は274万2,596人で前年より5,333人増えた。1994年の328万2,492人をピークに減少を続けたが、今回、23年ぶりに増加に転じた。行政部門別では、一般行政91万5,727人(33%)、教育部門101万9,060人(37%)、警察部門28万8,347人(11%)、消防部門16万644人(6%)、公営企業等会計部門35万8,818人(13%)。一般行政部門はピークの94年より22%減少したが、うち防災は約3倍、児童相談所等は約1.8倍、福祉事務所は1.6倍増加。一方、教育部門は児童・生徒の減少で20%減少。警察部門は14%、消防部門は10%それぞれ増えた。団体別では、都道府県が138万7,703人(前年度比0.0%減)、市町村が135万4,883人(同0.5%増)。
 また、総務省は同日、17年地方公務員給与実態調査結果(4月1日現在)を発表した。全団体のラスパイレス指数は99.2で、前年より0.1ポイント低下。うち都道府県は100.2(同0.1低下)、政令市99.9(同0.2低下)、市99.1(同率)、町村99.2(同0.1上昇)など。このほか、16年度中に119団体が給料表の適正化など、125団体が諸手当等の適正化に取り組んだ。
◎学校の働き方改革で緊急対策発表 ― 文科省
 文科省は12月26日、学校における働き方改革の緊急対策を発表した。中央教育審議会が12月22日の中間報告で、①登下校時の見守りや給食費の徴収管理は「学校以外が担うべき業務」②部活動等は「必ずしも教員が担う必要のない業務」 ― などと整理。これを受けて、学校や教師・事務職員等の標準職務明確化のガイドラインを作成し教師の勤務時間管理を徹底するとした。
 また、厚労省は12月25日、柔軟な働き方検討会の報告を発表した。雇用型・自営型テレワークのガイドラインを改訂するとともに、副業・兼業は労働者のスキルアップ、企業での人材活用面でメリットがあるとし、厚労省のモデル就業規則を副業・兼業も認める内容に改めるとした。農水省も「農業の働き方改革検討会」の初会合を12月19日に発足させた。農業従事者の減少・高齢化に対応するため魅力ある職場環境の整備の在り方を検討、3月にも報告をまとめる。12月25日から「農業の働き方改革アイデア」の一般募集も始めた。また、国交省も12月25日、働き方改革を支える今後の不動産の在り方検討会を発足させた。なお、総務省は2月23日に「地方公共団体における多様な人材の活躍と働き方改革に関する研究会報告」をまとめている。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)