地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2018年2月中央の動き


中央の動き


◎消防団の充実強化で大臣書簡 ― 総務省
 総務省の消防団員の確保方策検討会は1月9日、報告書をまとめた。大規模災害の危険性が高まる中、地域防災の中核を担う消防団で団員の減少・高齢化が進んでいる。このため、新たに大規模災害時に限定して出動する「大規模災害団員」の導入を提言。風水害や地震・津波など出動する場合の枠組み例も示した。これを受けて、野田総務相は1月19日、消防団の充実強化に向けた協力を求める大臣書簡を全都道府県知事・市町村長に送付した。
 また、総務省は18年度から被災市区町村応援職員確保システムと災害マネジメント総括支援員制度を創設する。第1段階支援では被災地域ブロック内の自治体が支援、それだけでは対応困難な場合は第2段階支援として全国の自治体で支援するなど被災市区町村応援職員確保システムとして改めて体系化。さらに、災害対策で陣頭指揮の経験を持つ都道府県・政令市職員(管理職)を「災害マネジメント総括支援員」として総務省が登録。災害時には、被災市区町村の長への助言・被災都道府県・総務省との連携など被災市区町村が行う災害マネジメントを総括的に支援する。


◎地方大学創生交付金など説明 ― 内閣府
 内閣府は1月11日、地方創生に関する都道府県等担当課長説明会を開き、2018年度から創設する地方大学・地域産業創生事業(総額100億円)の詳細を示した。自治体・地方大学、産業界等が連携して地域の産業振興・専門人材育成の計画を策定。国が、同計画事業を地方大学・地域産業創生交付金で支援する(原則5年間)。併せて、同対象大学には文科省の交付金等を内閣府交付金と連動して執行する。このほか、①地方圏と東京圏の大学で単位互換制度による学生の交流を促進②東京圏在住の地方出身学生等の地方還流・地元在住学生の地方定着のため地元企業でのインターンシップを実施 ― なども補助金で助成する。
 また、内閣府は同地方大学振興策と、東京の大学定員の抑制、地方での若者の修学・就業を促進することを盛り込んだ地域大学の振興・若者の雇用機会の創出による若者の修学・就業促進法案を今通常国会に提出する。東京の大学の定員抑制は「特定地域内の大学の定員を増加させてはならない」と規定し、政令で東京23区を指定。その期間は10年間の時限措置とする。
◎デジタル・ガバメント実行計画を決定 ― 政府
 政府のeガバメント閣僚会議は1月16日、デジタル・ガバメント実行計画を決めた。世界に先駆けた日本型デジタル・ガバメント実現を目指すとし、①行政サービスの100%デジタル化②行政保有データの100%オープン化③デジタル改革の基盤整備 ― を挙げた。具体的には、マイナンバー制度等を活用して既に行政が保有している情報は、添付書類の提出を一括して撤廃する。このため、住民票の写し・戸籍謄抄本等や登記事項証明書の提出不要化を内容とする法案を提出する。さらに、民間サービスの連携も含め引っ越しや介護、死亡・相続などでワンストップサービスを進める。このほか、各府省がデジタル改革の中長期計画を18年上半期を目途に策定するなどとした。
 一方、野田総務相は1月26日、マイナンバー制度の更なる推進を求める書簡を全都道府県知事・市町村長に通知した。マイナンバー制度の「情報連携」が昨年11月から本格運用を開始したが、その基礎がマイナンバーカードだと強調し、同制度の活用を要請した。なお、マイナンバーカードの普及率(対人口)は9%にとどまっている。
◎各都道府県設定の2018年米生産目安を発表 ― 農水省
 農水省は1月17日、米の生産調整(減反)廃止に伴い各都道府県が設定した18年産米の生産量の「目安」を発表した。同省は、適正な生産量を前年と同水準の735万トンとしたが、それを基に東京と大阪を除く45道府県が設定した。北海道や青森、千葉など12道県が増産する一方、岩手や富山、福井など22県は前年度と同様に据え置き、福島や静岡、熊本など8県は生産量を減らした。新潟・兵庫・京都は独自指標を示した。
 また、農水省は1月19日、16年の農用地区域内農地面積と荒廃農地面積を発表した。農用地等確保の基本指針で2025年時点の確保すべき農地面積の目標を403万㌶としているが、16年12月31日現在の全国の農地面積は402.8万㌶で前年より0.4万㌶(0.1%)減った。北海道で2,200㌶増加したほか、千葉県で600㌶、岡山県で400㌶増えた一方、佐賀県で1,600㌶、宮崎県で800㌶、愛媛・福岡両県で600㌶それぞれ減少した。一方、16年の荒廃農地面積は全国で約28.1万㌶だった。うち再生利用が可能な荒廃農地は約9.8万㌶(農用地区域内では約5.9万㌶)、再生利用が困難な荒廃農地は約18.3万㌶(同7.4万㌶)だった。
◎所有者不明土地対策で初の関係閣僚会議 ― 政府
 政府は1月19日、所有者不明土地等対策推進のための関係閣僚会議の初会合を開いた。所有者不明の土地の総面積が九州より広い410万㌶との推計もあるが、今後、さらに拡大が予想されるため、国交省・農水省・法務省が個別に進めていた対策を一括する。菅官房長官は会合で、関係法案を今通常国会に提案するとした上で、「土地に関する基本制度について根本的な検討が必要」と述べ、今年夏の「骨太の方針2018」に今後の取組の方向性を示すよう指示した。
 なお、関係省が今国会に提出を予定している法案の内容は、①道路等の公共事業の手続では収容委員会に代わり都道府県知事が裁定(国交省)②都道府県知事が利用権(上限10年間)を設定し事業実施(同)③所有者不明土地の管理のため自治体の長に不在者財産管理人等の選任申立権を付与(法務省)④共有持分の共有者1人でも農地バンクに貸付可能とする(農水省)⑤共有者1人でも市町村に森林の経営・管理の委託を可能とする ― など。
◎首相が施政方針演説で憲法改正に期待 ― 通常国会
 第196回通常国会が1月22日招集され、安倍首相の施政方針演説と財政演説、経済演説が行われた。安倍首相は、「働き方改革」「人づくり革命」で同一労働同一賃金・長時間労働の慣行打破、全世代型の社会保障制度への転換を進めるとした。同時に、「財政健全化も確実に実現。夏までにプライマリーバランス黒字化の達成時期と具体的な計画を示す」とした。さらに、「各党が憲法の具体的な案を持ち寄り、憲法審査会で議論を深め前に進めていくことを期待する」と述べた。なお、自民党憲法推進本部では、3月25日の党大会までに党改憲案をまとめ、国会に提出する方針。
 また、麻生財務相は財政演説で、子育てへの消費税増収分活用で2020年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成は困難になるが、「財政健全化の旗は決して下ろさず、黒字化を目指す目標は堅持する」と強調。茂木経済財政相は経済演説で、「2018年度も歳出改革を着実に推進する」とし、経済・財政や地域比較データの「見える化」を徹底・優良事例の全国展開に取り組むとした。なお、内閣府が1月23日の経済財政諮問会議に示した試算では、プライマリーバランスの黒字化が27年度と従来の試算より2年遅れる。
◎全国都道府県財政課長等会議を開催 ― 総務省
 総務省は1月25日、全国都道府県財政課長等合同会議を開き、2018年度の地方財政見通し・予算編成上の留意事項等(事務連絡)を示し、関係課長等が説明した。18年度の地方財政対策では、自治体の基金残高増加を理由にした財政余裕論を影響させなかったと強調する一方、今年夏の「骨太の方針」では新たな財政健全化目標とともに、改めて基金や一般財源総額の同額ルールの在り方が議論されると指摘。各自治体では、基金の考え方や増減の理由、今後の活用方針などの情報公開に努めるよう要請した。また、地方交付税のトップランナー方式の算定について、18年度に新たに導入する業務はないが、16・17年度に導入した18業務については3年目・2年目の見直しを実施するほか、本庁舎清掃など9業務については小規模団体で民間委託が進んでいない状況を踏まえて算定するとした。
 このほか、昨年の地方公務員法等改正で「特別職」「臨時的任用」の厳格化、「会計年度任用職員」制度創設などが盛り込まれたが、「施行は20年4月1日だが、大きな改正だ」として着実な準備などを要請した。
◎移住・交流施策の在り方検討会が報告書 ― 総務省
 総務省の移住・交流施策のあり方検討会は1月26日、報告書を発表した。定住人口でも交流人口でもなく地域に多様に関わる地域外の人材「関係人口」を地域づくりに貢献する存在と位置付け、その関わりを継続的に築く新たな仕組みを提言した。具体的には、市町村が「関係人口」を募る、取組に賛同する「賛同者」に伝統行事などの地域づくり活動や住民との交流事業の企画・立案・実施への参画呼びかけを提案した。
 一方、内閣府は1月16日、小さな拠点・地域運営組織フォーラム「地方創生・小さな拠点学校」を都内で開催した。事例紹介では、役場業務と自主事業を組み合わせた宮城県丸森町の筆甫地区振興連絡協議会、家庭・学校・地域連携による教育支援に取り組む三重県名張市青蓮寺・百合が丘地域づくり協議会、民設民営コミュニティビジネスを応援する小平市のMYstyleなどの取組が紹介された。これを受けて、小田切徳美明治大学教授が、小さな拠点運営の「つまずきポイント」への対応方法として、①住民の声を聞く②自治会等との役割分担③次世代の参加機会づくり④事業計画をもつ⑤形骸化への早期対応 ― を提案した。
◎2017年の住基人口移動を発表 ― 総務省
 総務省は1月29日、2017年の住民基本台帳に基づく人口移動を発表した。同年の日本人の市区町村間移動者数は489万3,581人で前年より1万2,614人(0.3%)増加。また、都道府県間の移動者数は228万7,310人で前年より1万1,979人(0.5%)増加。都道府県内の移動者数も260万6,271人で前年より635人(0.02%)増えた。都道府県別では、転入超過は東京、千葉、埼玉、神奈川、福岡、愛知、大阪の7都府県で、東京が7万5,498人で最も多い。一方、転出超過は福島、兵庫、北海道、新潟など40道府県。うち福島は8,395人で最も多い。市町村の転入超過は、東京特別区の6万1,158人をトップに、大阪市、札幌市など408市町村。逆に、転出超過は1,311市町村(76%)で、北九州市の2,248人を筆頭に堺市、長崎市で多い。
 一方、人口減少で公立の小中学校が現在の3分の1程度に減少するとの推計が1月18日示された。東洋大学の根本祐二教授が国の小中学校の適正規模を基に統廃合が進んだ場合を推計した。特に、人口が少ない島根・和歌山・高知・岩手などでは現在の10分の1にまで減少。東京・大阪でも半減するとした。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)