地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2018年5月中央の動き


中央の動き


◎ふるさと納税の返礼品で大臣通知 ― 総務省
 総務省は4月1日、ふるさと納税の返礼品送付について改めて「良識ある対応」を求める総務大臣通知を各都道府県知事宛てに通知した。2008年に創設された同制度は、16年には約2,844億円、約1,271万件と拡大。その中で、一部自治体の高額返礼品の送付などで「返礼品競争」が過熱。総務省は16年4月に返礼割合を3割とするよう全自治体に通知した。しかし、なお一部で高額返礼品や、他自治体産の返礼品を送付するなどの事例があるため、「制度全体に対する国民の信頼を損なう」として、改めて「良識ある対応」を求めた。
 また、総務省はこのほど、「ふるさと納税活用事例集」をまとめた。「移動図書館車の復活」(徳島県石井町)、「離れていてもまちづくりに参加」(北海道ニセコ町)、「使い道を共感してもらう12基金」(横須賀市)、「日本三大盆踊りの共演」(郡上市)、「災害救助犬・セラピー犬を育てる」(徳島県)など60件の事例と、「コンパクトシティ推進加速」(夕張市)など6件の企業版ふるさと納税を紹介している。


◎初の無電柱化推進計画を策定 ― 国交省
 国交省は4月6日、無電柱化法の施行を受けて初の無電柱化推進計画を策定した。我が国の電柱は全国で約3,600万本と欧米諸国と比べて多く、さらに毎年7万本ずつ増えている。計画では、18年から3年間で1,400キロ㍍の新たな無電柱化に着手。具体目標(無電柱化率)を、防災のための第1次緊急輸送道路は34%を42%に、バリアフリーの特定道路は15%を51%に、重要伝統的建物群保存地区道路は26%を74%に引き上げる。財政措置では社会資本整備総合交付金の活用や固定資産税の減免、占用料減額などを行う。
 また、国交省は4月13日、今後の発注者のあり方で中間まとめを発表した。建設業就業者や国・自治体の担当職員減少などを踏まえ、適切な予定価格と工期確保・労働時間の確保、自治体実績評価型による参入機会の確保などを提言した。さらに、同省は4月27日、都内で改正公共工事品質確保法を受けた多様な入札契約方式モデル事業の報告会を開催した。板橋区、上田市、桜井市、徳島県美波町が取組みを報告した。
◎市長会創立120周年で市長フォーラム ― 全国市長会
 全国市長会は4月11日、同会創立120周年記念で市長フォーラムを開催した。西尾勝東京大学名誉教授が「分権時代における基礎自治体の果たすべき役割」と題して基調講演。基礎自治体の変遷を解説した上で、①今後は税源偏在に伴う税財源の再配分が課題となる②都市と農村の土地政策一元化のため省を超えた検討組織が必要③住民自治強化のための仕組みづくりが必要 ― などと述べた。次いで「人口減少社会における都市自治体経営」をテーマに市長らが討論。「事務権限の移譲の前に財政力の確保が最大の課題」(水谷網走市長)、「手上げ方式では部分最適となり、市役所の全体最適とならない懸念も」(太田豊田市長)などの意見が交わされた。
 一方、地方六団体は4月27日、都内で「合区の早期解消促進大会」を開催した。自治体関係者約330人が結集、自民党など9の政党が参加する中、2019年の参議院選挙に向け「合区」の早期解消を求める大会アピールを採択した。また、全国知事会は4月17日、新会長に上田清司埼玉県知事を選任した。山田会長(京都府知事)退任に伴うもので、任期は2年。
◎保育園等の待機児童数を発表 ― 厚労省
 厚労省は4月11日、保育園待機児童の状況を発表した。17年4月1日の待機児童数は2万6,081人だったが、0歳児を中心に年度途中の申込が増加し、10月1日時点では5万5,433人に増えた。政令市では横浜市1,877人、さいたま市1,345人、大阪市1,335人などで、中核市では鹿児島市654人、大分市622人、西宮市532人、那覇市520人などで多い。また、政府の幼児教育無償化検討会は4月5日、関係団体ヒアリングの一環として自治体から意見聴取した。経済政策パッケージに盛り込まれた幼児教育無償化のうち、無認可保育園等の対象範囲などを検討しているもので、自治体側は増加が予想される財政負担への国の措置などを求めた。
 一方、民間団体「こども食堂安心・安全向上委員会」は4月4日、「こども食堂」が全国で2,286カ所開かれ、利用している子どもは延べ約100万人以上になると発表した。なお、農水省が4月13日に発表した「子供食堂」の実態等(回答274件)によると、開催頻度は、「月1回」(49%)、「2週間に1回」(39%)が多く、平日は夜(56%)、土日は昼(39%)が多い。子どもの参加は平均24人だった。
◎2017年10月の人口推計を発表 ― 総務省
 総務省は4月13日、2017年10月1日現在の人口推計を発表した。総人口は1億2,670万6千人で、前年に比べ22万7千人減少。7年連続の減少。年齢別では15歳未満が1,559万2千人で、その割合は12.3%と過去最低。15~64歳も7,596万2千人で、割合も60.0%に低下。一方、65歳以上は3,515万2千人で、割合も27.7%と過去最高を更新した。都道府県別では、7都県で増加。うち東京は前年比0.73%の増。一方、40道府県で人口が減少。秋田の1.40%減をトップに青森、岩手、山形、高知の5県で1%超の減少となった。
 また、厚労省の国立社会保障・人口問題研究所はこのほど、2045年までの地域別将来推計人口を発表した。30年以降、全都道府県で人口が減少。さらに、5%超の減少が30~35年は16道県、40~45年には28道県に増える。その中でも、東京は総人口の割合が15年の10.6%が45年には12.8%に上昇、引き続き一極集中が進む。市町村別では、94%の団体で45年の人口が15年より減少、うち21%の団体で0~2割、33%の団体で2~4割、さらに41%の団体では4割以上の減少になる。その一方で、65歳以上人口の割合50%超の団体が15年は1%だが、45年には28%に増えるとした。
◎共助による地域づくり推進で報告 ― 国交省
 国交省は4月13日、今後の共助による地域づくり検討会の報告書を発表した。多様化・複雑化する地域課題の解決には多様な主体の参画が不可欠だとして、各主体が地域課題の認識を共有し解決に向けて議論できる「プラットフォーム」の提供を提案。併せて、①経済的利益も生み出す「社会的インパクト投資」の拡大②エリアマネジメントなど公共物を活用した地域づくり③空き店舗等の遊休資産、伝統文化、専門家のマッチングとシェアリング ― などを提案した。
 一方、総務省はこのほど、買物弱者対策の改善通知の対応状況などを発表した。昨年、厚労省に対し移動販売の営業許可・設備基準の緩和・見直しを求めたが、同省が都道府県の判断による簡素化・緩和を認め、既に長崎県や岡山県で具体的な対応を始めた。併せて、自治体の取組状況として、「コンビニ一体型の買物施設開設」(宮城県七ヶ宿町)、「商工会が移動販売を実施」(群馬県みなかみ町)、「買物代行の実証実験」(島根県津和野町)、「広報誌で買物支援協力店の情報提供」(石川県志賀町)などを紹介した。
◎民間の高齢従業員の給与縮減なども調査へ ― 人事院
 人事院は4月17日、今年の人事院勧告に向けて民間給与実態調査を5月1日から開始すると発表した。事業所約1万2,500カ所を対象に給与・賞与の支給総額などを調査するが、今回は一定年齢時の常勤従業員の給与縮減の仕組みも調べる。また、人事院はこのほど、国家公務員の定年退職後の就労・生活状況の調査結果をまとめた。定年退職後も働きたいと思った者が84%で、前回調査(14年)より6ポイント上昇。働きたい理由では「生活費が必要」が88%で前回調査より19ポイント上昇した。働きたい勤務形態は「フルタイム勤務」が56%、「短時間勤務」が39%だった。
 一方、政府は4月20日、18年度の国家公務員の「ゆう活」実施方針を決めた。全府省等を対象に7~8月に早朝出勤・早期退社や超過勤務縮減、フレックスタイムの普及などに取り組む。地方公務員にも同様の取組を要請する。ちなみに、昨年の「ゆう活」では、国家公務員は3.9万人が参加し定時退庁が72%、地方公務員では全都道府県と19政令市・366市町村が参加、朝方勤務や定時退庁などを実施した。
◎今後3年の地方行財政改革で議論 ― 諮問会議
 政府の経済財政諮問会議は4月24日、新たな経済再生・財政健全化の計画策定に向け、地方財政について審議した。有識者議員が、今後3年程度は「これまで同様、一般財源の総額に目安を設けながら、国と歩調を合わせ歳出改革に対応」すべきだと提案。併せて、①地方税収の増加分は地方歳出の増でなく債務残高の引下げに充てる②義務付け予算と地方単独事業の関係明確化 ― なども要請した。これに対し、野田総務相は「(目安は)一般財源総額の安定的確保が不可欠」だと強調するとともに、①必要な歳出を地方財政計画に計上し(税収増でも)一般財源総額を確保②国による地方単独事業の実績・効果判断は地方団体の自律性を損なう ― などと指摘した。これを受けて安倍首相は「国と基調を併せて歳出改革を推進。プライマリーバランスの黒字化目標に向けた枠組みを検討する」よう指示した。なお、前日の4月23日に総務大臣・地方六団体会合が開かれ、六団体側が地方一般財源総額の確保などを要請。野田総務相は、「一般財源総額確保が不可欠であることを主張する」と述べた。
 一方、財務省の財政制度等審議会財政分科会は4月25日、地方財政について審議。一般財源総額の「同水準ルール」で地財計画が継続的に決算額を1兆円上回り、基金も21.6兆円と過去最高になっていると指摘。「同水準ルール」の見直しと地方の財源余剰を国の債務縮減にもつなげるべきだとした。建議に盛り込む。
◎2040年代の自治体の課題等で1次報告 ― 総務省
 総務省の自治体戦略2040構想研究会は4月26日、第1次報告をまとめた。少子化による急速な人口減少と高齢化を迎える2040年頃に想定される課題に向けて現時点で取り組むべき課題を整理したもの。
 報告は、個々の市町村は行政のフルセット主義を排し圏域単位で都市・地方の自治体が有機的に連携する必要があるとした。また、人口減少県では市町村と一体施策を展開していることを踏まえ都道府県・市町村の2層制を柔軟化し各地域に応じた行政の共通基盤を構築することも求められるとした。このほか、①三大都市圏では急激な高齢化局面に入るため、元気な高齢者が支援に回るほか圏域内自治体が連携②標準的な人生設計の消滅に向けて、日本型雇用システムから柔軟な就労システムを構築③多くの都市でスポンジ化が顕在化、インフラも老朽化するため、人口30万以上の商圏・生活圏域レベルでの集積やIoTを活用したインフラ点検の省力化 ― などを提案した。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)