地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2018年8月中央の動き


中央の動き


◎第32次地方制度調査会が発足 ― 政府
 第32次地方制度調査会の第1回総会が7月5日、開催された。会長に市川晃住友林業社長を選出。安倍首相が、人口減と高齢化がピークを迎える2040年への諸課題に対応するため①圏域における自治体の協力関係②公・共・私のベストミックス ― のあり方を諮問した。これを受けて、同調査会は7月31日に専門小委員会を開催。総務省がまとめた自治体戦略2040構想研究会報告書を中心に今後の検討課題などを審議。次回から、同報告書が課題に挙げた少子高齢化やインフラ整備、労働などについて関係省庁からヒアリングする。
 自治体戦略2040構想研究会の第1・2次報告では、2040年頃には一部大都市を除き人口が現在の3~5割に減少するため、自治体は従来の半分の職員でも機能を発揮するスマート自治体へ、フルセット主義から圏域単位の行政への転換を訴えた。これに対し、先の総会では、「市長の意見を聞いておらず唐突感があり、地方創生の取組に水を指す」(立谷全国市長会長)、「机上の発想ではなく、現場の実態を踏まえてほしい」(荒木全国町村会長)などの注文が出ている。


◎2017年度のふるさと納税調査結果を発表 ― 総務省
 総務省は7月6日、2017年度のふるさと納税の現況を発表した。受入総額は約3,653億円(前年度比1.3倍)で、5年連続して過去最多を更新。受入件数は約1,730万件(同1.4倍)。受入額トップは泉佐野市の135億円、以下、宮崎県都農町、都城市、佐賀県みやき町、同上峰町などが続く。また、95%の団体が募集の際の使途選択を可能としている。ふるさと納税の経費は、返礼品調達費用39%、事務費等7%など全体で56%だった。また、18年度の住民税控除額(都道府県・市町村合計)は2,448億円で、前年より1.4倍増えた。東京都の646億円をトップに、神奈川県、大阪府、愛知県、兵庫県など大都市部で多かった。
 一方、同省は今年4月に改めて返礼割合の見直しなどを通知したが、返礼割合3割超など見直し意向がない一部団体として、茨城県境町、関市、静岡県小山町、近江八幡市、泉佐野市、宗像市、福岡県上毛町、唐津市、嬉野市、佐賀県基山町、同みやき町、佐伯市の12団体を初めて公表した。野田総務相は同日の会見で、「一部の事例によって制度そのものが否定されかねない。見直しを速やかにとってほしい」と述べた。
◎来年度概算要求で地方財政措置申し入れ ― 総務省
 政府は7月10日、2019年度の概算要求基準を閣議了解した。社会保障経費について高齢化等に伴う自然増6,000億円を認める一方、公共事業などは10%削減しその3倍を優先課題推進枠で要望できるなどとした。これを受けて、総務省は同日、各府省に概算要求の際に留意すべき地方財政措置31項目を申し入れた。幼児教育の無償化では地方の意見を踏まえるとともに所要財源の確保、待機児童の解消では保育士の確保や処遇改善の財源確保を要請。また、公共施設の老朽化対策の財源確保も求めた。
 一方、総務省は7月24日、18年度の地方交付税大綱を発表した。総額は15兆480億円(前年度比3,021億円減)。不交付団体は東京都と77市町村で、前年より2団体増えた。交付団体から不交付団体となったのは宮城県大和町、守谷市、茨城県上三川町、印西市、神奈川県愛川町、富士市、愛知県武豊町、滋賀県竜王町の8団体。また、共通電子納税システムの来年10月運用開始に向け、全国知事会など地方3団体による地方税共同機構設立委員会が7月4日に発足した。
◎幼児教育無償化の導入延期など提言 ― 全国市長会
 全国市長会は7月10日、幼児教育の無償化実現に向けた緊急アピールを採択した。国は幼児教育無償化を2019年10月から実施する方針だが、都市では例規改正や保護者への周知、システム改修などの準備が必要だとし、制度詳細の早期提示と「2020年度当初からの実施が望ましい」と導入延期を求めた。併せて、保育需要拡大への対応で保育人材の育成・確保、施設整備費の財政措置、認可外保育施設やベビーシッター等に対する指導監督基準の見直しなども求めた。なお、7月の全国知事会議でも保育料無償化の早期実現とともに、①家庭で保育を行う世帯へのバウチャー券配布②放課後児童クラブの無償化 ― などを提言している。
 一方、厚労省が7月19日に発表した16年度の許可外保育施設の現況調査によると、施設総数は6,558カ所(前年比365カ所減)で、うちベビーホテルが1,530カ所、その他が5,028カ所。入所児童数は15万8,658人(同1万9,219人減)。また、政府は7月20日、児童虐待防止対策強化に向け、転居した場合の児童相談所間や警察との情報共有などの緊急総合対策を決めた。
◎2018年の住民基本台帳人口を発表 ― 総務省
 総務省は7月11日、住民基本台帳に基づく人口等を発表した。2018年1月1日現在の日本人総人口は1億2,520万9,603人で、前年に比べ37万4,055人(0.3%)減少した。9年連続の減少。出生者数は94万8,396人、死亡者数は134万774人で、39万2,378人の自然減となった。また、年少人口は1,573万5,692人、生産年齢人口は7,484万3,915人、老年人口は3,462万9,983人。その割合は、それぞれ12.6%、59.8%、27.7%で、前年よりそれぞれ0.1%、0.4%減少する中、老年人口は0.5%増加した。都道府県別では、増加は東京、埼玉、神奈川、沖縄、千葉、愛知の6都県で、41道府県で減少。増加数は、東京が7万2,137人で最も多く、増加率も東京が0.6%増でトップ。減少は北海道3万4,805人が最も多く、減少率では秋田の1.4%減が最も高い。
 なお、厚労省が7月20日に発表した17年簡易生命表によると、男の平均寿命は81.1年、女は87.3年で、前年に比べ男女とも0.1年伸びる。また、生存数をみると、75歳まで生存する割合は男75.3%、女88.1%、90歳までは男25.8%、女50.2%となっている。
◎消防庁長官に黒田氏など幹部人事を発令 ― 総務省
 総務省は7月24日、幹部人事を発令した。内閣官房地方創生総括官に出向した稲山博司消防庁長官の後任に黒田武一郎自治財政局長が、同後任には林﨑理官房長が就任。また、新設される皇位継承式典事務局長に出向する山崎重孝自治行政局長の後任に北崎秀一内閣府官房長が就任した。いずれも8月1日付け。
 このほか、地方公共団体情報システム機構理事へ転出した篠原俊博地方行政等担当審議官の後任に吉川浩民行政課長が、同後任には森源二選挙課長が就任。また、官房付となった境勉財政等担当審議官の後任に多田健一郎東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局企画・推進統括官が、全国市町村国際文化研修所学長へ転出した池田憲治地域力創造審議官の後任に佐々木浩公務員部長がそれぞれ就任。また、公務員部長には杉本達治消防庁国民保護・防災部長が、同後任に大村慎一内閣府地方分権改革推進室次長が、公務員課長には宮地俊明大臣官房付が就任した。このほか、岡山県副知事に転出した菊池善信交付税課長の後任に出口和宏調整課長が、同後任に福田毅内閣参事官がそれぞれ就任。また、地域政策課長に藤井雅文公営企業課長、同後任に山越伸子財務調査課長、同後任に長谷川淳二地方債課長、同後任に伊藤正志準公営企業室長がそれぞれ就任した。
◎過労死防止対策大綱を閣議決定 ― 政府
 政府は7月24日、過労死防止のための対策大綱を閣議決定した。新たに過労死防止対策の数値目標(2020年度)として、①週労働時間60時間以上の雇用者の割合5%以下②勤務間インターバル制度(勤務と次の勤務との間隔)の導入企業割合10%以上③年次有給休暇の取得率70%以上 ― などを掲げた。また、自治体には大綱を踏まえた地方公務員への対応を要請。労働組合等にも大綱を踏まえた協定・決議などを求めた。
 なお、総務省は7月10日、ホワイトカラー労働者の勤務間インターバルの状況をまとめた。「14時間以上15時間未満」が22%で最も多く、「11時間未満」は10%。教員では「11時間未満」が26%だった。5年前と比べ「11時間未満」は0.4ポイント上昇、教員では「11時間未満」が8.1ポイント上昇した。また、同省が発表した17年就業構造基本調査によると、有業率は76.0%で、福井県80.3%、山梨県79.7%、富山県79.1%などで高い。一方、介護している者の有業率は55.2%で、長野県60.7%、山梨県60.0%、新潟県59.2%で高い。なお、介護・看護を理由に前職を離職した人は9万9千人で、うち有業は2万5千人だった。
◎新たな防災・減災で北海道宣言 ― 全国知事会義
 全国知事会議が7月26・27日、北海道で開催された。相次ぐ災害を踏まえ「日本の防災・減災対策を新たなステージへ ― 北海道宣言」を採択した。被災地支援体制の構築や避難行動を促すガイドライン見直しなどを提言。併せて、「防災省」の創設も提言した。地方税財源では、地方交付税の総額確保や幼児教育等の無償化への対応などを提言。大都市圏と地方圏で対立する税源の偏在是正措置も一部修正し合意した。上田会長は、会合後の会見で「東京から分捕って分けようという議論をしているわけではない。(政策を)実現することが『行動する知事会』だ」と強調した。
 一方、全国市長会は7月11日、防災対策特別委員会の設置を決めた。先の西日本豪雨では市長会ホームページに「豪雨災害掲示板」を開設、被災市の支援ニーズを一元把握できるようにしたが、市区長同士が直接連絡できる仕組みなどを構築する。また、今回の西日本豪雨では、全国知事会など地方3団体等が支援自治体を決める「応援職員確保システム」が初めて適用され、総務省が今年度創設した「災害マネジメント総括支援員」も倉敷市などに初めて派遣された。
◎小中学校の学校給食費無償化で初調査 ― 文科省
 文科省は7月27日、公立小中学校の給食費無償化の初めての調査結果を発表した。小中学校ともに無償化しているのは76団体(4.4%)で、このほか4団体が小学校のみ、2団体が中学校のみ無償化していた。なお、無償化団体のうち71団体が町村。無償化対象の児童は約4万人、生徒は2万人で、全国の児童・生徒の0.6%、0.7%にとどまる。このほか、7団体が第2子以降を、91団体が第3子以降を無償化、311団体では給食費や食材購入費の一部を補助している。
 一方、全団体の92%に当たる1,608団体では全小・中学校で完全給食を実施しているが、132団体は実施していない。給食施設整備に多額の経費がかかる、農家が多く米飯を持参などが理由。また、学校給食費の徴収では、87%が金融機関の引落としを利用、22%は児童生徒が直接、学校担任に手渡している。また、41%の団体では児童手当から学校給食費を徴収していた。なお、学校給食費の未納者は小学校が0.8%、中学校が0.9%で前回調査(12年度)に比べ減った。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)