地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2018年9月中央の動き


中央の動き


◎地区レベルの将来人口予測ツールを開発 ― 国交省
 国交省の国土技術政策総合研究所は8月1日、地区レベルの将来人口予測ツールの改良版を発表した。これまで市区町村単位でしか得られなかった5歳階級別・性別人口、世帯数の将来予測が小地域(町丁・字)単位で可能となるほか、2015年国勢調査結果に基づく最新の将来予測も可能になるとしている。
 一方、国交省は8月10日、17年度末の下水道を利用できる人口が初めて1億人を突破したと発表した。汚水処理人口普及率は90.9%(前年90.4%)に上昇したが、なお1,200万人が汚水処理施設を利用できず、特に人口5万人未満市町村の普及率は79.4%にとどまる。都道府県別では東京都99.8%、兵庫県98.8%、滋賀県98.7%で高く、徳島県60.4%、和歌山県63.6%、高知県72.5%で低い。また、国交省は8月9日、インフラメンテナンス大賞授賞式を都内で開催した。IOTを活用した広域的水道施設管理(松江市)、学校施設の長寿命化(名古屋市)などが表彰された。このほか、ドローンによるインフラ点検・診断技術の開発・導入促進に向けたドローン・インフラメンテナンス連続セミナーを9月14日に都内で開催する。


◎市議会の定数・報酬で調査結果 ― 全国市議会議長会
 全国市議会議長会は8月1日、市議会議員の定数・報酬(2017年12月31日現在)をまとめた。全国814市議会の議員数は1万9,100人で前年より156人減少した。1市当たり23.5人だが、政令市は58.7人、10万~20万未満は25.4人、5万未満は17.3人だった。また、平均報酬月額は議員42万1,600円、議長51万7,100円で、前年に比べ0.14%、0.10%それぞれ上昇。人口段階別(議員報酬)の最高額・最低額は、政令市が95万3,000円~59万9,000円、10万~20万未満は62万円~32万1,000円、5万未満は44万2,000円~18万円だった。
 一方、日弁連は8月24日、総務省の町村議会あり方研究会報告に反対する意見書を公表した。議員のなり手不足が深刻な小規模町村が導入できるとした「集中専門型議会」「多数参画型議会」は、議会に執行機関の役割を求めるなど議会の審議機能・監視機能を低下させると批判した。なお、共同通信が実施した全国の都道府県・市町村の議長アンケートによると、議員のなり手不足を52%の議長が感じており、特に町村議長では59%が不足を感じているとした。
◎今後の高等教育の将来像で中間まとめ ― 中教審
 文科省の中央教育審議会は8月10日、今後の高等教育の将来像の中間まとめを了承した。人口減少で2040年には18歳人口が88万人、大学進学者数は約51万人と現在の80%に縮小する。このため、「高等教育における学びの再構築」を掲げ、①学部等の組織の枠を越えた学位プログラム(単位互換制度)②教員は1つの学部に限り選任となる運用の緩和 ― を提言。また、他大学・産業界・地方自治体との恒常的な連携体制の構築や国立大学における1法人複数大学制度の導入、国公私の枠を越えた連携を可能とする「大学等連携推進法人(仮称)制度」の創設なども提案した。このほか、社会教育事務は今後も教育委員会所管を基本とするが、首長が公立社会教育施設を所管できる特例を認めるとの公立社会教育施設の所管見直しを答申した。
 一方、中核市市長会は8月22日、記録的な猛暑で学校での熱中症対策が喫緊の課題となっているとし、公立学校施設整備(空調設備)の財政支援拡充を文科省に要請した。なお、文科省の昨年4月調査では公立小中学校の空調設備の設置率は49.6%だった。
◎月例給引上げや65歳定年制など勧告 ― 人事院
 人事院は8月10日、国家公務員の給与改定を国会・内閣に勧告した。民間較差是正のため月例給を655円(0.16%)、期末・勤勉手当を0.05月分(4.45月分に)引き上げるよう求めた。この結果、平均給与は年間31万円増加、年間給与は678万3,0000円となる。また、定年を段階的に65歳に引き上げる申出も提出した。60歳超の職員給与は60歳前後の約7割とした。併せて、期間中は現行の再任用制度を存置するほか、当分の間、役職定年制、定年前の再任用短時間勤務制の導入も求めた。さらに、公務員人事管理に関する報告では、国民の信頼回復に向けて①研修等を通じた倫理感・使命感のかん養②セクシュアル・ハラスメント防止対策③公文書の不適正な取扱に対する懲戒処分の明確化 ― を明記。また、働き方改革の一環として超過勤務の上限を原則1カ月100時間・1年720時間とした。
 野田総務相は同日の記者会見で、「適正な定員管理や給与の適正化も引き続き推進。また、地方公務員の定年は国を基準に決定すべきもので、今回の申出や国の制度設計を踏まえ、地方の意見を伺いながら検討を進める」と述べた。
◎スマートシティ構築で中間まとめ ― 国交省
 国交省は8月21日、「スマートシティの実現に向けて」(中間まとめ)を発表した。IoTやAI、ビッグデータなど新たな技術をまちづくりに取込み、インフラ老朽化や防犯、エネルギー消費など都市が抱える課題を解決しようとするもの。その具体例として、生活者は通勤・買物など物理的・時間的な制約から解放され、都市の管理者・運営者には、ビッグデータ活用でリアルタイムのデータ判断や大まかな地域からピンポイント状況に基づく分析・判断などが可能になるとした。モデル地区を選定し、国・自治体・企業などがマネジメント計画を策定、同事業を国が支援する。
 一方、総務省は8月10日、データ利活用型スマートシティ推進事業の対象に、富山市全域(スマートシティ推進基盤構築事業)、京都府全域(データ利活用型スマートシティ京都モデル構築事業)、益田市匹見地区(データ利活用型スマートシティプラットフォーム構築事業)の3地域を選定した。
◎マイナンバーの海外継続利用等で報告書 ― 総務省
 総務省の住民基本台帳制度研究会は8月22日、マイナンバーカードの海外継続利用や所有者不明土地問題に対応する住民票等の除票のあり方について報告書をまとめた。住民票は海外転出時に消除されるため住民でない海外転出者の台帳として活用できないため、戸籍の附票を認証基盤とする「附票管理システム」(仮称)を提案した。併せて、住民票除票の保存期間を戸籍と同様に150年とするよう求めた。なお、代替案で提案した「住所履歴票」(仮称)は国が住所情報を一元集約するため慎重な配慮が必要だとした。
 また、総務省は8月10日、投票環境の向上方策研究会報告書を発表した。滞在地不在者投票では投票用紙等の持参を不要とするほか、在外投票では在外選挙インターネット投票実現に向けた検討を求めた。併せて、電子投票について、これまでの専用機のほかタブレット端末などを用いた電子投票の導入検討が適当だとした。このほか、期日前投票所の混雑解消に向けた投票所の増設、選挙公報の電子データ活用で印刷・世帯配布を早めるよう求めた。
◎障害者雇用の水増しで関係閣僚会議 ― 政府
 政府は8月28日、中央省庁の障害者雇用水増し発覚を受けて関係閣僚会議を開催。再点検の結果、昨年度採用された障害者数6,867人のうち実際の障害者は3,407人で、実雇用率も2.49%から1.19%に低下などが報告された。これを受けて、厚労省は8月31日、全国の自治体にも再点検を指示した。政府は10月中にも検証結果を公表し、障害者雇用の具体策などを議論する。
 一方、厚労省は8月24日、2016年度の介護保険事業状況報告を発表した。第1号被保険者数は3,440万人で前年度より59万人(1.7%)増加、要介護認定者数も632万人で同12万人(1.9%)増えた。また、サービス受給者(1カ月平均)は560万人で同39万人(7.4%)増加。利用者負担を除いた給付費は9兆2,290億円、同1,314億円(1.4%)増加したが、1人当たり給付費は26万8千円で、前年度より0.1千円(0.3%)減少した。都道府県別では、埼玉県が19万9,200円で最も低く、島根県が30万9,900円で最も高かった。
◎2019年度の予算概算要求を発表 ― 総務省
 総務省は8月31日、総務省重点施策2019と同年度予算概算要求を発表した。重点施策では、①地域づくりの担い手・組織、地域を支えるICT人材の育成・確保②シェアリングエコノミー活用など地域の雇用創出と消費拡大③地方法人課税の税源偏在是正の新措置や財政状況の見える化④自治体戦略2040構想の自治体行政スマートプロジェクト、圏域の広域連携を推進 ― などを盛り込んだ。概算要求では、総額16兆4,645億円(前年度比2.3%増)を要求。地方交付税は、前年度比0.5%減の15兆9,350億円を計上するとともに「交付税率の引上げ」を事項要求した。このほか、新規事業に①自治体行政でAI・ロボティクスが処理する業務プロセス構築など自治体行政スマートプロジェクト(2.4億円)②テレワークの全国的な普及・展開(6億円)③ICT活用推進委員(仮称)制度の検討(3.5億円) ― などを計上した。
 一方、地方六団体は8月28日の自民党総務部会で、来年度予算等について①一般財源総額の確保と地方交付税は財源保障機能と財源調整機能を維持・充実②幼児教育・高等教育の無償化では国の責任で地方財源を確保③大規模災害の復旧・復興と防災・減災対策の推進と万全の財政措置確保 ― などを要請した。
◎2019年度の各府省予算概算要求が出そろう ― 政府
 各府省の2019年度予算概算要求が出そろった。総額は102兆円台と過去最大となった。要求額が最も大きい厚労省は前年度比2.5%増の31兆8,956億円。「働き方改革」で3,800億円を計上。また、子育て安心プランを推進するが、来年10月実施予定の幼児教育・保育の無償化は経費を盛り込まず年末までに調整する。文科省は、同12%増の5兆9,351億円を要求。教職員2,615人の改善を求めたが、義務教育費国庫負担金は28億円減の1兆5,200億円に。また、校舎の耐震化・ブロック塀の撤去・改修、教室へのクーラー設置など施設整備事業費は同3倍増の2,432億円を計上した。
 国交省は、同19%増の6兆9,070億円を要求。地域の総合的な防災・減災対策、老朽化対策に対する集中的支援(防災・安全交付金)1兆3,431億円を計上。このほか、コンパクトシティ推進251億円、道路ネットワークによる地域・拠点の連携3,532億円、地域交通ネットワーク実現355億円、空き家・空き地・所有者不明土地の有効活用48億円などを計上した。農水省は同18%増の2兆7,269億円を要求。漁業改革推進に向け水産予算を同7割増の3,003億円計上。新たな資源管理の操業体制確立や沿岸漁業の競争力強化などを推進。また、新たな森林管理システム推進へ林業成長産業化総合対策186億円を計上した。このほか、地方の裁量で実施する農林水産業の基盤整備・農山漁村の防災・減災対策の交付金1,100億円も計上した。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)