月刊『自治総研』
2018年11月中央の動き
中央の動き |
◎第4次安倍改造内閣の総務相に石田真敏氏が就任 ◎行政手続部会で地方の規制緩和検討 ― 規制改革会議 政府の規制改革推進会議は10月12日、来年前半の重点課題に、①第4次産業革命のイノベーション・革命的ビジネス②少子高齢化に対応した子育て・介護支援③地方創生強化 ― を決めた。地方創生では、自治体の行政手続簡素化やオンライン化の先進的取組の横展開と書式統一で事業者の負担を軽減させる。また、農地集積・集約化加速のための制度改革、木材需要拡大のための建築規制見直し、漁業許可制度改革などを進める。このほか、放課後児童クラブの学校内設置促進、介護休暇・介護休業の期間延長も検討する。このため、行政手続部会のほか、農林、水産、医療・介護、保育・雇用など5つのワーキンググループを設置する。 また、政府の国家戦略特別区域諮問会議が10月23日開かれ、就任した片山地方創生担当相が「国家戦略特区の再スタートを切る」とし、特区を活用した「スーパーシティ」構想を提案。具体策に、域内のオンデマンド自動走行、行政手続のワンスオンリー、遠隔診療・医薬品配達、遠隔教育などを挙げた。近く案をまとめ、法的措置や特区制度の強化策などを探る。 ◎来年10月の消費税率引上げを表明 ― 安倍首相 安倍首相は10月15日の臨時閣議で消費税率を来年10月1日に10%に引き上げると表明。併せて、①あらゆる施策を総動員して経済に影響を及ぼさない②幼児教育を無償化③飲食料品に軽減税率を導入 ― すると述べた。また、経済財政諮問会議は10月5日、新内閣発足後初の会合を開き、今後の重点課題に①防災・減災・国土強靱化②全世代型社会保障改革の一体的取組③潜在成長率の引上げと地域の活力向上 ― などを挙げた。同時に、2019年の高齢者数の伸び緩和を踏まえ社会保障関係費の伸びをさらに抑制するよう提案した。 一方、財務省の財政制度等審議会は10月30日、地方財政を審議。国民健康保険について、毎年度3,000億円超の法定外一般会計繰入が各自治体の収支圧迫要因となっているとし、国保の都道府県単位化を機に速やかに解消すべきだとした。また、一人当たり入院医療費に最大34万円(高知県)・最小19万円(静岡県)の較差があるが病症数と関連も強いとし、各地方ごとの医療提供体制の適正化を提案した。新たな財政健全化計画の下での初の予算編成となる来年度予算編成に向け11月の建議に盛り込む。 ◎国と地方の協議の場を開催 ― 政府・地方六団体 国と地方の協議の場が10月15日、開催された。安倍首相が「地方は地方創生に向けた挑戦・工夫を凝らした地域づくりを、国は情報・人材・財政面から積極的に後押しする」と強調。これを受けて上田全国知事会会長が、消費税率の引上げの確実な実施を求めた上で、幼児教育・保育の無償化は国の提唱施策であり国の責任で財源を確保し地方と十分協議するよう要請。このほか、①公立小中学校の空調設備等の予算確保②防災・減災対策の地方単独事業に対する地方財政措置の充実③義務付け・枠付けでは「従うべき基準」を廃止④ゴルフ場利用税の堅持と自動車保有税見直しでは地方財政に影響を与えない ― などを求めた。 一方、全国市長会は10月5日、放課後児童クラブに対する意見を発表した。放課後児童支援員の質向上措置と処遇改善、施設整備の財政措置の拡充などを求めた。また、全国知事会は10月24日、「地方発の行政改革プロジェクトチーム」を発足させた。住民・事業者の視点から行革の成功事例や先進モデルを既設の「先進政策バンク」に登録し横展開を図るほか、実現のネックとなる課題等を国等に提言する。来年7月の全国知事会議までに報告をまとめる。 ◎ふるさと納税返礼品の扱いで事務連絡 ― 総務省 総務省は10月16日、「ふるさと納税に係る返礼品(地場産品)について」(事務連絡)を各都道府県担当課に送付した。同省は、返礼割合3割超・地元産品以外のものは送付しないよう2度の大臣通知で要請。是正しない380市町村(9月1日現在)を公表し、今後も是正しない団体はふるさと納税の対象外とする方針も示している。ただ、「地場産品の定義が曖昧」などの声を受け、①姉妹都市等に基づく相手方の団体の特産物②町内の小売業者が町外から仕入れ販売している商品③市内の事業所が市外で生産している商品 ― は「地場産品とは考えられない」とした。 なお、石田総務相は10月19日の記者会見で、「制度は守っていきたいが、制度に合わない問題も出てきた。制度の趣旨に沿った活動をぜひ皆さん方にお願いしたい」と述べた。併せて、地域資源がないとの声について北海道上士幌町の町内産ミルクで作るジェラートなどの事例を挙げて各市町村にも努力を要請。併せて、「モノを届けるだけでなく、コトもある」とし、地域のイベント参加やお墓の掃除、雪下ろしサービスなど「ぜひ皆さんも智恵を出してほしい」と述べた。 ◎全国森林計画を閣議決定 ― 政府 政府は10月16日、全国森林計画を閣議決定した。計画期間(2019年度~33年度)における森林の整備・保全の目標などを示したもので、計画期末の森林面積を育成単層林996万㌶(現況1,012万㌶)、育成複層林187万㌶(同105万㌶)、伐採立木材積8億2,155万m3、林道開設量6万2,000キロ㍍などとした。また、農水省は同日、森林資源の現況(2017年3月末)を公表した。森林面積は2,505万㌶で、うち民有林1,739万㌶、国有林766万㌶、森林蓄積は52億4,000万m3メートルだった。 一方、全国知事会の国産木材活用プロジェクトチームは10月11日、緊急提言を発表した。国産木材の需要創出に向けた取組をさらに加速するため、①CLTなど新たな木質建築部材を使用した建築物整備や塀の設置などに取り組む自治体や民間事業者の支援強化②建築物の木造化・木質化のため新たな建築資材の技術開発や人材育成③国産木材活用推進のための国民への周知・啓発の充実・強化 ― を求めている。 ◎自治体の障害者雇用の水増し実態を発表 ― 厚労省 厚労省は10月22日、自治体の障害者雇用の再点検結果を公表した。2017年6月1日現在、全自治体の障害者雇用は当初報告の4万9,689.0人が4万5,879.5人に減少、3,809.5人が水増しされていた。都道府県では681.5人を水増しし実際の雇用は7,951.5人に減少、実雇用率は2.65%から2.36%に低下、不足数は5.0人から647.5人に増えた。市町村では769.0人が水増しされ実雇用は2万5,643.0人に、実雇用率も2.44%から2.29%に低下、不足数は439.5人から1,573.0人に増えた。都道府県教育委員会では2,359.0人が水増しされ実雇用は1万2,285.0人に減少、実雇用率は2.22%から1.85%に低下し、不足数は232.5人から2,447.0人と大幅に増えた。団体別(知事部局の実雇用率)では、愛媛県1.04%、山形県1.17%、石川県1.37%で低い。 また、中央省庁の障害者雇用水増しを調査した検証委員会は同日、報告書を発表した。28機関で3,700人(2017年6月1日現在)の水増しがあり、省庁全体の障害者雇用率は1.18%に低下、法定雇用率達成のため19年末までに障害者4,072.5人を採用する。報告書は、水増しの要因について「障害者の範囲や認識方法を恣意的に解釈していた」と指摘した。 ◎高齢者雇用促進へ70歳定年を検討 ― 未来投資会議 政府の未来投資会議は10月22日、全世代型社会保障改革の一環として高齢者雇用促進と疾病・介護予防について審議。安倍首相が、「70歳までの就業機会の確保など多様な選択を許容する方向で検討したい」とし、関連法案を2020年に提出する方針を示した。また、疾病・介護予防のため国民健康保険の予防措置インセンティブ強化の検討を関係閣僚に指示した。事務局が示した論点メモでは、70歳までの就業機会確保の法制度は各社の自由度も残る法制とし個々の従業員は多様な選択肢を選べるほか、65歳までの現行法制度は改正しない。併せて、「年金支給開始年齢の引下げは行うべきでないのではないか」とした。 一方、厚労省は10月19日、地域資源を活用して雇用を創出する実践型地域雇用創造事業の対象に3市を採択した。宍栗市では地域資源ミツマタの高付加価値農林業と高級和紙文化の発信で181人の雇用創出、嘉麻市は食による消費喚起から農業・食品製造業・飲食業を活性化し72人の雇用創出、佐賀市は知識集約型産業の人材育成・テクノロジー利活用セミナー等で126人の雇用創出を図るとしている。 ◎ふるさとワーキングホリデーで説明会 ― 総務省 総務省は10月23日、2018年度のふるさとワーキングホリデーの合同説明会を11月から来年1月まで東京・京都・大阪で開催すると発表した。地方の魅力を体験したいが移住はハードルが高いと思っている若者向けに約2~4週間、地域に滞在し働いて収入を得ながら地域での暮らしをまるごと体感してもらうもの。説明会では実施団体の北海道や福島県、新潟県、石川県、岐阜県、高知県、熊本県などのほか、長野市や島根県海士町などが参加する。 また、総務省は10月9日、2018年度のテレワークマネージャー派遣申請の受付を開始したと発表した。テレワークは、地域の人材流出抑止や雇用創出のためにも推進が求められているが導入率は約14%と低い。このため、同マネージャーを市町村や民間企業などに派遣し、システム導入の方法やトライアル・正式導入に向けた支援などを行う。併せて、同省は「まちごとテレワーク調査事業」の対象団体の公募も始めた。地域全体でテレワークを導入するための課題を分析し有効な方策などを調査・検討する。調査対象は市町村・商工会議所などで、全国で10か所程度を選定する。
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(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)
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