地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2019年1月中央の動き


中央の動き


◎水道財政のあり方で報告書 ― 総務省
 総務省の水道財政のあり方研究会は12月6日、報告書を発表した。全国2,033ある水道事業の財政は、今後の人口減少と老朽化対策・災害対応などで経営環境の悪化が懸念される。このため、都道府県が広域化推進プランを策定し、経営統合や施設の共同設置・管理を進めるよう提言。また、中長期的視点に立った維持・更新が不可欠だとし、各自治体にアセットマネジメントを導入するとともに、国は経営条件が厳しい団体の更新投資に向けた財政措置を検討すべきだとした。
 一方、先の通常国会で継続審議となっていた改正水道法が12月6日、賛成多数で成立した。水道事業の経営基盤強化のため、①都道府県が水道基盤強化計画を策定②水道事業者が水道施設台帳を作成③自治体が民間資金を活用する運営権の設定(コンセッション方式)に労働大臣の許可制を導入 ― などが柱。海外で同方式による水道料金の高騰や水質悪化などの事例が国会審議でも争点になったが、菅官房長官は記者会見で「強制的なものではなく自治体の一つの選択肢だ」と述べた。地方では、宮城県や大阪市は導入の意向だが、奈良県や横浜市は否定的など対応が割れている。


◎2019年度税制改正大綱を決定 ― 自民・公明両党
 自民・公明両等は12月14日、2019年度税制改正大綱を決めた。地方税関係では、偏在是正のため法人事業税の一部(約3割)を特別法人事業税(国税)とし、特別法人事業譲与税で人口を基準に都道府県に譲与。また、車体課税では保有課税の恒久減税が盛り込まれたが、減収分は①エコカー減税の軽減割合の見直し②揮発油税から地方揮発油税への税源移譲 ― などで確保。このほか、ゴルフ場利用税は「今後長期的に検討する」とされた。また、ふるさと納税では、総務大臣が①返礼品割合を3割以下②返礼品を地場産品 ― の基準に適合する自治体を指定。指定されない団体は6月1日以降、ふるさと納税の対象外となる。改正による地方税収見込額は前年度比1.9%増の40兆2,378億円。
 なお、全国知事会は同日、偏在是正措置について「実効性ある仕組みだ」と評価。一方、再配分の減収額が9,200億円に倍増する東京都では、小池都知事が「地方分権の真逆に行く国税化の措置が繰り返される。もはや地方分権は死んだ」と批判した。
◎2019年度の地方財政対策など発表 ― 総務省
 総務省は12月21日、2019年度地方財政対策を発表した。一般財源総額を前年度比1.0%増の62兆7,072億円とした。10年連続の増加。地方交付税も同1.1%増の16兆1,809億円で、7年ぶりの増加。一方、財源不足額は同28.6%減の4兆4,101億円に縮小、折半対象財源不足が解消。臨時財政対策債は3兆2,568億円、同18.3%減に抑制した。この結果、地方財政計画規模は同2.7%増の89兆2,500億円となる。このほか、幼児教育無償化の19年度分の地方負担分2,349億円は子ども・子育て支援臨時交付金を創設し全額国費で対応。防災・減災・国土強靱化3か年緊急対策に基づく地方単独事業として実施するインフラ整備は緊急自然災害防止対策事業費を創設(0.3兆円)し財政措置する。
 また、総務省は19年度総務省予算案を発表した。一般会計総額16兆6,295億円、同3.3%増。新たに自治体戦略2040構想推進でAI・ロボティクス等を活用した業務プロセス構築プロジェクト(1.4億円)と、圏域における広域連携の推進(2億円)を進める。このほか、新規にマイナンバーカードを活用した消費活性化策119.3億円、国民一人一人の働き方を変えるテレワークの推進1.8億円などを計上した。
◎2019年度の予算案を閣議決定 ― 政府
 政府は12月21日、2019年度予算案を閣議決定した。一般会計総額は前年度比3.8%増の101兆4,564億円と初めて100兆円を突破した。①消費税率引上げに伴う社会保障の充実(公費+8,110億円)②消費税率引上げへの臨時・特別措置(国費2兆280億円)③防災・減災・国土強靱化のための3か年緊急対策(概ね7兆円規模) ― が柱。具体的には、3~5歳児の幼稚園・保育所等の無償化や待機児童解消へ32万人分の受け皿整備を進める。また、河川・砂防・道路などの防災・減災(7,153億円)、学校施設等の防災・減災・地震津波観測網に関するインフラ緊急対策(1,518億円)、ため池・治山施設・森林・漁港等の防災・減災対策(1,207億円)などを計上した。
 一方、政府の経済財政諮問会議は12月20日、新経済・財政再生計画の改革工程表2018を決めた。地方行財政改革では、住民一人当たり行政コストを公表し決算情報等の「見える化」を進めるほか、水道・下水道の広域化を推進。また、ICTやAI等を活用した標準的・効率的な業務プロセス構築を推進。国保の法定外繰り入れ解消の計画策定推進と公表を進めるとした。
◎地方創生総合戦略改訂版を閣議決定 ― 政府
 政府は12月21日、まち・ひと・しごと創生総合戦略改訂版を閣議決定した。「第1期の総仕上げと次のステージに向けて」と位置づけ、改めて東京一極集中の是正に焦点をあてた。このため、「わくわく地方生活実現政策パッケージ」の着実な実行とともに、東京圏への転出が地方の政令市・中核市で多いため、新たに中枢中核都市の機能強化による東京圏への人口流失抑止を打ち出した。同対象となる中核市・県庁所在市など82団体を公表。国は、手上げ方式で地方創生推進交付金の上限額引き上げなどで支援する。
 一方、石田総務相は12月20日、地域力強化プランを発表するとともに、総務省地域力強化戦略本部(本部長・総務相)を発足させた。東京一極集中と地方の疲弊が限界に達しているため、「ソサエティ5.0時代の地方」をキーワードに、①就業の場確保②担い手確保③生活サービスの確保④安心して暮らせる地域づくり ― などを首長と認識を共有し双方向のやり取りを進めながら取り組むとした。
◎地方分権の地方提案で対応方針を閣議決定 ― 政府
 政府は12月25日、地方分権の地方提案に関する対応方針を閣議決定した。地方提案188件のうち143件を提案主旨を踏まえて対応、このほか現行規定で対応可能が23件あり、その実現割合は88%となった。政府はこれらを地方分権一括法に盛り込み通常国会に提出する。実現するのは、放課後児童クラブの「従うべき基準」を子どもの安全性確保を前提に「参酌基準」とする。なお、厚労省調査では、放課後児童クラブ待機児童数(2018年5月)は1万7,279人で、特に4~6年生で778人増えた。また、利用児童が少ないお盆・年末年始には近隣保育所と連携した1か所での共同保育を認めるほか、児童養護施設等の児童指導員の資格要件に幼稚園教諭を追加。公立博物館等を自治体の選択で教育委員会から首長部局への移管を可能とする。また、過疎地域等での自家用有償旅客輸送車による少量貨物輸送の許可の柔軟化などが盛り込まれた。
 一方、農水相は12月21日、農地転用許可権限を都道府県に代わって行える指定市町村に京都市、明石市、美作市の3団体を指定した。これで同指定団体は盛岡市、津市、大分市など計57団体となる。
◎国や自治体の障害者雇用で調査結果 ― 厚労省
 厚労省は12月25日、2018年6月1日の国や自治体の障害者雇用集計を発表した。都道府県の障害者数は8,244人で前年より293人増加。実雇用率は同0.08ポイント上昇の2.44%で、法定雇用率(2.5%)をやや下回った。市町村は2万5,241人で前年より617人増加。実雇用率は0.09ポイント上昇の2.38%だった。また、都道府県教育委員会は1万2,670人で前年より332人増加、実雇用率は0.05ポイント上昇の1.90%で法定率2.4%を下回っている。なお、国機関は3,902人で、前年より191人増加したが、実雇用率は1.22%で、依然、法定雇用率(2.5%)の半分以下となっている。
 一方、文科省の中央教育審議会は12月21日、学校の働き方改革の答申案をまとめた。教職員の時間外勤務の上限を月45時間とするガイドラインを適用、勤務時間管理も自己申告でなくICTなどで客観的に把握すべきとした。さらに、1年単位の変則労働時間制を導入し、夏休みに学校閉庁日など一定期間の休日を措置するよう提案。このほか、給特法の「超勤4項目」「教職調整額」は維持するなどとした。
◎認知症の共生・予防で初の閣僚会議を開催 ― 政府
 政府は12月25日、認知症施策推進関係閣僚会議の初会合を開いた。今後の高齢化で認知症が増加するため、新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)で進めてきた「共生」施策に加え「予防」への取組を強化するとした。今年5月にも関係府省の施策をまとめた大綱を策定する。このため、有識者会議と各課題ごとの専門委員会も設置する。安倍首相は同会議で、「認知症の予防の研究と成果の実用化、認知症を発症しても住み慣れた地域で暮らせる認知症バリアフリーの取組が重要だ」と指摘し、各閣僚にとりまとめを指示した。
 また、厚労省は12月3日、高齢者の保険事業・介護予防の一体的実施の有識者会議報告書を発表した。高齢者の疾病予防と介護予防・フレイル予防には市町村が中心に取り組むことが効果的だと指摘。このため、①事業全体をコーディネートする医療専門職を市町村に配置②国保データベースで優先的に支援すべき対象者の抽出と通いの場でフレイル予備軍を把握し医療・介護サービスにつなげる③閉じこもりがちな高齢者にはアウトリーチ支援で重傷化予防と通いの場への参加勧奨 ― などを提言した。
◎幼児教育・高等教育の無償化で方針決定 ― 政府
 政府は12月28日、幼児教育・高校教育無償化の関係閣僚会合を開き、幼児教育・高等教育無償化の制度具体化に向けた方針を決めた。会合で、安倍首相は「社会保障を全世帯型に転換する。決定した方針に沿って速やかに法案作業を進めるとともに、地方自治体等で円滑な施行ができるように」と関係閣僚に指示した。
 方針は、10月1日から開始する幼児教育無償化について①3~5歳の幼稚園・保育所・認定こども園などは無償化②認定を受けた幼稚園の預かり保育は月額1万1,300円まで無償化③認定を受けた認可外保育施設等は月額3万7,000円まで無償化 ― する。0~2歳児も住民税非課税世帯は無償化する。なお、認可外保育施設は5年間の経過措置後は国の基準で認定された施設に限定する。同財源措置は、国地方協議での合意を踏まえ初年度分は全額国費で措置。それ以降は国と地方が折半(都道府県・市町村は各4分の1)して負担、公立施設は全額市町村負担とする。20年度から開始する高等教育の無償化は、入学金・授業料の減免と給付型奨学金の支給が柱。なお、12月25日に幼児教育無償化に関する協議の場の幹事会を設置、国と地方3団体でさらなる詳細な制度設計の協議を開始した。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)