月刊『自治総研』
2019年3月中央の動き
中央の動き |
◎2019年度地方財政計画を閣議決定 ― 政府 ◎地方税法改正案・森林環境税法案など決定 ― 政府 政府は2月8日、地方税法改正案と森林環境税法案などを閣議決定した。地方税法改正案では、都市と地方間の新たな偏在是正措置として法人事業税の約3割を特別法人事業税(国税)に分離、特別法人事業譲与税として都道府県に人口を基準に譲与する。また、車体課税の保有課税の恒久減税についてエコカー減税等の見直しなどで減少分を確保。このほか、ふるさと納税は、返礼割合3割以下・地場産品の基準を満たした団体を総務大臣が対象に指定する制度に変更する。 森林環境税・森林環境譲与税法案は、温室効果ガス排出削減目標の達成に向け新たな森林整備の地方財源を確保するもの。市町村が個人住民税と併せて年額1,000円を課税(2024年度から)し、森林環境譲与税として総額の9割を市町村、1割を都道府県に、私有林人工林面積(10分の5)、林業従事者(10分の2)、人口(10分の3)を基準に譲与(2019年度から)する。使途(市町村)は間伐や人材育成・担い手確保、木材利用の促進・普及、啓発など。 ◎児童虐待防止対策の取組を決定 ― 関係閣僚会議 政府は2月8日、児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議を開き、児童虐待防止対策の取組を決めた。対策は、野田市の児童虐待死事案を踏まえ①児童相談所や全国の学校で緊急安全確認を実施②「通告元は一切明かさない」など新ルール設定③児童福祉法改正など体制強化 ― が柱。安全確認では、児童相談所で指導しているケースと、全国の公立小中学校の不登校児童生徒を対象に実施し、点検結果を1か月でまとめる。また、新ルールの設定に対し保護者が威圧的に要求する場合は複数機関で共同対処する。さらに、児童福祉司の2,020人増加と家庭総合支援拠点の全市町村設置のほか、児童相談所の体制強化や職員の専門性向上などを内容とする児童福祉法改正案を今国会に提出する。 根本厚労相は2月19日の記者会見で、児童への体罰禁止議論は民法の懲戒権との整理が必要になるとした。また、柴山文科相は2月15日の記者会見で、学校での緊急安全確認の対象が数万人になるとの見通しを示すとともに、同省の研究会でいじめ防止対策のためのスクールロイヤー活用を検討しているが、虐待事案に対する活用についても検討していきたいとした。 ◎農地集約へ機構一体化など中間機構改正法案 ― 政府 政府は2月12日、農地中間管理事業推進法改正案を閣議決定した。農地の集積・集約化を加速するため、農地利用集積円滑化事業を農地中間管理事業に統合一体化する。このため、機構が円滑化団体の契約関係を簡易手続きでできるようにする。また、農業者等による協議の場を実質化するため、市町村に情報提供を努力義務化する。さらに、農地中間管理機構の再配分計画の縦覧や農地受け手に対する利用状況報告の義務付けを廃止する。認定農業者制度の市町村の認定事務を都道府県・国が処理できる仕組みも創設する。 また、政府は2月19日、農業用ため池の管理・保全法案を閣議決定した。近年の豪雨等でため池の被災が多発しているため、所有者に都道府県への届出を義務付ける一方、都道府県には勧告と立入調査の権限を付与する。さらに、決壊した場合に周辺地域に被害を及ぼすものを「特定農業用ため池」に指定し、形状変更を許可制とするとともに、都道府県の防災工事の施行命令・代執行も可能とする。また、所有者不明ため池を市町村が管理権を取得できる制度も創設する。 ◎最先端技術活用のスーパーシティ構想決定 ― 政府 政府の国家戦略特別区域諮問会議は2月14日、スーパーシティ構想実現に向けた取組を決めた。最先端技術を活用した「丸ごと未来都市づくり」を目指すとし、自動走行やドローン配送、行政のワンストップ窓口やパーソナルデータストア、遠隔診療・医薬品配達、遠隔教育などを実現する。このため新規開発型・既存都市型の2タイプのスーパーシティを選定。同選定エリアではより迅速・柔軟な地域独自の規制特例を設定できるよう政省令について条例で規制特例を設定できる法制度も整備する。政府は、国家戦略特区法の改正案を今国会に提出する。 また、政府は2月15日、医療保険制度の適正・効率的運営のための健康保険法改正案を閣議決定した。マイナンバーカードを健康保険証に利用することで保険者間で被保険者資格の情報を一元的に管理できるようにする。また、医療保険と介護保険の情報データベースを連結し解析できるようにするほか、市町村が高齢者の保険事業と介護保険の地域支援事業を一体的に実施できるよう国・広域連合・市町村の役割を定める。 ◎国土基本法の見直しで中間報告 ― 国土審特別部会 国交省の国土審議会特別部会は2月15日、土地基本法見直しに向けた中間報告をまとめた。管理不全の土地増加で周囲への悪影響も増えているが、現行規定では土地所有者以外の対応規律が不明確なため、土地の利用・管理で所有者が負うべき責務や、その担保方策など土地の制度・施策の再構築を示した。具体的には、所有者以外の近隣住民・地方自治体が一定の手続きにより悪影響を除去できるようにする。さらに、地域の合意形成で近隣住民の草刈りなど地域が利用・管理、公共性がある場合は地方自治体が自ら管理・取得できる。来年の通常国会に土地基本法改正案を提出する。 また、国土調査検討小委員会は同日、地籍調査の迅速化のための手続き見直し案をまとめた。地籍調査の進捗率が52%(2017年度末)に留まっているため、都市部では街区を形成する道路等と民地との境界を先行的に調査し国土調査法上の認証を行った上で公表。山村部ではリモートセンシングデータを活用し、多大な手間と時間をかけて実施している立会い・測量作業を効率化するとした。国交省では、2020年度の次期10か年計画の策定に反映させる。 ◎外国人材受入で法務省からヒアリング ― 地制調小委 第32次地方制度調査会専門小委員会は2月15日、4月から施行される改正入管法の外国人材受入について法務省入国管理局の担当者からヒアリングした。人手不足解消のため介護や農業、外食業など14分野で新たに外国人材を受け入れるが、「技能実習とは異なり転職が可能な仕組みなので、賃金水準の違いから地方から大都市へ流れる恐れがある」とした。このため、「地方側で出て行かれないよう魅力を高める、集中地域へ行くのを抑える2方法がある」とし、「お金以外の支援、地域の受入について好事例の周知をしていきたい」とした。同時に、「都市部への集中が起きた場合は、自粛を要請することも考えている」と述べた。 一方、内閣府は2月1日、移住者を含む求人・求職のマッチングサイト導入報告書を発表した。都道府県がマッチングサイトを開設するための基本的考え方からマッチングサイト・システムの必須機能、運営・改善、運営体制の在り方などを具体的に示した。内閣府では、今後、地方創生推進交付金で移住・求職・求人のマッチング支援事業を支援する。 ◎行政デジタル化・地域活性化など議論 ― 諮問会議 政府の経済財政諮問会議は2月26日、今年夏の「骨太の方針」に向け行政サービスのデジタル化と地域活性化を議論した。有識者提案は、デジタル・ガバメントの早期実現に向けた「デジタル3原則」の徹底と併せ、自治体は①広域連携(インフラの維持管理・更新の共同化など)②官民連携(民間ノウハウの活用・民間ビジネス拡大など)③コミュニティ連携(地域運営組織による健康づくり、防災等の取組など) ― の3連携を提案。また、地域に人・金・サービスを引き寄せるため、①2居住地を前提にした税制・社会保険制度②地域の資金を地域金融機関が還流③ロボティクス・AIを活用した就労環境の創造 ― などを提言した。 また、政府の規制改革推進会議は2月26日、今後議論する重点項目を決めた。夏にも答申をまとめる。地方創生では、自治体の補助金について国と同様に補助金共通申請システムに登載してワンス・オンリーでの申請を可能にするほか、①教育におけるAI、ビッグデータなど最新技術の活用②新たな働き方の副業・兼業、テレワーク等で働き手のルールの明確化③保育士・介護福祉士など新姓への書換えが義務付けられている各種国家資格での旧姓使用の範囲拡大 ― などを挙げた。 ◎2019年度の提案募集の受付を開始 ― 地方分権会議 政府の地方分権改革有識者会議は2月20日、2019年度の提案募集の受付を2月21日から開始することを決めた。同日から事前相談も受け付ける。締切りは6月6日(事前相談は5月16日)。また、市町村提案が2割程度と低いため、①提案の裾野拡大②提案の塾度向上③国民・住民への地方分権改革の成果還元④提案実現の迅速化と支障事例等の取扱柔軟化 ― などに取り組むことも決めた。なお、同会議に示された第9次地方分権一括法案(13法律を一括改正)は、①介護サービス事業者の届出・立入検査権限を都道府県から中核市へ移譲②公立社会教育施設を教育委員会から首長部局に移管可能③放課後児童クラブの従事者等の基準を「参酌すべき基準」に見直す ― などを盛り込んでいる。 一方、総務省の国地方係争処理委員会は2月18日、沖縄県知事が国の埋立承認撤回の効力停止は違法だとの申出に対し、「(国の)執行停止決定成立に係る瑕疵は存在しないから、当委員会の審査対象にならない」として却下した。辺野古埋立では、前知事が埋立承認を取り消したが、国交大臣が昨年10月に承認撤回の効力を停止し工事を再開。これを不服として県は昨年11月に係争処理委に審査を申し出ていた。
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(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)
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