地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2019年6月中央の動き


中央の動き


◎我が国の子どもの数を発表 ― 総務省
 総務省は5月4日、我が国の子どもの数を発表した。2019年4月1日現在の子ども(15歳未満)は1,533万人で前年より18万人減少、総人口に占める割合も12.1%と同0.2ポイント低下した。38年連続の減少で過去最少となった。同割合は1950年には35.4%あったが、1997年には15.3%と65歳以上人口の割合15.7%も下回っている。都道府県別では前年に比べ東京が8%増加。沖縄も同数で、他の45道府県で減少している。
 一方、内閣府は5月23日、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中間報告をまとめた。現行戦略に掲げた①雇用の創出②地方移住の促進③結婚・子育ての希望実現④まちづくり ― の4つの基本目標は維持するが、地方移住や子育て支援では施策充実が必要だとした。また、少子化対策検討会の中間報告では、国全体の少子化対策を活用しつつ各自治体の実情を踏まえた「地域アプローチ」が重要だと指摘。併せて、進学・就職で東京圏へ行く若者のうち女性の方が地域に戻らない割合が高い実態も踏まえ、地域コミュニティ、職住育近接のまちづくりの必要性も強調した。


◎水道事業のデータ活用システムで手引き ― 厚労省等
 厚労省・経産省は5月10日、水道事業者のデータ活用システム導入の手引きを作成した。水道情報活用システムの概要から導入により期待される効果と手順などを解説。併せて、導入のQ&Aも用意した。人口減少や施設老朽化など水道事業の経営環境が厳しくなる中、水道情報活用システムにより監視や水運用、水道施設台帳等のアプリケーション提供などで水道インフラの運用最適化や維持管理の効率化が可能になるとした。また、総務省・厚労省はこのほど、水道広域化推進プラン策定マニュアルを策定した。両省は2022年度末までの同プラン策定を要請しており、実務上の参考となるプラン全体像や標準的な記載事項等を示した。
 一方、国交省はダムなどの水源地域の新たな振興策づくりの検討に着手。5月10日に新たな担い手による水源地域振興検討会の第2回会合を開いた。水源地域では人口減少や産業衰退で存続自体も困難になりつつあるが、最近は飲料メーカーによる水源周辺地域の自然保護など社会貢献活動も増えてきたため、今後はソフト施策を中心に新たな担い手の導入・育成の在り方などを先進事例も含めて検討することにした。
◎ふるさと納税で初の指定団体を発表 ― 総務省
 総務省は5月14日、ふるさと納税の総務大臣指定を発表した。改正地方税法を受けたもので、指定(2021年9月30日まで)されたのは46道府県・1,737市区町村。一方、静岡県小山町、泉佐野市、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の4団体は不指定(東京都は申請せず)となった。ギフト券を送付するなど総務省ルールを超えた返礼品で巨額のふるさと納税を集めていた。また、指定団体のうち北海道森町、横手市、稲敷市、長野県小谷村、岸和田市、高知県奈半利町、直方市など43団体は今年9月30日までの4カ月の指定となっている。今後、毎年7月に申請を受け付け9月に指定継続(1年間)を判断する。ちなみに、不指定4市町を除く全団体の平均寄付受入額は約2億円だった。
 一方、内閣府の地方創生推進交付金検討会は5月21日まとめた最終取りまとめで企業版ふるさと納税のインセンティブ強化を盛り込んだ。同活用が40道府県・360市町村、23億円(2017年度)にとどまっているため、審査基準の見直しや地方負担分で民間負担を考慮することなどを進める必要があるとしている。
◎70歳までの就業機会確保を提案 ― 未来投資会議
 政府の未来投資会議は5月15日、全世代型社会保障に向け70歳までの高齢者雇用促進を提案した。夏にまとめる成長戦略に盛り込む。なお、法制度化では多様な選択肢を設けるべきだとし、①定年の廃止や70歳までの定年延長②継続雇用制度の導入や他企業への再就職③個人とのフリーランス契約 ― などを提案した。併せて、地方への人材供給確保に向け地域企業の支援機能強化、大都市圏の人材とのマッチング機能強化なども進めるとした。法案を来年の通常国会に提出する。
 一方、経産省の産業構造審議会は5月20日、「人生100年時代の社会保障改革」をまとめた。健康で働く人の増加で「社会保障の担い手」を増やす必要があるとし、①公的保険制度を病気・要介護の対応から予防・健康づくりにウェイトを高める②本人の意欲・能力に応じて働ける場の整備③年金は受給開始時期を自分で選択できる範囲を拡大 ― などを提案した。また、自民党は5月21日、人生100年時代の社会保障ビジョンを発表した。企業で働く人は雇用形態を問わず社会保険に加入できる「勤労者皆社会保険」や「人生100年型年金」への転換の検討などを提案した。
◎認知症施策で「予防」など大綱案を提示 ― 政府
 政府は5月16日、認知症施策有識者会議に認知症対策大綱案を示した。近く閣議決定する。新たに「予防と共生」を打ち出し、70歳代の発症率を計画期間2025年までの6年間に6%低下させる目標を掲げた。このため、認知症予防に資する活動の推進や民間サービスの評価・認証の仕組みを検討する。さらに、「通いの場」への参加率を2040年までに15%、市町村における認知症相談窓口の周知・認知症ケアパス策定団体を100%とする目標も掲げた。また、自民党は5月17日、認知症基本法の要綱案をまとめた。基本理念に、認知症の人・家族がどの地域でも日常・社会生活を円滑に営める共生を掲げ、このため政府に認知症施策推進基本計画、都道府県・市町村に同計画を受けた推進計画の策定を求めた。
 一方、政府は5月21日、最近の高齢者による交通事故発生を踏まえ交通安全対策関係閣僚会議を開催。安倍首相が、①高齢者の安全運転対策の推進②免許返納に対応した日常生活を支える施策の充実③未就学児の集団移動する経路の安全確保方策 ― について早急にとりまとめるよう指示した。
◎自治体の2040年問題で議論 ― 都市問題・公開講座
 後藤・安田記念東京都市研究所主催の都市問題・公開講座が5月18日、「自治体は2040年問題にどう向き合うか」をテーマに開催された。基調講演で小池司朗国立社会保障・人口問題研究所部長は、政府が地方創生で掲げる東京圏の転入超過ゼロが実現しても東京圏一極集中は今後も継続。さらに、東京圏で生まれる子どもの割合上昇で非東京圏へのUターンも今後減少するとした。このため、東京圏一極集中を前提とした施策が現実的であり、各地域は人口減少を前提に地域経済循環の仕組み構築が急務だと指摘した。
 次いで、パネル討論では山下祐介首都大学東京教授が、総務省の自治体戦略2040研究会報告書について人口減少の「危機感をあおるだけ」と批判。山村で子どもの数が増えるなど小さな自治体の動きを安定化させる必要性を強調した。また、太田昇真庭市長は国策として大胆な人口減少対策を打ち出すべきだとし、かつての国土庁的な国土形成の司令塔機能が必要だと指摘。「国家千年の計」と「国民福祉度の引上げ」を訴えた。小池部長は「今後の人口減少緩和のカギは出生率回復とIターンであり、非東京圏は東京圏出生者に向けたPRを強化すべきだ」と提案した。
◎人口減で地方公務員削減を要請 ― 財政制度等審議会
 財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会は5月22日、地方財政について審議。地方公務員数について、AI活用や業務広域化などの取組を職員数の抑制につなげるべきで、人口当たり職員数を一定とすると今後の人口減少で2025年までに約3万人(3%)の削減が可能だと指摘した。このほか、①増加する地方の社会保障費の抑制②地方財政計画上で増加している直轄・補助事業費と給与関係経費・単独事業も抑制 ― すべきだとした。近くまとめる建議に盛り込む。
 一方、全国知事会は5月20日、地方税財源の確保・充実について自民党に要望した。2020年度の地方財政計画でも必要な地方一般財源総額の確保・充実と地方交付税の総額確保を求めるとともに、まち・ひと・しごと創生事業費1兆円の継続・拡充を要請。また、幼児教育・高等教育の無償化の地方負担について「一般財源総額の同水準ルール」の外枠で歳出に全額計上し必要な財源を確保すべきだとした。法人事業税の収入金額課税制度、ゴルフ場利用税の堅持も求めた。
◎標準化などスマート自治体実現へ報告書 ― 総務省
 総務省のスマート自治体研究会は5月24日、報告書を発表した。人口減少後も自治体が行政サービスを提供・職員も価値ある業務に注力できるスマート自治体を目指すべきだとし、①行政手続を紙から電子へ②行政アプリケーションを自前調達式からサービス利用式へ③自治体・ベンダーも守りの分野から攻めの分野へ ― の3原則を掲げた。また、総務省は5月21日、自治体のデータ利活用ガイドブック改訂版を発表した。
 一方、改正戸籍法が5月24日成立した。マイナンバー制度への参加により行政手続における戸籍謄抄本の添付が省略されるほか、本籍地以外でも戸籍謄抄本の発行が可能となる。また、デジタル手続法も5月24日成立した。行政手続はオンライン実施を原則化(地方自治体は努力義務)し、本人確認や手数料納付をオンライン実施(電子納付)、行政機関間の情報連携等で省略可能となる添付書類は法令上省略可能とする。このほか、①本人確認情報の保存・提供の範囲拡大(住民基本台帳法)②電子証明書の利用者・利用方法の拡大(公的個人認証法)③個人番号利用事務・情報連携対象の拡大(マイナンバー法)も盛り込んだ。
◎夏の中間報告へ六団体からヒアリング ― 地制調小委
 第32次地方制度調査会の専門小委員会は5月31日、夏の中間報告に向けて地方6団体からヒアリングした。同小委では、人口減少・高齢化がピークを迎える2040年の課題を見据えた対応策を検討。5月27日の同小委では総務省が「取りまとめに向けた検討の進め方」を提示している。これに対し、6団体からは「人口減少の克服には政府関係機関の地方移転が急務だ」(飯泉徳島県知事)、「連係中枢都市圏などで東京一極集中を是正するダム機能の発想は机上論。周辺市町村にとっては仙台でも東京でも同じでスカスカになる」(立谷全国市長会長)、「圏域単位で行政を進める法律上の枠組みは町村を衰退させかねず絶対に容認できない」(荒木全国町村会長)など圏域行政への懸念が示された。また、議会3団体からは「(地制調では)地方議会の課題がほとんど議論されていない」などの批判が相次いだ。
 なお、総務省が提示した「検討の進め方」では、2040年頃に向けた視点・方策に①地域間・公共私の間のひとの移動・交流・協力を促す②インフラの管理手法、地域間協力・配置見直し、などを示している。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)