地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2019年8月中央の動き


中央の動き


◎分権提案募集で関係府省との調整開始 ― 内閣府
 内閣府は7月1日、今年度の地方分権改革の提案募集で地方から提案があった301件のうち①内閣府と関係府省で調整②関係府省の予算編成過程で検討 ― する提案について、関係府省に検討を要請した。今後、地方分権改革有識者会議での審議等を経て年末にも「対応方針」を閣議決定する。
 自治体からの提案では、市町村からの提案が222件と多いのが特徴で、分野では医療・福祉関係99件、教育・文化関係21件、消防・防災関係20件などが多かった。具体内容をみると、病児保育施設を整備する者の範囲の規制緩和(大阪府、堺市等)、社会福祉法人の放課後児童クラブ設置の要件緩和(出雲市)、学校給食費の児童手当からの特別徴収(伊丹市)、居宅介護支援事業所の管理者資格要件の経過措置延長(宮城県、関西広域連合等)など。また、森林所有者等の固定資産税情報の利用範囲拡大(北海道、福井市等)、自治体の支出方法に災害時の建替払いを加える見直し(茅ヶ崎市)などが提案されている。


◎総務事務次官に鈴木氏など幹部人事発表 ― 総務省
 総務省は7月5日付で幹部人事を発表した。辞職した安田充事務次官の後任に鈴木茂樹総務審議官(郵政・通信)が就任。総務審議官には自治行政担当に黒田武一郎消防庁長官、行政制度担当に長屋聡内閣人事政策統括官、国際担当には山田真貴子情報流通行政局長がそれぞれ就任した。また、消防庁長官へ転出した林﨑理自治財政局長の後任に内藤尚志自治税務局長が回り、同後任には開出英之内閣審議官、辞職した北崎秀一自治行政局長の後任には高原剛地方公共団体情報システム機構副理事長がそれぞれ就任した。このほか、地域力創造審議官に境勉地方公共団体金融機構理事、自治行政局行政課長に阿部知明住民制度課長、同後任に三橋一彦内閣官房参事官、同局地域政策課長に長谷川淳二自治財政局財務調査課長、自治財政局地方債課長に坂越健一同局準公営企業室長、同局財務調査課長に伊藤正志同局地方債課長が就任した。また、自治行政局公務員課長に小川康則大臣官房付、自治財政局調整課長に新田一郎大臣官房広報室長、自治税務局固定資産税課長に福田毅自治財政局調整課長(以上16日付)、自治行政局市町村課長に田中聖也大臣官房付(同22日付)が就任した。
 一方、総務省は幹部職員の意識改革の一環で「働き方宣言」を実施しているが、今年度から対象を審議官級以上に拡大した。同宣言は、幹部職員が自ら働き方改革への取組を宣言し省内で公開している。
◎教育現場のクラウド活用で報告書 ― 総務省
 総務省の教育現場におけるクラウド活用に関する有識者会合は7月5日、報告書を発表した。情報通信技術が急速に進む中、学校ではその前提となるクラウド活用が進んでいないため、クラウド導入のメリットを紹介するとともに、導入阻害要因に教育委員会のシステムなどを指摘。今後のクラウド活用に向け、①教育現場でシステム導入を検討する際はクラウドから検討②安心してサービス導入できるよう第三者評価を求める③教育ネットワーク構築へ柔軟なセキュリティ確保モデル提示 ― などを提言した。
 また、総務省は7月5日、青少年のインターネット・リテラシー指標調査結果を発表した。ネット上の危険・脅威に対応する能力を調べるテストの正答率(2018年度)が「セキュリティリスク」では3年前の65%から67%に上昇したが、「不適切利用リスク」は82%から80%に低下した。なお、文科省は5月から学校の携帯電話取扱有識者会議の審議を開始した。2009年の通知で小・中学校では学校への持ち込み原則禁止としたが、その後の変化等を踏まえ再検討する。
◎食料・農業・農村基本計画改訂で審議会 ― 農水省
 農水省は7月8日、食料・農業・農村政策審議会を開き、同会長に高野克己東京農業大学学長を選出した。政府は、食料自給率の目標や農政全般にわたる中長期的な取組方針を定める食料・農業・農村基本計画を概ね5年ごとに改訂(現計画は2015年3月閣議決定)しており、現在、新たな計画策定に向け同審議会企画部会など関係部会で審議を進めている。吉川農水相は6月18日の記者会見で「本年秋ごろをめどに基本計画見直しの諮問をしたい」と述べた。
 一方、農水省は7月19日、棚田地域を盛り上げる第一歩として「棚田カード」を作成したと発表した。棚田は厳しい耕作条件を背景に保全がむずかしくなっているため、棚田の魅力と保全活動の実態を知ってもらおうと、31府県56地域の棚田カードを作成した。カード表面には四季折々の棚田の写真など、裏面には棚田の枚数や作付け品種などの情報を掲載。「棚田めぐりガイド」「棚田めぐりマップ」も作成している。
◎住民基本台帳に基づく人口等を発表 ― 総務省
 総務省は7月10日、住民基本台帳に基づく人口等(2019年1月1日現在)を発表した。総人口(日本人住民)は1億2,477万6,364人で、前年に比べ43万3,239人(0.35%)減少した。調査開始(1968年)以降最大の減少。自然減も44万2,564人減で過去最大の減少。一方、外国人住民は266万7,199人で同16万9,543人(6.79%)増加した。
 都道府県別では、増加は東京、神奈川、沖縄、千葉、埼玉の5団体で、愛知は初めて減少した。東京は増加数7万3,205人・増加率0.56%ともにトップ。逆に、減少数は北海道3万9,461人減、減少率は秋田1.48%減が最も高かった。市区町村別では、人口増加は154市区(19%)・84町村(9%)で、661市区(81%)・838町村(90%)で減少した。人口増加数は福岡市1万10人増、沖縄県南風原町731人増が最も多く、増加率では千代田区3.73%増、島根県知夫村3.93%増が最も高い。減少数は神戸市6,235人減、大分県玖珠町579人減が最も多く、減少率では歌志内市3.88%減、奈良県野迫川村5.05%減が最も高かった。なお、3大都市圏の人口は6,452万799人で初めて減少(1万3,547人)したが、依然、全国人口の過半数を超えている。
◎地域共生社会の包括支援で中間取りまとめ ― 厚労省
 厚労省の地域共生社会推進検討会は7月19日、中間取りまとめを発表した。最近、「8050問題」(子を養う親が高齢化)など既存の制度では対応困難な事例が増加しているため、地域とつながりが希薄な個人をつなぎ戻す「包摂の実現」が必要だと指摘。具体策として、①断らない相談②社会とのつながりや参加③地域・コミュニティでのケア・支え合う関係性の育成 ― を提言した。さらに、各市町村での包括的支援体制の整備のため縦割り制度を再整理し新たな制度的枠組を創設、国の財政支援も柔軟・円滑に支援できる仕組みとすべきだとした。併せて、地域の多様な主体が出会い・学び合える「プラットフォーム」構築も提言した。
 また、厚労省の一般介護予防事業推進方策検討会は7月19日、中間取りまとめ骨子案を提示した。2040年に健康寿命3年延伸の目標達成には介護予防が重要だと指摘。このため、「通いの場」など介護予防の取組参加のためポイント付与や有償ボランティアの検討、医療関係団体と連携した地域リハビリテーション活動支援事業の活用促進などの検討を提案した。
◎2019年度の普通交付税大綱を閣議報告 ― 総務省
 総務省は7月23日、2019年度の普通交付税大綱を閣議報告した。総額は前年度比1.1%増の15兆2,100億円で、増加は7年ぶり。うち道府県分は8兆1,796億円(前年度比0.4%増)、市町村分は7兆304億円(同1.8%増)。また、不交付団体は東京都と85市町村で、前年度より8団体増えた。今年度、交付団体から不交付団体となったのは裾野市、御前崎市、豊橋市、知立市、高浜市、田原市、栗東市、芦屋市、佐賀県玄海町の9団体で、逆に不交付団体から交付団体となったのは栃木県上三川町。なお、基準財政需要額の増要因は社会保障関係費など、減要因は給与費など。また、基準財政収入額の増要因は道府県民税所得割、市町村民税所得割、森林環境譲与税などだった。
 一方、総務省は7月12日、2018年度の地方税収入決算見込額を発表した。地方法人特別譲与税を含めた総額は41兆9,563億円、前年度比2.6%増で、過去最高を2年連続して更新した。うち、道府県税は17兆8,513億円、同0.5%減、市町村税は22兆185億円、同4.3%増だが、道府県の県民税法人割が同10.0%増、市町村民税法人割も同10.7%増と高い伸びを示した。
◎「地方創生・富山宣言」など採択 ― 全国知事会
 全国知事会議が7月23・24日に富山市で開催され、各行政分野の要望・提言等を決めるとともに「地方創生・富山宣言」を採択した。会議後、会見した上田会長(埼玉県知事)は「行動する知事会が定着することを確認した富山大会だった」と総括した。
 「地方分権改革の推進」では、「国と地方の協議の場」の充実と併せて国会に「地方分権推進委員会」を設置するなど立法プロセスに自治体が関与できる仕組みを提案。また、「第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略への提言」では①東京一極集中の是正のため本社機能・政府関係機関の移転、移住定住・UIJターンの促進②地方を担う人材の育成・確保のため高校段階の教育の充実と地方大学の振興 ― などを提言したが、会議で小池東京都知事が「東京一極集中の是正」に反論し一部文言を修正した。また、地方税財源の充実・確保の提言では、幼児教育・高等教育の無償化を「一般財源総額の同水準ルール」の外枠で歳出に全額計上し必要な財源を確保すべきだと訴えた。その上で、「地方創生・富山宣言」では、「都市と地方が自立・連携・共生する令和時代の地方創生の実現に向け、新たな挑戦に果敢に取り組む」ことを宣言した。
◎2040年頃に向けた課題対応で中間報告 ― 地制調
 第32次地方制度調査会は7月31日の総会で「2040年頃から逆算し顕在化する地方行政の諸課題とその対応方策の中間報告」を決定した。高齢者人口がピークを迎える2040年頃には、人口減少で生活を支えるサービス提供や高度医療サービスの維持困難、インフラの維持管理費の増加など深刻な課題が表面化するが、自治体は住民の暮らしを持続可能な形で支えることが求められると指摘。同時に、これらの変化・課題は地域ごとに異なるため、各自治体に「地域の未来予測」(地域カルテ)の策定を提案。さらに、①産業・地域、公務の担い手など地域社会を支える人材の育成②地域間の移動・定着、地域間交流・協力など地域の枠を超えた連携③公共私の課題解決や行政と民間の交流など組織の枠を超えた連携④将来を見据えたインフラの管理手法の見直 ― などを提案した。同調査会では今後、圏域行政などの法制化に向けた検討に着手する。
 総会では、地方6団体側から今後検討される「圏域行政」をめぐり懸念などが指摘された。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)