地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2019年10月中央の動き


中央の動き


◎新会長に飯泉徳島県知事を選任 ― 全国知事会
 全国知事会は9月3日、会長に飯泉嘉門徳島県知事を選任した。任期は2年、四国からの会長就任は初。退任した上田前会長(埼玉県知事)の後任選挙で他に立候補がなく無投票選出となった。飯泉新会長は、同日の会合で「我が国は人口減少と災害列島の2つの国難に直面している」とし、今後の全国知事会の運営方針に①大都市部と地方部の連携・融和②政策形成・政策提言機能の強化③全国知事会としてのプレゼンス(存在感)の向上 ― を挙げた。うち、大都市・地方の融和では、ブロック塀の代わりに国産材を活用するプロジェクトチームの長に東京都知事が就任したことを例に挙げて「大都市部と地方部がスクラムを組んだ新しい形が生み出された」と強調した。
 一方、全国町村会は9月5日、町村行政未来戦略会議を発足させた。総務省の地方制度調査会で人口減少・少子高齢化が深刻化する2040年から逆算し顕在化する課題への対応策を検討していることに対応、町村の立場から今後の行政運営上の課題を検討。町村行政の実態に即した行政体制のあり方などについて来年5月頃にも提言をまとめる。


◎マイナンバーカード普及へ工程表 ― 政府
 政府のデジタル・ガバメント閣僚会議は9月3日、マイナンバーカードの普及に向けた全体スケジュールを決めた。マイナンバーカードの想定交付枚数として、同カード活用による消費活性化策で2020年7月末に3,000万~4,000万枚、健康保険証利用の運用が開始する21年3月末には6,000万~7,000万枚、そして23年3月末にはほとんどの住民がカードを保有との目標を示した。このため、全市町村に「交付円滑化計画」の策定を要請する。各市町村の交付枚数の想定とともに、そのための交付体制の整備(本庁・支所ごとの窓口数・配置職員数等)などを盛り込む。さらに、地方公務員には共済支部・人事課が職場単位で申請を取りまとめるとともに取得状況の把握・申請勧奨などで今年度中の一斉取得を目指す。総務省は今後、定期的なフォローアップなどで市町村の取組を推進する。
 一方、マイナンバー制度はプライバシー権侵害だと神奈川県住民が訴えた訴訟で、横浜地方裁判所は9月26日、制度はプライバシー権を侵害していないとして原告の訴えを退けた。同様の訴訟は全国8か所で起こされており、今回が初の判決。

◎首長等の損害賠償の免責で基準案を公表 ― 総務省
 総務省は5日、改正地方自治法の施行に伴う自治体の首長等の損害賠償責任の免責基準案を公表した。意見募集を経て2020年4月1日から施行する。2017年の改正地方自治法では、首長や職員等の損害賠償責任について、善意かつ重大な過失がない場合は政令で定める基準を参酌して一定額を免除できることを各自治体が条例で定めるほか、地方議会が損害賠償の権利放棄を議決する場合は事前に監査委員の意見を聞くこととされた。今回、その免責の基準案を示したもの。上限額は、①首長は給与の6年分②副知事や副市町村長・教育長・選挙管理委員会委員・監査委員等は4年分③人事委員会委員・農業委員会委員・消防長・地方公営企業の管理者等は2年分④職員は1年分、とした。また、最低限は職責にかかわらず1年分とした。
 住民訴訟制度については、第31次地方制度調査会答申(16年3月)で、巨額な賠償額が首長や職員を萎縮させる懸念がある、国家賠償法との不均衡、議会による損害賠償請求権の放棄が政治的に左右される、として制度の見直しを提言していた。

◎食料・農業・農村基本計画の変更を諮問 ― 農水省
 農水省は9月6日、食料・農業・農村政策審議会に新たな食料・農業・農村基本計画を諮問した。同計画は、政府が中長期的に取り組む食料・農業・農村に関する方針で、5年ごとに変更している。農業の後継者不足対応や農村振興策などを審議するほか、現行の需給率目標・カロリーベース45%(2018年は37%)の見直しも課題となる。来年3月に答申をまとめる。また、同省は9月17日、2050年度の世界の食料需給見通しを発表した。低所得国の経済発展・人口増加の一方で地球規模の気候変動から国際的な食料需給は中長期的に逼迫が懸念されている。このため、超長期食料需給予測システムで10年~50年の需給を予測した。その結果、50年の食料需要量は58億トンと10年の1.7倍に増加、特に低所得国では2.7倍に増えるが、世界の生産量も増加し穀物は同1.7倍に増加すると予測した。
 一方、農水省は9月27日、豚コレラの予防的ワクチン接種のための防疫指針改定案を公表した。ワクチン接種推奨地域に埼玉、富山、石川、福井、長野、岐阜、愛知、三重、滋賀の9県を挙げた。

◎地方議会の課題でPTが論点整理 ― 自民党
 自民党・総務部会の地方議会の課題に関するプロジェクトチームは9月10日、論点整理をまとめた。議会3団体が要望している厚生年金への加入については政府でパート従業員など適用職種の拡大を検討しているが公費負担増加も伴うため「引き続き議論を継続する」との指摘にとどめた。議員の兼業・請負禁止規定の見直しは法案の来年の通常国会提出も含めて議論を進める。このほか、小規模市町村議会の報酬引上げや女性・サラリーマンが立候補しやすい制度、政務活動費の使途基準なども検討課題に挙げた。今後、法制化・制度改正ごとにさらに内容を詰める。
 一方、総務省の地方議会・議員のあり方に関する研究会が8月30日、第2回会合を開き、全国市議会議長会、全国町村議会議長会などから意見聴取した。各団体とも地方議員の厚生年金への加入を求めるとともに、①地方議会議員の位置付け明確化、サラリーマンが立候補しやすい労働法制の見直し(市議長会)②兼業禁止の緩和、育児手当や所得損失手当などの拡充、低額な議員報酬改善(町村議長会)、などを要請した。

◎第4次安倍再改造内閣の総務相に高市氏就任
 第4次安倍再改造内閣が9月11日発足、総務大臣に高市早苗氏(自民・衆院奈良第2区、当選8回、58歳)が就任した。また13日、総務副大臣に長谷川岳氏(自民、参院北海道、当選2回、48歳=地方行財政等担当)、寺田稔氏(自民・衆院広島5区、当選5回、61歳=行政管理・郵政等担当)、総務大臣政務官に斎藤洋明氏(自民、衆院新潟第3区、当選3回、42歳=地方行財政等担当)、木村弥生氏(自民・衆院京都第3区、当選2回、54歳=情報通信・郵政等担当)、進藤金日子氏(自民・参院比例、当選1回、56歳=行政管理等担当)がそれぞれ就任した。高市総務相は、内閣改造後の記者会見で「第一にサイバーセキュリティ対策の強化。第二に地域経済の活性化。地方財源の確保や情報通信技術の活用を力強く進める。人口減少に直面する中、行政サービスを維持するため、新たな地方行財政の実現に努める」と述べた。
 また、政府は同日、「基本方針」を閣議決定した。「最大の課題である少子高齢化に真正面から立ち向かう」とし、①復興・国土強靱化の推進②頑張った人が報われる経済成長③全ての世代が安心できる社会保障改革④美しく伝統ある故郷(ふるさと)を守り次世代へ引き渡す ― などを盛り込んだ。

◎今後の市街地整備で検討会を発足 ― 国交省
 国交省は9月12日、今後の市街地整備のあり方検討会の初会合を開催した。人口減少・高齢化が進む中、都市基盤・建築物の老朽化と空き地・空き家の増加、さらに地方では都市機能流失に伴う地域活力の減退が危惧されている。このため、まちなかの魅力再生・向上の観点から今後の市街地整備のあり方を検討する。また、同省は9月25日、インフラ長寿命化計画(行動計画)のフォローアップ結果を発表した。今年3月末で「砂防」「下水道」分野で策定が完了するなど国管理施設はほぼ完了したが、自治体管理の施設にばらつきがあるため引き続き自治体への支援に取り組む。
 一方、同省は9月11日、「水害リスクライン」による水位情報の提供を開始したと発表した。約200㍍ごとの水位と堤防高の比較から左右岸別に上流から下流まで連続的に洪水の危険度を表示するシステムで、6月から10水系について市町村向けに提供を始めたが、今回、対象を50水系に拡大するとともに一般向けの提供サイトで運用を開始した。

◎統計からみた我が国の高齢者を発表 ― 総務省
 総務省は9月15日、我が国の高齢者人口(2019年9月15日現在)と就業状況を発表した。総人口が前年より26万人減少する中、65歳以上高齢者は32万人増加し3,588万人と過去最多を更新。その割合も28.4%と過去最高を記録した。年齢階層別では、70歳以上が2,715万人、80歳以上は1,125万人。また、高齢就業者(18年)は15年連続して増加し862万人と過去最多を記録。就業率は男性が33%、女性が17%。なお、高齢就業者の産業別割合は農業・林業が51%で最も高い。また、雇用形態は非正規が76%を占めている。
 一方、厚労省は9月13日、100歳以上高齢者を発表した。全国の100歳以上は7万1,274人で前年より1,489人増加した。うち男性は8,464人、女性が6万2,810人だった。統計を取り始めた1963年は153人だった100歳以上が、今回初めて7万人台になった。また、人口10万人当たり100歳以上高齢者は56.37人で、うち島根県が105.15人で最も多く、次いで高知県101.42人、鹿児島県100.87人が多い。

◎全世代型社会保障へ検討会議を発足 ― 政府
 政府は9月20日、全世代型社会保障検討会議を発足させた。首相(議長)や財務相・厚労相・総務相など関係閣僚と有識者で構成。会合で、安倍首相は「年金、医療、介護、労働など社会保障全般にわたる持続可能な改革を検討する」と述べた。来年夏にも最終報告をまとめる。また、政府税制調査会は9月26日、中長期的な税制のあり方を示す答申をまとめた。人口減少・少子高齢化に対応した社会保障制度と財政を持続可能なものとするため「消費税の役割が一層重要になる」と強調。併せて、地方税についても地方消費税など偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系構築が必要だと強調した。
 一方、厚労省は9月3日、体罰によらない子育て推進検討会の初会合を開いた。今年6月に成立した改正児童福祉法で親の体罰禁止が盛り込まれたことから、体罰禁止の考え方や体罰の範囲、体罰によらない子育て推進方策などを検討。体罰の範囲や体罰禁止に関する考え方を示したガイドラインを年内にも作成する。また、厚労省は9月6日、保育所の状況(2019年4月1日現在)を発表した。保育所利用定員は289万人で前年より8万8千人増加、待機児童数は1万6,772人で、同3,123人減少。過去最少となった。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)