地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2020年1月中央の動き


中央の動き


◎農業生産基盤強化プログラムなど決定 ― 政府
 政府の農林水産業・地域の活力創造本部は12月10日、農業生産基盤強化プログラムなどを決定した。農業を持続的に発展させるための政策パッケージとして、輸出促進の司令塔組織創設による輸出拡大、肉用牛・酪農生産拡大、水田農業の高収益作物への生産体制強化、スマート農業の現場実装、農林水産業の新規就業者のすそ野拡大など合計11プログラムを盛り込んだ。具体的には、国・自治体が水田農業高収益化推進計画に基づき水田の畑地化の基盤整備で2025年度までに高収益作物産地を500創設する。また、50歳台対象の農業研修を支援。さらに、中山間地域で新たな地域資源活用の取組を行う地区を250地区創出するなどとした。
 また、政府のTPP等総合対策本部は12月5日、日米貿易協定締結等を踏まえ総合的なTPP等関連政策大綱を改訂した。「新輸出コンソーシアム」と農協・中小企業等を専門家・支援機関で支援を後押しするほか、外国企業誘致に意欲的な自治体等によるトップセールスや地域企業とのマッチングを実施する。


◎災害復旧・国土強靱化等へ補正予算案決定 ― 政府
 政府は12月13日、2019年度補正予算案を決定した。防災機能強化と経済対策を中心に3兆1,946億円を計上。うち災害復旧・復興等に2兆3,086億円を計上した。公共土木施設等の災害復旧事業に4,859億円、災害等廃棄物処理に456億円、河道掘削や堤防嵩上げ・補強など台風の治水対策に2,437億円を計上した。また、2020年度予算案にも関係各省が防災関連予算を盛り込んだ。総務省は、河川等の氾濫防止に向け「緊急浚渫推進事業費」900億円を創設。総務省消防庁は緊急消防隊の装備強化へドローンや水上バイク導入など115億円を計上した。また、国交省は災害多発を踏まえ交付金から個別補助に転換し、都市の内水氾濫対策に140億円、河川改修に102億円、橋等の老朽化対策に2,223億円などを計上した。
 また、政府は12月19日、復興推進会議を開き、2021年3月末となっている復興庁の設置期限を10年間延長するなど新たな復興の基本方針を決めた。
◎全世代型社会保障検討会議が中間報告 ― 政府
 政府の全世代型社会保障検討会議は12月19日、中間報告をまとめた。少子高齢化の中の人生100年時代を見据え、年金から医療、予防・介護、労働について改革の方向性を示した。今年夏にも最終報告をまとめる。医療では、後期高齢者の自己負担について一定所得以上は窓口負担を2割とするほか、大学病院への初診時の定額負担を増額する。また、予防・介護では、保険者努力支援制度、介護インセンティブ交付金について先進自治体の取組の横展開を推進するため抜本的に強化するとした。このほか、年金では受給開始時期を75歳に引上げ、厚生年金の対象を50人超規模に拡大するなどの選択肢を示した。併せて、労働では70歳までの定年延長の方針を示した。
 一方、厚労省の社会保障審議会介護保険部会は12月27日、介護保険制度の第8期介護保険事業計画(2021~23年度)に向けた意見をまとめた。介護施設の食費・居住費について一部の低所得者の負担額を増額するほか、高額所得の人の介護サービスの自己負担上限額も引き上げる。なお、ケアプラン作成の有料化や自己負担(原則1割)を2~3割とする案は見送った。
◎2020年度の地方財政対策を発表 ― 総務省
 総務省は12月20日、2020年度の地方財政対策を発表した。一般財源総額は前年度比1.2%増の63兆4,318億円で、うち地方交付税は同2.5%増の16兆5,882億円を確保した。一方、臨時財政対策債は3兆1,398億円、同3.6%減に抑制。その結果、2020年度の地方財政計画の規模は90兆7,400億円程度(同1.3%増)となる。
 歳出面では、税源の偏在是正措置で生じる財源を活用して地域社会再生等に取り組める「地域社会再生事業費(仮称)」4,200億円を創設。また、緊急実施すべき河川・ダム・砂防・治山の浚渫を単独事業で推進する「緊急浚渫推進事業費(仮称)」900億円(25年度まで)も創設。このほか、森林環境譲与税を前倒し増額し前年度比2倍の400億円を交付。会計年度任用職員制度の施行に向け期末手当等に充てる一般行政経費1,690億円を計上するとともに、都道府県が技術職員を市町村に中長期派遣するための増員に地方財政措置を講じる。第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略が始まる20年度も引き続き1兆円を計上した。
◎2020年度の総務省・国の予算案を発表 ― 総務省等
 総務省は12月20日、2020年度の総務省予算案を発表した。総額は16兆7,692億円、前年度比0.8%増で、ソサエティ5.0時代の地域社会に向け、マイナンバーカード普及と制度利活用の促進に1,664億円(前年度260億円)計上するとともに、新規に地域課題解決に資する5G活用推進37億円、自治体の情報システム標準化4億円、自治体によるAIサービス共同開発3億円などを創設。さらに首長・地方議員向けICTリテラシー向上研修も実施する。また、東京一極集中是正等では、新規に地方への人の流れ創出0.1億円、地域の基幹産業の地域経済活性化0.2億円を計上。このほか、関係人口の創出・拡大3億円(同6億円)、2040年頃を見据えた地方行政体制構築に向けた連携推進1億円(同2億円)などを計上した。
 また、政府は同日、国の20年度予算案を閣議決定した。総額が前年度比1.2%増の102兆6,580億円と8年連続で過去最大を更新した。うち、社会保障関係費は35兆8,608億円(同5.1%増)で、幼児教育・保育の無償化を3,410億円に増額。また新規に医療機関統廃合に向け84億円を計上した。公共事業関係費は6兆 8,571億円(同0.8%減)で、治水対策と老朽化対策の強化等に重点的に取り組む。また、文教関係費は4兆346億円(同0.1%増)で、高等教育の無償化に4,882億円を新規計上した。農水関係予算は総額2兆3,109億円(同0.0%増)で、農林水産物・食品輸出力強化へ司令塔組織創設12億円を計上した。
◎2020年度の税制改正大綱を閣議決定 ― 政府
 政府は12月20日、2020年度の税制改正大綱を閣議決定した。電気供給業の収入金額課税制度では、資本金1億円超法人には外形標準課税を維持。また、「企業版ふるさと納税」の税額控除額を現行の3割から6割に引き上げ5年間延長。所有者不明土地では所有者が死亡した土地・家屋の相続人への申告制度を創設するほか、使用者を所有者とみなして固定資産税を課税できる。また、ゴルフ場利用税は東京オリンピックへの出場選手に限って非課税とするにとどめた。このほか、一定基準を満たす乳幼児5人以下の認可外保育施設も消費税を非課税、未婚のひとり親にも寡婦(寡父)控除を適用するなどの改正も盛り込んだ。
 なお、総務省が同日発表した地方税収見込みでは、収入総額が前年度比1.9%増の41兆122億円で2年連続の40兆円台となる。内訳は、道府県税が同4.0%増の18兆7,036億円、市町村税は同0.2%増の22兆3,086億円を見込んだ。同改正を受けて全国知事会等は、収入金額課税制度の見直しをはじめ所有者不明土地、企業版ふるさと納税、ゴルフ場利用税への対応を評価するとともに、現行制度の堅持を強く求めた。
◎70歳までの就業機会確保で素案 ― 厚労省
 厚労省は12月20日、高年齢者の雇用・就業機会確保に向けた素案をまとめた。70歳までの就業機会確保には現行の定年廃止・延長、他企業への再就職のほか、フリーランスや起業、社会貢献活動に従事するなど新たな措置を設けて事業主に努力義務化することが適当だとした。今年の通常国会に関係法案を提出する。また、政府の未来投資会議は12月19日、新たな成長戦略実行計画策定に関する中間報告をまとめた。うち、働き方改革では、インターネット活用など個人で働く新しい就業形態が増加しているとし、「組織の中に閉じ込められ固定されている人の解放」に向けて個人事業主・フリーランスを選択できる環境整備を提言した。
 一方、総務省は12月24日、2018年度の地方自治体の勤務条件調査結果を発表した。介護休暇の取得は男性729人、女性1,934人で、前年度よりそれぞれ90人、63人減少。その休暇期間はほぼ半数が1か月以下。また、新たに育児休暇を取得した男性は3,578人で、前年度より828人増えた。また、新たに育児短時間勤務を取得した男性は107人で、前年度より27人増えた。女性は3,674人、同168人増が取得した。
◎第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略を決定 ― 政府
 政府は12月20日、第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略を閣議決定した。第1期5年間の取組を検証した上で2020年度を初年度とする今後5年間の施策・目標を盛り込んだ。第1期の目玉施策「東京圏への一極集中是正」は達成できず、転出入均衡の目標を24年に延期。その上で、新たな目標にUIJターンによる起業・就業者数6万人(19~24年)、「関係人口」拡大に取り組む自治体数1,000団体を掲げた。また、「稼ぐ地域をつくる」では地方の就業者100万人増加を目指す。このほか、「結婚・出産・子育ての希望をかなえる」では、第1子出産前後の女性継続就業率を70%(25年)とするなどの目標を掲げた。
 一方、国交省は12月6日、企業等の東京一極集中に関する懇談会を発足させた。国土形成計画などで東京圏への過度な集中是正を進めているが、全国の上場企業の51%が本社を東京に置き、この10年間でその割合も高まっているため、企業等の集中の実態をはじめ、経済・産業、交通網、雇用慣行、都市機能などの面から要因を分析する。今年6月にも報告をまとめる。
◎分権改革の地方提案への対応方針を決定 ― 政府
 政府は12月23日、2019年の地方提案等に関する対応方針を閣議決定した。提案178件のうち提案を踏まえた対応が140件など合計160件で対応(89.9%)する。まちづくり関係等では、森林所有者に関する固定資産税情報の内部利用(高知県・福井市等)、町村の都市計画決定に関する都道府県の同意廃止(全国町村会等)、特定空家等に対する代執行時の動産の取扱明確化(熊本市等)など。医療・福祉関係では、病児保育施設整備者の範囲の要件緩和(大阪府、神戸市等)、社会福祉法人が放課後児童クラブを設置する要件緩和(出雲市)など。このほか、軌道法・鉄道事業法の事務・権限を都道府県から指定市へ移譲する。
 一方、全国知事会は12月17日、地方分権改革の推進に向けた研究会を発足させた。国の立法による規制が足かせになっているとして「自治立法権」の拡充・強化と地域実情に即したルールづくりを可能とする基本的枠組みなどを検討。このほか、「従うべき基準」や国による計画策定・補助金要綱の要件設定も見直しし、今年夏の全国知事会議までに報告をまとめる。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)