地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2020年2月中央の動き


中央の動き


◎雇用保険法改正案要綱を答申 ― 厚労省
 厚労省の労働政策審議会は1月8日、雇用保険法改正案要綱を答申した。高齢者や複数就業者に対応したセーフティネットの整備などが柱。具体的には、65~70歳までの高年齢者の就業確保のため定年引上げや継続雇用制度の導入・定年廃止などを企業の努力義務とする。併せて、65~70歳までの就業支援を雇用安定事業に位置付ける。また、複数の事業主に雇用される65歳以上労働者に雇用保険を適用する。このほか、育児休業給付について失業等給付から独立させて子の育成休業のための給付と位置付ける。
 また、厚労省は1月17日、人生100年時代の高年齢労働者の安全・健康有識者会議の報告書を発表した。60歳以上の雇用者数が過去10年間で1.5倍に増加する一方、労働災害に占める60歳以上の割合も26%に上昇。このため、高齢者が働きやすい職場環境実現のためのガイドラインを作成すべきだと提言。事業者には身体機能低下を補う装置導入など職場環境の改善や健康診断、安全衛生教育の実施などを、国にはガイドラインの普及や個別事業場に対する助言などを求めた。


◎地方公務員の兼業許可で調査結果と通知 ― 総務省
 総務省は1月10日、地方公務員の兼業許可等の実態調査結果をまとめ、併せて留意点等を各自治体に通知した。民間では兼業・副業が促進されているが、地方公務員は兼業許可基準が不明確なため必要以上に制限的に運用されているという。調査結果によると、地方公務員の許可件数(2018年度)は約4万件だが、許可基準の設定は703団体で4割、同基準公表は353団体で2割にとどまっている。このため、通知は、各自治体に詳細かつ具体的な許可基準を設定するとともに、同基準を公表すべきだとした。併せて、利害関係から公正が確保できない、高報酬で公務の信用を損ねることがないよう兼業許可に一定の有効期間を設定するとともに、兼業先の業務内容の報告を受けるなど実態把握も定期的に行うべきだとした。
 一方、高市総務相は1月24日、就職氷河期世代に対する支援と男性育児休業の取得促進を求める総務大臣書簡を全都道府県知事・市町村長あてに送付した。政府が決めた3年間で就職氷河期世代の正規雇用30万人、全男性職員が1か月以上を目途に育児休業の取得に向け首長のリーダーシップ発揮を求めた。
◎「関係人口」でシンポジウムを開催 ― 国交省
 国交省は1月10日、「関係人口とつくる地域の未来」をテーマにシンポジウムを開催した。基調講演で、小田切徳美明治大学教授は、国交省調査から3大都市圏の33%が日常生活・通勤圏以外に「定期的・継続的に関わりがある地域がある」と回答するなど「大都市圏には膨大な関係人口が存在する」と指摘。その45%は「趣味・消費型」で、「直接寄与型」は13%と少ないが、地域と関わりが深いほど地域活動に積極的に参加している実態も分かった。今後の課題に、①移動や滞在等の金銭的負担の軽減②能力・知識・経験を活かせる機会の存在③価値観の合う仲間の存在 ― などを挙げた。このほか、山崎亮スタジオL代表が地域住民を巻き込んだ市民公園づくりなどの事例を紹介した。
 一方、総務省は1月17日、地域おこし協力隊の定住状況結果を発表した。2019年3月に任期終了した4,848人のうち51%が同一市町村内に、14%は近隣市町村に定住。うち36%の888人が起業していた。なお、総務省では地域おこし協力隊を2024年度までに8,000人に増やす目標を掲げている。
◎公務職場のパワハラ防止対策で報告書 ― 人事院
 人事院は1月15日、公務職場のパワー・ハラスメント防止対策検討会報告書を発表した。パワハラを職務の優越的関係を背景に行われる①職員に精神的・身体的苦痛を与え②人格・尊厳を害す③勤務環境を害す ― などの言動と定義した上で、パワハラ禁止を職員の責務として人事院規則に明確化。事例によっては懲戒処分の対象となることも明記した。また、未然防止のため勤務体制や職場環境の整備、さらにパワハラ防止研修の実施、相談体制の整備などを提言した。これを受けて、人事院は今年6月にも新たな人事院規則を策定する。民間にパワハラ防止策を義務付けた労働施策総合推進法が同月から施行されるのと合わせる。
 一方、総務省は1月24日開催された全国都道府県財政課長等会議でハラスメント防止対策を説明した。厚労省の告示(1月15日)を踏まえ、事業主の方針明確化、相談体制の整備、事後の迅速対応などを要請。合わせて、自治体のパワハラ対策の取組状況(18年12月・19年1月調査)について、要綱・指針等の策定は都道府県43団体(91%)、市町村607団体(35%)、研修は都道府県44団体(94%)、市町村1,021団体(59%)で実施など市町村の対応が遅れているとした。
◎医療構想の再編統合実現へ再検証を要請 ― 厚労省
 厚労省は1月17日、地域医療構想の実現に向けた具体的な対応方針の再検証を各都道府県に通知した。同省は昨年秋、2025年に向けた公立・公的医療機関の再編統合の対象424病院の実名リストを公表、自治体から猛反発を受けたため、同リストを一部修正した上で、改めて再検証を要請した。同省は、地域医療構想の実現に向け全公立・公的医療機関の診療実績データを分析、重点支援地域を設定して医療機能の再編・病床数の適正化を進める。
 一方、総務省が1月24日開催した全国都道府県財政課長等会議でも地域医療構想をめぐり言及が相次いだ。大沢博財政課長は「現状維持だけではこれからの地域医療は守れない。地域医療構想の実現へ積極的な取組をお願いしたい」と要請。谷史郎審議官は、地域医療構想推進に向けた財政措置として、20年度は地域医療介護総合確保基金と全額国費84億円の補助金を組合せ病床ダウンサイジングや病床機能移転等の支援を行うほか、不採算地区の中核的公立病院に対する特別交付税措置を創設するとし、持続可能な地域医療提供体制に向け結論を得るよう努力を要請した。
◎地方公務員の定年引上げで地公法改正へ ― 総務省
 総務省は1月17日、今通常国会への提出予定法案を発表した。提出するのは地方税法、地方交付税法の各改正案のほか、国の定年引上げに合わせた地方公務員法改正案、市町村合併特例法の10年間延長など8本。
 公務員の定年引上げは、人事院の意見申出(2018年8月)を受けて政府が国家公務員法改正案を今国会に提出するが、同法に合わせて地方公務員法を改正する。具体的には22年度から2年ごとに定年を1歳ずつ伸ばし最終的に65歳とする。また、組織の新陳代謝確保のため「役職定年制」を導入する。原則、管理職手当の支給対象者(部長・課長等)は、60歳に達した段階で課長補佐等に降任する。同対象職員、同年齢は各条例で規定する。また、国家公務員は60歳以上の職員の年間給与を60歳前の7割水準に設定するが、地方公務員の給与も「均衡の原則」に基づき条例で必要な措置を講じる。このほか、現行の再任用制度は廃止した上で60歳以上職員が一旦退職した後、希望に基づき短時間勤務できる「定年前再任用短時間勤務制」を導入する。併せて、人事評価に基づく昇進管理の厳格化、勤務実績不良職員の厳正な分限処分も併せ実施する。
◎GIGAスクール構想で説明 ― 文科省
 文科省は1月22日、全国市長会委員会で児童生徒1人1台のパソコンを整備する「GIGAスクール構想」を説明したが、参加市長からは端末更新の財政措置やICT化に向けた教員の養成等を巡り懸念の意見が相次いだ。同構想は、2023年度までに①高速大容量の校内通信ネットワークの整備②児童生徒1人1台の端末整備 ― を目指す。このため文科省が今年度補正予算案に2,318億円を計上した。なお、総務省の新田一郎調整課長は1月24日の全国都道府県財政課長等会議で同構想の地方財政措置などを説明。補正予算で間に合わなくても20年度予算の学校教育施設整備事業債などの組合せで実質的に同様の措置を講じるとした。
 一方、会計検査院は1月15日、自治体の情報セキュリティ対策の検査結果を発表した。一部自治体でマイナンバー利用端末に「2要素認証」などのセキュリティ対策を講じていなかったほか、セキュリティクラウドに機器を集約していない、インシデント発生時に事業者等との役割確認が行われていない団体があった。このため、同院は総務省に是正を求めた。
◎全国都道府県財政課長等会議で説明 ― 総務省
 総務省は1月24日、全国都道府県財政課長等会議を開き、財政課長名の「事務連絡」を示すとともに、2020年度地方財政・予算編成上の留意点などを説明した。20年度の地方財政対策で創設した地域社会再生事業費4,200億円、緊急浚渫推進事業費900億円を説明。さらに、普通交付税の基準財政需要額の推計参考伸び率(前年度比)として道府県分で1.5%増、市町村分で2.0%増、包括算定経費では道府県分0.5%減、市町村分2.5%増が見込まれるとした。また、業務改革の取組の反映では20年度も学校用務員事務や公立大学運営等で引き続き段階的見直しを行うとした。
 このほか、会計年度任用職員制度で新たに期末手当の支給が始まるが、一般行政経費1,690億円など全額を地方財政計画に計上すると強調した上で、法改正の趣旨から適切でない制度設計として、①職務内容・責務・知識・技術等の要素を考慮せず給料・報酬水準を決定②新規に期末手当を支給する一方で給料や報酬を削減③解雇・雇用止めなど制度移行を抑制④再度の任用の際に一定の期間(空白期間)を設ける⑤短い勤務時間を設定し現在のフルタイムでの任用を抑制する ― ことなどを挙げた。
◎今後3年間の歳出・歳入の試算を公表 ― 財務省
 財務省は1月24日、2020年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算を公表した。20年度予算の制度・施策を前提に21~23年度までの財政状況を試算したもの。経済成長1.5%のケースでは、歳出合計が21年度103.6兆円、22年度105.8兆円、23年度107.6兆円に拡大。うち、社会保障関係費は同36.5兆円、37.6兆円、38.5兆円に増える。一方、税収の伸びはにぶく、財政収支の赤字は同18.0兆円、19.0兆円、19.4兆円に拡大する。また、財務省は同日、国債残高の状況を発表した。20年度末の国債残高900兆円が、その後も毎年度増加し、26年度末には1,012兆円に達するとした。
 一方、政府の経済財政諮問会議は1月17日、中長期財政試算を示した。基礎的財政収支の黒字化達成目標の25年度も3.6兆円の赤字で、黒字化は27年度に延びる。また、今後の課題にGDPと同時にQOL(生活の質)の高い経済成長の実現とともに、少子化対策・女性活躍、再チャレンジを強化する働き方改革、頑張る自治体の応援などを掲げた。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)