地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2020年3月中央の動き


中央の動き


◎土地基本法等改正案を閣議決定 ― 政府
 政府は2月4日、土地基本法等改正案を閣議決定した。人口減少と土地利用ニーズの低下で所有者不明土地の増加が危惧されるため、土地所有者に土地の適正な「利用」とともに「管理」の責務を明確化し、土地政策全般の政府方針として「土地基本方針」(閣議決定)を創設する。併せて、低未利用土地や所有者不明土地を含めた土地の需要喚起と取引のマッチング、有効利用の誘導、管理不全土地対策の促進などを政府全体で進める。また、地籍調査の迅速化(国土調査法等改正)のため新たな国土調査事業十箇年計画を策定するとともに、現地調査の手続きの見直しを盛り込んだ。
 また、政府は2月7日、都市再生特別措置法改正案を閣議決定した。災害ハザードエリアのレッドゾーンでの開発は自己業務用施設も原則禁止とするほか、市街化調整区域の浸水ハザードエリアでの住宅開発を抑制。居住誘導区域外の災害レッドゾーン内での住宅開発には勧告できる。さらに、市町村が災害ハザードエリアからの移転を支援するための計画を作成する移転計画制度を創設。同計画の居住誘導区域内で行う防災対策・安全対策を定める「防災指針」も作成する。


◎スーパーシティ構想で国家戦略特区法改正案 ― 政府
 政府は2月4日、自治体提案の「スーパーシティ」実現に向けた規制改革を進める国家戦略特区法改正案を閣議決定した。自治体が自動車の自動運転やドローン配達など最先端技術を活用した実証実験を行うための規制緩和を提案、関係省庁が対応を検討する。同法案は昨年の通常国会で廃案となったが、今回、新たに「国による援助規定」なども追加した。
 一方、内閣府の中心市街地再生方策検討会は2月7日、「中心市街地活性化促進プログラム」案をまとめた。第2期まち・ひと・しごと総合戦略を踏まえ、全国の中心市街地の現状・課題・役割を整理した上で、今後、重点的に取り組むべき5つの課題を挙げた。具体的には、①多世帯が安心して暮らせるまちづくり②中心市街地で増大している空き店舗・空きビルの活用や低未利用資産の活用などストック活用③歴史・文化など地域資源を活かし訪日外国人旅行の急増をチャンスと捉える④民間企業と連携した活性化とまちづくりを担う人材育成⑤自治体や関係者に積極的に活用される仕組みづくり ― に取り組むとした。
◎豪雨災害への避難対応で報告書 ― 中央防災会議
 政府の中央防災会議ワーキンググループは2月5日、激甚化・頻発化する豪雨災害の避難対策強化に向けた報告をまとめた。ハザードマップで一人ひとりがどのような避難行動をとればいいかを解説した「避難行動判定フロー」を作成しハザードマップとともに配布するよう提案。また、警戒レベルの解説資料の作成・配布と市町村に避難情報の発令基準の改訂を助言した。さらに、指定避難所等の開設状況をホームページで知らせる市町村災害用ホームページ開設も求めた。
 一方、政府は2月25日、新型コロナウィルス感染症対策の基本方針を決めた。自治体の対応では、患者クラスター(集団)発生の場合は関係施設の休業やイベント自粛等を要請した。また、高市総務相は同日、都道府県知事・市町村長に対し今後の患者増加を見据えた入院医療の提供体制整備の取組強化を求めた大臣書簡を送付した。また、全国知事会は同日、全都道府県による新型コロナウィルス緊急対策本部を設置するとともに、感染拡大抑制のため国・地方の協力と単一都道府県にとらわれない拡大抑制、地域の検査体制強化などを求める緊急声明を発表した。
◎住民基本台帳の人口移動調査報告を発表 ― 総務省
 高市総務相は2月6日の衆院総務委員会で所信を表明した。地域活性化と東京一極集中の是正に向け、分散型エネルギーインフラプロジェクトの拡充、関係人口の創出・拡大の取組の深化、テレワーク整備で都市から地方への人の流れを創出するなどと強調した。
 一方、総務省が1月31日発表した2019年の住民基本台帳の人口移動報告で、東京一極集中が加速している実態が明らかになった。市区町村間移動者は540万3,465人(前年比0.8%増)、都道府県間移動者は256万8,086人(同1.3%増)だが、都道府県の転入超過は8都府県で、39道県が転出超過。また、市町村では450団体(26%)が転入超過で、74%の1,269団体で転出超過となった。なお、3大都市圏では、東京圏が14万8,783人の転入超過で前年より8,915人増加。一方、名古屋圏は1万5,017人の転出超過で前年より7,641人拡大、大阪圏も4,097人の転出超過で前年より5,341人拡大した。なお、東京圏は全ての都県で転入超過となっており、うち東京都は8万2,982人の転入超過。また、東京圏の転入超過は14年11万人、15~17年各12万人、18年13万人、19年14万人と増加を続けている。
◎新たな成長戦略計画で「たたき台」 ― 未来投資会議
 政府の未来投資会議は2月7日、今年夏にまとめる新たな成長戦略実行計画の策定に向け審議を開始した。席上、安倍首相は「副業や兼業をやりやすくすることが重要だ」と述べ、労働時間ルールの明確化などの議論を指示した。同日示された「今後の進め方のたたき台」では、兼業・副業の促進に向けたルールについて、兼業・副業は起業の手段・第2の人生の準備として有効だが、その解禁に積極的な企業は2割に留まると指摘。このため、労働時間の上限制限や割増賃金規制などを検討する。また、フリーランスなど雇用によらない働き方は高齢者の雇用拡大や社会保障の担い手増加などからその拡大は不可欠だと強調。今後、関連する独禁法や労働法のあり方などを検討する。
 また、政府の規制改革推進会議は2月12日、個別テーマごとに審議している6つのワーキンググループの進捗状況について意見交換した。その中で、雇用・人づくりWGは、教育の最新技術の活用(文科省)、フリーランスの働き方(厚労省)、外国人材の受入(出入国管理庁等)などの検討状況が報告された。
◎地域公共交通の活性化法改正案を閣議決定 ― 政府
 政府は2月7日、持続可能な地域公共交通の活性化・再生法一部改正案を閣議決定した。人口減少や運転者不足の深刻化に対応するため自治体主導で輸送資源を総動員する。具体的には、自治体が「地域公共交通計画」(マスタープラン)を作成、従来の公共交通サービスに加え自家用有償旅客運送や福祉輸送等も位置付ける。また、維持困難となったバス路線について多様な選択肢を検討・協議し旅客運送サービスを継続するとともに、過疎地などでバス・タクシー事業者が協力する制度も創設する。
 また、政府は2月4日、道路法等一部改正案を閣議決定した。頻発化する自然災害への対応のため現在は重要物流道路に限定されている国の代行による災害復旧を、緊急車両の通交のためがれき処理などを行う「道路啓開」など地方道全線に拡大する。このほか、自治体が道路を「歩行者利便増進道路」に指定することで、駅前などの道路を歩道や広場に活用できることも盛り込んだ。
◎3大都市圏の「関係人口」で調査結果発表 ― 国交省
 国交省は2月18日、3大都市圏居住者の「関係人口」のアンケート調査結果を発表した。23%の約1,080万人が「日常生活・通勤圏以外の特定地域を訪問している」と回答。うち45%は地域での飲食など「趣味・消費型」だが、地域交流やイベント参加など「参加・交流型」が25%、ボランティア活動への参加など「直接寄与型」も13%あった。また、直接寄与型は地域との関係性を深めるために必要なことについて「食事やプライベートでの時間的余裕の確保」「地域の人とつながりを持てる場の確保」「移動や滞在の金銭的負担の軽減」を挙げる声が多かった。なお、「関係人口」の言葉を「聞いたこともない」が73%で、「知っている」は3%にとどまっている。
 一方、総務省は2月17・18の両日、都内で「関係人口創出・拡大事業」モデル事業の成果報告会を開催した。地域にルーツがある者等を対象にした「関係深化型」で村上市など11団体、これから地域との関わりを持とうとするものを対象とした「関係創出型」で秋田県など7団体、都市住民等の地域への関心を醸成する「裾野拡大型」で氷見市など21団体、同「外国人型」で菊池市など5団体がそれぞれ取組状況を報告した。
◎「体罰によらない子育て」で報告書 ― 厚労省
 厚労省は2月20日、「体罰等によらない子育てのために」を公表した。体罰禁止が法定化された改正児童福祉法の今年4月施行を踏まえ作成した。「しつけ」と思っても子どもの身体に苦痛・不快感をもたらす行為は「体罰」だとし、その具体例に「頬をたたく」「長時間正座させる」「ご飯を与えない」などを示した。併せて、市町村の子育て支援センターへの相談など保護者の対応策も紹介した。各自治体には全住民に向けた周知・広報を要請した。
 一方、厚労省は2月13日、成育医療等協議会を発足させた。昨年12月に施行された成育基本法が策定を義務付けた「成育医療等基本方針」に盛り込む国や市町村、関係機関の責務などを検討。今年夏にも取りまとめる。また、同省は1月31日、地域医療構想実現に向けた重点支援区域の第1回選定に3県5区域を決めた。2025年の医療機能再編・病床数ダウンサイジング化に向け、地域医療介護総合確保基金の優先配分などで集中的に支援する。今後も複数回選定する方針。選定区域は、宮城県仙南区域、同県石巻・登米・気仙沼区域、滋賀県湖北区域、山口県柳井区域、同県萩区域。
◎地方議会・議員のあり方で論点整理 ― 総務省
 総務省の地方議会・議員のあり方研究会は2月21日、論点整理をまとめた。多様な住民の議会参画を阻む要因には住民が議会活動を知らないことがあるとし、議会モニターや議会サポーターなどの取組を要請。また、議員のなり手不足の要因に、開催日時や兼業・請負の禁止、兼職の禁止、議員報酬や議員年金、立候補に伴う休暇保障などを挙げた。その上で、議員の位置付けや経済的な要因、身分に関する規制、立候補環境の整備については、地方制度調査会での検討を求めた。
 一方、全国町村議会議長会は2月13日、町村議会の実態調査結果を発表した。全国926町村議会の議員数(2019年7月1日現在)は1万857人(前年比99人減) で、1町村当たり定数は11.9人。うち女性は1,184人(10.9%)。また、議員報酬月額は21万5,656円、議長は29万3,073円で、議長報酬の町村長給与に対する割合は40.6%だった。政務活動費は193町村(20.8%)で交付している。このほか、議会基本条例は329町村(35.5%)で、政治倫理条例等は286町村(30.9%)で制定。また、休日議会は33町村、夜間議会は14町村でそれぞれ実施している。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)