月刊『自治総研』
2020年4月中央の動き
中央の動き |
◎定年延長の地方公務員法改正案を閣議決定 ― 政府 ◎自治体窓口のキャッシュレス化普及へ ― 経産省 経産省は3月13日、自治体窓口・公共施設のキャッシュレス化に取り組むモニター自治体の募集を開始した。同省は2025年までにキャッシュレス決裁比率を4割とする目標を掲げているが、自治体窓口では現金決裁が中心のため、近く策定する「キャッシュレス決裁導入手順書」に基づきキャッシュレス化を推進する。具体的には①導入対象施設・窓口・推進部門の決定②導入する決裁手段の決定③関連規定・会計処理の検討④決裁事業者・設備等の決定⑤導入・予算要求 ― の5プロセスに沿って1年かけて実証する。 また、農水省は3月17日、デジタル地図を活用した農地情報管理検討会の報告を発表した。各実施機関が個別に収集した農地に関する情報を「デジタル地図」として一元的に管理すべきだとした。これにより、自動運転やドローンの活用、衛星画像による災害状況や土地改良事業の正確な把握なども可能になる。 ◎地域活性化モデルケースで報告書 ― 内閣府 内閣府は3月13日、地域課題解決のため2014年に選定した33地域の地域活性化モデルケースの5年間の取組状況を発表した。同事業は5類型で実施され、うち地方都市型では「コンパクトシティ中心の包括的アプローチによる地域活性化」(富山市)など、農山漁村・過疎地域等型では「新公共交通体系構築と環境調和・健康未来創造スマートコミュニティ」(京丹後市等)、地元地域資源活用型では「鳥羽マルシェ・食のしあわせ循環創造」(三重県)などの取組を紹介。報告書は「事業成功のカギを握るのは首長を含むリーダーの情熱と見識」であり、成功させる指針として①地域に適応した取組②計画・取組の具体性、継続性・持続性③推進組織のガバナンス ― などを挙げた。 また、内閣府は3月10日、2月に全国4カ所で開催した「小さな拠点づくりブロック別会議」の状況を公表した。広島会場では庄原市口和自治振興区の「ぬくもり会議くちわ」など、仙台会議では宮城県南三陸町入谷地区のコミュニティ・カーシェアリングなど、福井会場では、永平寺町内郵便局での地域住民の生活支援などの取組状況が紹介されている。 ◎グリーンインフラ推進へ官民連携 ― 国交省 国交省は3月19日、グリーンインフラ官民連携プラットフォームの設立を発表した。社会資本整備や土地利用などのハード・ソフト両面で自然環境の持つ多様な機能を活用するグリーンインフラ推進が目的で、宮城県や東京都、長野県、大阪府、横浜市、金沢市、京都市など23自治体と民間企業等150団体が参加。今後、アドバイザー派遣やシンポジウム・セミナー開催、アイデアコンテストの実施などで普及を図る。 また、農水省は3月16日、農水省環境政策の基本方針を発表した。農林水産業・食品産業の環境創造型産業への進化を理念に掲げ、生産から廃棄・再生利用までのサプライチェーンを通じた取組とグリーン化を進めるほか、同省の事業採択で環境への取組を加点するなどとした。また、農水省は3月18日、公共建築物の木材利用率(2018年度)を発表した。木造化が求められる低層公共建築物のうち警察庁(派出所)、法務省(職員宿舎)、農水省(庁舎)、最高裁・厚労省(自転車置き場)など77施設が木造化され、木造化率は91%で17年度の77%を上回った。 ◎地方創生人材支援で44市町に派遣 ― 内閣府 内閣府は3月17日、地方創生人材支援制度等の2020年度派遣の対象に44市町を決めた。市町村長の補佐役として派遣しているもので、地方創生人材支援が北海道大空町、飯田市、香川県琴平町、豊見城市など29市町、デジタル専門人材派遣が十和田市、焼津市、宮崎市など19市町。派遣するのは国家公務員が20市町、大学研究者が2町、民間人財が24市町で、常勤職員は原則2年、非常勤職員は1~2年間、市町で勤務する。 また、内閣府はこのほど、国と地方自治体との人事交流の実施状況(19年10月1日現在)を発表した。出向者総数は1,789人で前年より25人減少。うち都道府県が1,146人(前年度比22人減)、市町村が643人(同3人減)。都道府県への出向先は部長級以上が135人、課長等が281人など。市町村では部長級以上が309人、課長等が97人など。省庁別にみると、国交省の485人、警察庁435人、総務省291人、農水省183人、厚労省131人で多い。一方、自治体から国への受入は2,933人(同59人増)で、うち都道府県が2,444人(同36人増)、市町村が489人(同23人増)。省庁別では警察庁の1,709人をはじめ、国交省388人、外務省163人、農水省107人、文科省103人、総務省101人などで多い。 ◎過疎地域の集落の現況調査結果を発表 ― 総務省 総務省は3月27日、2019年4月現在の過疎地域の集落の現況調査結果を発表した。集落数は6万3,237集落あり、その人口は1,035万7,584人、1集落当たり平均人口は164人だった。前回調査(15年)に比べ349集落減少し、人口も72万5,590人(6.9%)減少。さらに、139集落が消滅した。また、「集落機能が低下」している集落は17%、「維持困難」が4%あり、前回調査(各13%、4%)より増えた。このため、「今後10年以内に消滅の可能性」がある集落は454集落、「いずれ消滅すると予測」される集落は2,744集落にのぼる。一方、15年以降に40%の集落で転入者があり、うち高校生以下の子どもがいる世帯は22%あった。 また、総務省は同日、地域おこし協力隊の10年間にわたる活動状況を初めてまとめた。19年度の隊員数は5,349人で前年より10人減った。減少は初めて。一方、受入自治体は1,071団体で同10団体増加、過去最高となった。また、過去10年間で74%が「良い影響を与えた」と評価。80%が「今後も活用したい」とした。商品開発やイベントで農村地域が活性化、若手職員とのプロジェクトチームが立ち上がったとの評価の一方、隊員と受入団体とでトラブル、職員の業務増加で他の業務が停滞したとの声もあった。 ◎外国人の子どもの就学状況を初調査 ― 文科省 文科省は3月27日、外国人の子どもの就学実態を発表した。全国的調査は初めて。学齢相当外国人の子どもは小学生8万7,033人、中学生3万6,797人の合計12万3,830人で、69%の自治体に外国人の子どもがいる。うち大半は就学しているが、不就学630人のほか確認できずなどを加えると約1万9,500人が不就学の可能性がある。同不就学に対し、自治体では電話による勧奨266団体、訪問による勧奨249団体、就学案内の継続送付215団体などを実施している。また、文科省は3月27日、外国人児童生徒等の教育充実に関する報告書を発表した。今後の未就学増加に向け、日本語教師の積極的活用やICT教材の活用・遠隔授業の実施、教育委員会と住基台帳部局との連携などを提言した。 一方、出入国管理庁は3月27日、在留外国人数を発表した。19年末現在、合計293万3,137人、前年より7.4%増加し過去最高となった。国別では中国81万3,675人、韓国44万6,364人、ベトナム41万1,968人の順で多い。在留資格では永住79万3,164人、技能実習41万972人、留学34万5,791人など。都道府県別では、東京59万3,458人、愛知28万1,153人、大阪25万5,894人で多い。なお、20年1月1日現在の不法残留者は8万2,892人で前年より12%増えた。 ◎新型コロナ対策で基本的対処方針など ― 政府 政府は3月28日、新型コロナ特措法が規定する基本的対処方針を決定した。「爆発的な感染拡大」の危惧を示した上で、まん延防止と自治体等との情報共有、医療供給体制の整備、経済・雇用対策などを柱に掲げた。その上で、安倍首相は、事業持続や生活困窮者への新たな給付金制度の創設、感染症対策の予備費創設などの緊急経済対策を早期に策定するよう指示した。 一方、政府は自治体との連携強化の一環として3月5日に地方3団体と関係省庁との意見交換会、10日には臨時の「国と地方の協議の場」を開催。協議の場では安倍首相が学校の臨時休業などを柱とする緊急対策第2弾を説明した。これに対し、地方3団体は、11日に放課後児童クラブの体制強化などを求める共同コメントを、さらに25日には新型コロナウイルス感染症に伴う大胆な地域経済対策の実施を求める提言をまとめた。このほか、総務省も3月に入り、自治体の新型コロナ対応について、調達の対応(3日)、職員の休暇(5日)、選挙の管理執行(6日)、住基事務の市町村窓口(10日)、職員採用(10日)、テレワーク推進(12日)、公共料金の支払猶予(19日)、地縁団体の総会開催方法(19日)などを相次いで通知。政府・自治体は今後も新型コロナ対応に迫られそうだ。 ◎新たな食料・農業・農村基本計画を閣議決定 ― 政府 政府は3月31日、新たな食料・農業・農村基本計画を閣議決定した。10年後の農業政策の基本方針を示すもので5年ごとに更新。農業の成長産業化に向けた農政改革を引き続き推進するとした上で、2030年の食料自給率の目標を現行と同じ45%とした。一方、農林水産物・食品の輸出目標は5兆円と設定した。このほか、農業分野では経営形態や中山間地域等の条件にかかわらず農業経営の底上げにつながる生産基盤を強化、農村分野では農泊やジビエ、農福連携で所得と雇用機会を確保し地域に住み続けられる条件を整備するとした。 また、同省は3月13日、農福連携等応援コンソーシアムを設立した。農福連携は、障害者等への就労の機会創出と農業分野での新たな担い手が期待されているため、経済3団体や自治体、農業団体など30団体が参加。農福連携を国民運動として盛り上げる。秋には優良事例の表彰なども予定している。
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(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)
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