地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2020年6月中央の動き


中央の動き


◎「大規模災害への備え」でシンポ開催 ― 国交省
 国交省は5月12日、「大規模災害への備え ― 我が国は広域大規模水害にどう立ち向かうべきか」をテーマにシンポジウムを開催した。米国南部で大規模災害となった2017年のハリケーン災害の調査報告を受けて、我が国が目指すべきレジリエンス(復元力)として実効ある防災・危機管理の強化、水害レジリエンスの向上、日本型避難学の構築、大規模水害を踏まえた国交省の対応などをめぐり発表・議論が行われた。
 一方、同省は5月28日、水害・土木災害に関する防災用語改善検討会を発足させた。水害や土砂災害の防災情報で使われる「用語」が、住民や報道機関に分かりやすく、かつ的確な判断・行動につながるよう見直す。また、総務省消防庁は5月21日、救急業務の在り方に関する検討会を発足させた。高齢化を背景とする救急需要の増大への対応のためメディカルコントロール体制や救急活動におけるICT技術の活用、また、救急安心センター(♯7119)の普及に向けた対応策などを検討。来年3月にも報告をまとめる。


◎認知症高齢者の地域支援で厚労省に勧告 ― 総務省
 総務省は5月15日、認知症高齢者の地域支援に関する調査結果をまとめた。政府が昨年策定した認知症施策推進大綱を受けて認知症の早期診断・早期対応のため全市町村に認知症初期集中支援チームを配置したが、その実績が市町村間で最大33倍の差があったほか、支援内容も本来の「初期」でなく対応困難事案に偏る傾向があった。さらに、認知症疾患医療センターへの都道府県の事業評価が約5割で未実施だった。このため、厚労省に対し、①認知症高齢者に対する支援の実例を把握・分析②その結果を踏まえ、選択可能な支援スキームを市町村に提示③集中支援で挙げるべき効果を評価できる指標の市町村への提示 ― などを勧告した。
 また、総務省は同日、学校の専門スタッフ等の活用の調査結果をまとめた。学校・教員の働き過ぎ対応の一環でスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど専門スタッフが各学校に配置されたが、スクールソーシャルワーカーは活用実績が少なく、各職務・役割が学校現場で共有されていない実態が分かった。このため、文科省に対し両専門職の具体的な役割について教育委員会と学校とで共有するほか、個別の活用事例を整理し情報共有するよう勧告した。
◎地方圏での暮らし意向でアンケート調査 ― 内閣府
 内閣府は5月15日、「地方暮らし」に関する東京圏在住者の意向調査結果を発表した。東京圏在住者の50%が地方暮らしに「意向あり」と回答、うち「関心」は36%、「検討」12%で、「計画」も2%あった。さらに、「意向あり」のうち62%が地方圏出身者で、東京圏出身者の46%を上回った。また、「関心」は40歳、「計画」は36歳など平均年齢が若いほど意向が高い。なお、発信してほしい情報では、「仕事・就職」(61%)、「住居・住宅購入」(60%)が多い。一方、地方圏出身者が地元に戻らない理由では「生活水準を満たす仕事がない」が多く、このほか「噂が1日で広まる」「どこへ行ったか町中に筒抜け」「この歳で戻るのは肩身が狭い(未婚女性)」などの声もあった。
 また、認定NPO法人ふるさと回帰支援センターはこのほど、2019年の移住希望地ランキングを発表した。同センターへの年間相談は4万9,401件、前年より約20%増えた。移住希望地は、長野県が3年連続してトップとなった。各市町村が魅力を発揮する「出張相談デスク」の活用などが効果をあげた。次いで、広島県が昨年の6位から2位に上昇。このほか3位・静岡県、4位・北海道、5位・山梨県などが続く。
◎農村政策と土地利用の在り方で検討会発足 ― 農水省
 農水省は5月19日、20日に「新しい農村政策の在り方」「長期的な土地政策の在り方」に関する検討会を発足させた。今年3月に閣議決定した「食料・農業・農村基本計画」を受けたもの。農村政策では、①農村集落の実態・要望を把握し、課題解決を一貫して実践する人材を育成する仕組み②その体制づくりや活用を都道府県・市町村に促す仕組み ― などを検討する。長期的な土地利用では、農地について①農地のまま維持(放牧など)②農地への復旧が容易な非農地への転換(ビオトープなど)③農地への転換が困難な非農地への転換(森林など)― の類型に分けた上で、土地を利用・管理する主体や転換の合意形成手法、国や自治体の関与の在り方などについて検討する。
 一方、総務省は5月15日、農道・林道の維持管理に関する行政評価の結果を発表した。総延長約31万キロ㍍ある農道・林道の維持管理では、予算不足や技術力不足で点検・修繕に苦慮しているほか、個別施設計画の策定漏れ、国・市町村の点検結果が共有されていないなどの実態が分かった。このため、農水省に対し、予算・技術力の現状を踏まえた支援の在り方、計画の適正化を図るための技術的支援などを勧告した。
◎自治体情報セキュリティ対策見直しで報告 ― 総務省
 総務省は5月22日、自治体情報セキュリティ対策の見直しに関する報告書を公表した。住民情報の流失防止のためマイナンバー利用事務は他領域と分離しているが、地方税(eLTAX)と「ぴったりサービス」に限ってインターネット経由の申請やデータの電子的移送を認めるよう提言。また、業務の利便性向上のため自治体内部環境からパブリッククラウドへの接続や自治体内部環境へのリモートアクセス、庁内LANについても安全な実施方法を提示。併せて、自治体内部のLGWAN接続系とインターネット接続系の分離の見直しに向けた新たなモデルも提示した。同省は、夏にも情報セキュリティガイドラインを改定する。
 また、文科省は5月11日、全国の自治体が取り組む学校のICT環境整備の加速に向けて支援スタッフを配置した相談窓口を開設した。相談できる内容は、①ICT環境整備に関する計画策定や仕様書作成・見積精査・調達実施②遠隔教育や家庭学習などICTを活用した指導方法や研修講師の紹介・派遣③GIGAスクール構想の助言・支援 ― など。自治体等からのメールや電話の問い合わせに回答する。
◎新型コロナの緊急事態宣言を全面解除 ― 政府
 政府は5月25日、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の全面解除を決定した。併せて、今後概ね3週間ごとに外出自粛や施設・イベント等の利用・開催制限の要請を段階的に引き下げ、その「段階的緩和の目安」を示した。これを受けて、全国知事会は同日、今後は感染防止と経済活動を両立させる「WITH・コロナ」に変わるとし、感染拡大第2波に備えて検査体制・保健所体制の強化や「新しい生活様式」の普及・実践に向けたガイドライン整備、企業の経営支援などを要請した。なお、消費者庁は5月22日、感染予防と経済活動両立の「新しい生活様式」に向けて「公民館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」など、図書館や体育館、ごみ捨て、銀行、映画館など関係団体が策定した19業種81件の「ガイドライン」を同庁ホームページで紹介した。
 また、政府は2021年度予算案の概算要求期限を例年の8月末から9月末とするほか、「骨太の方針」も7月半ばに遅らせる。一方、高市総務相は5月19日の記者会見で、今年10月1日に実施する国勢調査について「延長は考えていない」とし、「調査票の配布・回収は非接触型を徹底したい」と述べた。
◎新たな広域道路ネットワークで中間報告 ― 国交省
 国交省の新たな広域道路ネットワーク検討会は5月25日、中間報告をまとめた。今後の広域道路ネットワーク整備の基本戦略に①中枢中核都市等を核としたブロック都市圏の形成②空港・港湾など交通拠点へのアクセス強化③災害に備えたリダンダンシー確保 ―など5つを挙げた。その上で、「広域道路」(広域交通の拠点となる都市を連絡する道路、時速40キロ㍍以上)、「特定広域道路」(ブロック都市圏間を連絡する道路、同60キロ㍍以上)の2階層の整備を提示。併せて、平常時・災害時を問わない安定的な輸送、交通事故への安全性、将来の自動運転への備えも求めた。
 また、国交省は5月20日、改正公共工事の品質確保法の施行を踏まえた公共工事の発注関係事務に関する「新・全国統一指標」を決めた。今後、都道府県・市町村を含む全ての公共工事の発注者は同改正に定められた責務を果たすことが求められる。新統一指標は、工事関係では施行時期の平準化、週休2日制対象工事の適正な工期設計など、測量・調査・設計関係では履行期限の分散などについて示している。
◎土地基本方針と国土調査10カ年計画を決定 ― 政府
 政府は5月26日、土地基本方針と国土調査事業10カ年計画を閣議決定した。基本方針は、今年3月に成立した改正土地基本法を受けて所有者不明土地問題の解消に向けた方向性を示した。具体的には、①低未利用土地の需要喚起と取引のマッチング②有効利用の誘導のため税制特別措置やランドバンクの活用促進③管理不全土地などの対策促進のため管理不全の空き地・空き家対策の推進と相続登記の申請義務化、共有制度・財産管理制度・相隣関係規定の見直し(法務省)④土地の境界・所有者情報の明確化 ― を進める。このため、国土調査10カ年計画では、新たな調査手法の活用や地域特性に応じた調査手法を導入するとともに、進捗率の表示を追加。計画事業量(10カ年)を1万5,000平方キロ㍍、優先実施地域の進捗率を87%(現在79%)に引き上げるとの目標を明記した。
 また、国交省は5月11日、地域の空き家等の利活用で自治体・事業者が連携して取り組む先進的な取組を支援する今年度のモデル事業の募集を開始した。対象は5団体程度で、1団体当たり200万円支援する。
◎新型コロナ対応で32兆円の第2次補正予算案 ― 政府
 政府は5月27日、2020年度の第2次補正予算案を閣議決定した。総額31兆9,114億円で、地方側が強く要請した地方創生臨時交付金は2兆円を計上した。また、新型コロナ対策関係では、医療・介護への緊急包括支援交付金2兆2,370億円、医療用マスクなど医療機関への配布4,379億円のほか、家賃支援給付金の創設2兆242億円、資金繰り対応11兆6,390億円を計上。このほか、文化芸術活動の緊急総合支援パッケージ560億円、地域公共交通の感染拡大防止対策138億円、学校再開に伴う感染症対策・学習保障等421億円、農林漁業者の経営継続補助金創設200億円などを計上した。
 また、総務省の第2次補正予算案は総額519億円。光ファイバー未整備の学校などの光ファイバー整備502億円、各地域でのテレワークサポート体制の強化3億円、マイナンバーカードを用いたオンライン申請の推進9億円、消防の感染防止のための救急活動用資機材の整備3億円などを計上した。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)