地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2020年9月中央の動き


中央の動き


◎遅れた人勧の給与実態調査に着手 ― 人事院
 人事院は8月4日、今年の職種別民間給与実態調査を8月17~9月30日まで実施すると発表した。人事院勧告の基となる同調査は例年5月から全国の事業所を対象に調査しているが、新型コロナウイルスの影響でボーナス分のみ6月から実施したが、月給調査は詳細なため各事務所を直接訪問して調べなければならなかった。また、厚労省は8月21日、全都道府県で地域別最低賃金が答申されたと発表した。最低賃金を引き上げたのは40県で、1~3円の引上(1円は17県、2円は14県、3円は9県)で、改定後の全国加重平均額は902円(前年度901円)、最高額1,013円と最低額792円の金額差は221円(同223円)となった。
 一方、内閣府は8月28日、男性国家公務員の育休取得状況を公表した。政府は、2020年度から全男性職員を対象に1カ月以上の育児休暇・休業の取得を目標に掲げたが、4~6月に子どもが生まれた対象職員3,035人のうち、99.8%が育休・休業の取得計画を作成、計1カ月以上の休暇を取得した職員は85.2%に達した。ここ数年の同取得率は10%台だった。


◎住基台帳人口の減少が過去最多に ― 総務省
 総務省は8月5日、2020年1月1日現在の住民基本台帳人口を発表した。総人口(日本人)は1億2,427万1,318人で、前年より50万5,046人(0.40%)減少。11年連続の減少で、過去最多の減に。出生者数も86万6,908人で過去最少に。一方、死亡者数は137万8,906人で過去最多。この結果、51万1,998人の自然減となった。年齢階級別では、年少人口は1,528万7,153人(構成比12.3%)で毎年減少、生産年齢人口も7,367万6,767人(同59.3%)で95年を除き毎年減少。一方、老年人口は3,530万7,386人(同28.4%)で増加を続けている。都道府県別では、増加は東京、神奈川、沖縄の3都県で、埼玉・千葉の2県は減少に転じた。減少率は秋田1.52%、青森1.36%、山形1.27%の各県で高い。市区人口は1億1,364万6,716人、町村人口は1,062万4,602人で、それぞれ91.5%、8.5%を占める。また、市区の83%、町村の91%で人口が減少した。
 一方、東京都がこのほど発表した東京の人口(毎月1日)によると、今年5月に1,400万2,973人と初の1,400万人台にのせたが、6月には前月比3,405人減の1,399万9,568人に減少した。例年4~6月は転入者増で人口が増えており、6月の減少は初めて。
◎2019年度のふるさと納税寄付額が減少 ― 総務省
 総務省は8月5日、ふるさと納税の現況調査結果を発表した。19年度のふるさと納税は約2,334万件、受入総額は約4,875億円で、前年度に比べ5%減少した。15年度から急増していた受入額が減少に転じた。同年6月から返礼品基準を遵守する団体のみ指定する制度開始の影響とみられる。団体別では、泉佐野市の185億円をトップに、都城市106億円、紋別市77億円、北海道白糠町67億円などが続く。泉佐野市は返礼品にギフト券を上乗せした除外前の2カ月だけの受入額。なお、ふるさと納税募集の関連費用は、返礼品調達費が1,375億円(構成比28%)で最も多いが、構成比は前年度の35%を下回った。このほか事務費394億円(同8%)、返礼品送付費377億円(同8%)など。
 一方、20年度課税の市町村民税控除額は3,391億円で、トップは横浜市145億円。以下、名古屋市86億円、大阪市71億円、川崎市64億円など大都市が続く。また、東京23区長で構成する特別区長会は8月7日、21年度国の施策・予算に関する要望を各府省に提出。その中で、ふるさと納税の特別区減収は424億円にのぼるとして、抜本的な見直しを要請した。
◎「ふるさとづくり事例集」を提出 ― 内閣府
 内閣府は8月5日、ふるさと活性化支援チームがまとめた「ふるさとづくり事例集」を安倍首相に手交した。事例集は、ふるさとづくりの参考となる事例合計101件を「環境」「人と人」「経済」「教育」「文化」に分けて紹介。具体的には、公園の管理運営を通じた地域住民との協働・NPO法人フュージョン長池(八王子市)、「自産自消」社会を目指す㈱マイファーム(京都市)、「自伐型林業」推進で中山間地を再生する自伐型林業推進協議会(高知県いの町)、シャッター商店街の空き家をカフェに改修など来街者によるにぎわいを復活するダンナビジョン(鹿沼市)などを紹介している。また、内閣府は8月24日、「関係人口創出・拡大官民連携全国協議会」(仮称)の創設に向け会員の募集を開始した。「都市部住民の関係人口化」に向け、全国の中間支援団体・民間事業者・自治体とのマッチングなどの協働の場とする。
 一方、国交省は8月17日、2021年度の離島留学の募集状況を発表した。同省の離島振興策の一環として21年度の離島留学募集の情報を取りまとめたもので、地域(離島)名と受入学校名、対象、受入体制・留学期間などをそれぞれ紹介している。
◎感染症下での税制議論を開始 ― 政府税制調査会
 政府の税制調査会は8月5日、総会を開催した。会合では、財務省が新型コロナウイルス対応による厳しい財政状況を説明。委員からは「消費増税を中核に据えた骨太の議論が必要」などの意見が出た。会合後、中里実会長は「今すぐ増税議論をという時期ではない。お金はかかるから、将来的に理論的な検討はしようということだ」と述べた。また、内閣府は7月31日の経済財政諮問会議に中長期の経済財政試算を提示した。感染症が歳入鈍化をもたらすため国と地方の基礎的財政収支の黒字化は2029年度になるとの試算を示した。なお、総務省は8月21日、感染症に関し自治体が許可した地方税の徴収猶予特例の4~6月分が8万1,925件、総額957億円だったと発表した。
 一方、総務省はこのほど、20年度普通交付税大綱を発表した。総額は15兆5,926億円(前年度比2.5%増)で、うち道府県分が8兆4,965億円(同3.9%増)、市町村分が7兆961億円(同0.9%増)。不交付団体は東京都と75市町村で、前年度より10市町村減った。
◎議員の請負禁止の緩和など提言 ― 総務省研究会
 総務省の地方議会・議員のあり方に関する研究会は8月24日、報告書をまとめた。地方議会に対する住民の関心低下と無投票当選の増加は「地方自治の機能不全をもたらす」として、議員の成り手不足解消に向けた方向性を示した。
 具体的には、「身分規定」が議員になる制約となっているとして、「請負」の範囲明確化と規制緩和などの方針を示すとともに、「兼職の禁止」では地方制度調査会答申も踏まえて公務員の立候補制限の緩和を示した。一方、議会3団体が提案した「議会の位置付けの法制化」は、現状でも地方自治法に規定があるとの意見を紹介し、「引き続き検討」とした。また、立候補に伴う休暇制度の創設では「事業主等関係者の負担等の課題にも留意」しながら検討すべきとの指摘にとどめた。議員報酬でも、小規模団体の低水準が成り手不足の要因との意見を紹介するが、「住民の理解を深めるための工夫や方策を検討する必要性」を指摘。併せて、議会3団体が要請している厚生年金への地方議員の加入も「国会、政党をはじめ各方面において、十分な議論が行われることを期待する」とした。
◎「Go Toイート事業」で48件を採択 ― 農水省
 農水省は8月25日、「Go Toイートキャンペーン事業」で、33府県の48事業者を決めた。新型コロナウイルス感染拡大で影響を受けている飲食業に対し期限(来年3月)を限定して需要喚起を図るもの。採択は、購入金額のプレミアム付き食事券を発行する食事券発行事業者が35件、オンライン予約の来店者にポイントを付与するオンライン飲食予約事業者が13件だった。
 一方、同省は8月5日、2019年度の食料自給率を発表した。カロリーベースでは38%と前年度より1ポイント上昇した。上昇したのは11年ぶり。サンマ・ブリ等の魚介類が不漁となり米消費も減少した一方で、小麦の単収が増えたのが要因だが、自給率は諸外国に比べ依然、低水準にある。また、同省は8月7日、農業生産における気候変動適応ガイドを作成した。気候変動による農業生産への影響が顕在化しているため、産地自らが気候変動に対するリスクマネジメントや適応策を実行するための指導の手引きとしてまとめたもの。対象は「水稲編」「りんご編」で、年内に「ぶどう編」「うんしゅうみかん編」もまとめる。
◎秋冬のコロナ拡大に向けた取組方針を決定 ― 政府
 政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は8月28日、「感染症に関する今後の取組」を決定した。秋冬の流行期に向け、①感染症法上の「2類感染症」の位置付け見直し②医療・福祉施設関係者・感染地域の一斉・定期的な検査実施③雇用調整助成金の延長 ― などを盛り込んだ。一方、全国知事会は8月21日、国に対し新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の増額と医師確保対策を要請した。知事会調査(8月4日現在)では、同地方創生臨時交付金は今後の申請・活用見込額を加えると5,005億円不足するとし、予備費充当も含め交付金の増額などを要請した。
 一方、文科省は学校再開後の学校の状況に関する関係団体との意見交換の一環として8月3日に全国知事会・同市長会・同町村会と意見交換した。その中で、首長からは①消毒と健康チェック・感染症対策を考慮した授業など負担が増加②自粛による交流減少に伴う子どもたちの心理的ケアも必要③第2波に向け迅速なICT環境とICT支援員の確保 ― などの意見が出た。これを受けて、羽生田文科相はICT環境整備・人的支援予算や学校・子供応援サポーター活用を要請した。
◎教育用コンピュータ配備なお微増 ― 文科省
 文科省は8月28日、公立小・中・高校の教育情報化の実態(2020年3月1日現在)を発表した。教育用コンピュータ1台当たり児童生徒数は4.9人で前年の5.4人よりわずかに上昇。普通教室のインターネット接続率も48.3%で前年の41.0%より上昇したが、なお過半数未満にとどまった。インターネット接続率は91.2%(前年度93.9%)に達しているが、指導者用デジタル教科書整備率は56.4%(同52.6%)だった。
 一方、政府のニューノーマル時代のIT活用懇談会は8月11日、最終報告をまとめた。デジタルトランスフォーメーションの遅れが新型コロナウイルス対策を制約したと指摘。このため、行政部門が先導して諸施策を講じるべきだとし、各府省・自治体ばらばらのシステム構築を廃した行政部門の完全デジタル化を国は3年・地方は5年で推進するよう提言。併せて、IT基本法と関連法も抜本的に見直し次期通常国会に提出すべきだとした。また、高市総務相は8月7日の記者会見で、マイナンバーカードを健康保険証として利用する申込を同日から始めると発表した。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)