地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2021年5月中央の動き


中央の動き


◎「地域の未来予測」の作成で報告書 ― 総務省
 総務省の地域の未来予測検討WGは3月31日、報告書を発表した。第32次地方制度調査会答申「2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応するための地方行政体制のあり方」(2020年6月)に盛り込まれた「地域の未来予測」の具体内容をまとめたもの。将来の行政需要や経営資源の長期的変化を客観的データを基に整理し、その資源制約の下で何が可能か、どのような未来を実現したいかを「目指す未来像」として作成するよう提案。その未来予測の対象分野に「人口構造の変化」「施設・インフラの老朽化」「子育て・教育」「医療・介護」「公共交通」などを例示した。併せて、各市町村に未来予測を基に地域住民と議論し、今後の政策や計画に反映するよう求めた。
 なお、第32次地制調は総務省「自治体戦略2040構想研究会」報告書を基に審議をスタートさせたが、同報告書では40年までに人口が大幅減少するなど全市町村の推計人口が示されており、初総会(18年7月)の席で、立谷全国市長会長が「(同発表は)唐突感があり、取組に水をさす」と批判。荒木全国町村会長も専門小委員会で「地域の未来予測」について「その使い方次第では、さらなる行財政改革や広域連携による効率化・集約化・合理化等への道具に使われることを懸念する」との危惧を示していた。


◎子ども・若者育成支援で推進大綱を決定 ― 政府
 政府は4月6日、「子供・若者育成支援推進大綱~全ての子供・若者が自らの居場所を得て成長・活躍できる社会を目指して」(第3次)を決定した。今後の支援方針・施策に、孤立対策や自殺、虐待、貧困など複合的課題への包括的な支援をはじめ、①多様な居場所づくり、地域と学校の協働②家庭教育支援、ネット利用の適正化③地域貢献活動の促進 ― などを掲げた。
 一方、厚労省は4月12日、子どもが家族等を介護するヤングケアラーの初の全国実態調査(中学・高校各2年生)をまとめた。世話している家族が「いる」との回答が中学生5.7%、高校生4.1%あった。世話の頻度は3~6割が「ほぼ毎日」で、その時間も1日平均「3時間未満」が多いが、「7時間以上」も1割おり、「睡眠が十分にとれない」も1割あった。しかし、ヤングケアラーの自覚は2%にとどまり、厚労省検討会では早期発見・把握、福祉サービスへのつなぎ、社会的認知度の向上の必要性などが課題に挙がっている。
◎議員の位置付け明確化などを提言 ― 自民党PT
 自民党の地方議会の課題PTは4月7日、地方議員のなり手不足対策などの提言をまとめた。地方議会の意思決定機関としての位置付けなどを2023年の統一地方選挙までに地方自治法に明記するとともに、条例により議会の組織形態を選択可能とすることも検討すべきだとした。併せて、立候補に伴う休暇保障の法制化と、地方議員の厚生年金への加入も求めた。このほか、①請負禁止の範囲明確化・緩和②若者や女性など多様な人材の立候補のため各政党で育成 ― などを提言。その上で、地方制度調査会で「令和時代にふさわしい地方議会・議員のあり方」を審議するよう求めた。
 一方、全国町村議会議長会はこのほど、町村議会実態調査結果(2020年7月1日現在)をまとめた。全国926町村の現議員数は1万834人(1町村当たり平均11.2人)で、うち女性議員は1,216人(11.7%)だった。また、議員報酬(月額)は21万3,902円で、町村長給料(70万7,887円)に対する割合は30.2%。期末手当は、ほとんどの議会で支給しており、その額は6月が100分の175、12月は同181だった。このほか、休日議会を30町村、夜間議会を16町村で実施していた。
◎「転職なき移住」でテレワーク推奨 ― 内閣府
 内閣府の地方創生テレワーク推進検討会議は4月8日、「『転職なき移住』による地方への人と知の流れの創出」をまとめた。コロナ禍でテレワークと地方移住への関心が高まったことを踏まえ、①自治体には「選ばれる地域」に向けた「一元的な情報発信プラットフォーム整備」と「相談対応」の実施②国にはテレワークを進める企業への表彰制度創設と国の制度紹介ガイドラインの作成 ― を要請。さらに、テレワークへ働き手が行動に踏み出す機運醸成も求めた。
 一方、総務省のポストコロナ時代のデジタル活用懇談会WGは4月21日、「取りまとめ骨子」を審議した。「新たな日常」を支える全国民へのデジタル利用環境の整備に向けた今後の取組に、①高度かつ強靱な情報通信環境の構築②最先端デジタル技術への投資推進とグローバル連携の強化③国民へのデジタル活用浸透の支援策 ― などを挙げた。また、同省は4月16日、2021年度の地域情報アドバイザー派遣申請の受付を開始したと発表した。ICTやデータ活用による地域課題解決の専門家を自治体に派遣する。20年度から実施しており、今年度は専門家212人に委嘱している。
◎消防団員確保へ報酬の基準を策定 ― 総務省消防庁
 総務省消防庁は4月13日、消防団員の処遇改善検討会報告書をまとめた。消防団員数の減少の中、災害の多発・激甚化で消防団員の負担が増加しているため、消防団員の「報酬基準」を初めて定めた。各自治体に条例を改正し2022年4月1日から施行するよう通知した。年額報酬を3万6,500円とし、「出動報酬」(新設)は1日当たり8,000円とした。なお、7割の市町村で2020年度の年額報酬が今回の基準を下回っている。
 一方、文部科学省はこのほど、災害時の学校給食実施体制を発表した。地震など自然災害で41%の学校が調理場損壊や停電・断水などの被災を経験。しかし、災害に備えた給食施設体制を整備した自治体は33%にとどまる。なお、被災自治体が事前準備すべきとした取組では①ガイドライン・マニュアルの作成(42%)②備蓄品・消耗品(ラップ等)の確保(39%)③施設設備の整備(24%)― が多かった。このほか、取組事例として「県と3町が災害発生時の小中学校給食で相互支援協定」(鳥取県日野郡)、「熊本市と事務委託事業で学校給食提供」(熊本県益城町)、「民間企業と食材等の供給協定」(生駒市)なども紹介した。
◎気候サミットで温室効果ガス46%削減宣言 ― 菅首相
 「気候サミット」が4月22日、40か国等の首脳が参加し開催(オンライン)された。菅首相は「2030年度の温室効果ガスを13年度から46%削減を目指す」と宣言。併せて、「30年までに全国各地に100以上の地域で脱炭素の実現を目指す」との方針も明らかにした。
 一方、国・地方脱炭素実現会議は4月20日、「地域脱炭素ロードマップ骨子」を審議した。同会議は、50年脱炭素社会実現に向け国・自治体の連携のあり方を検討するため昨年暮れに発足。同骨子では、100か所の脱炭素先行地域で25年度までに脱炭素実現の道筋を付けるとし、その具体策として①農山漁村では営農型再エネ、木質・家畜排せつ物等バイオマス、地熱発電、スマート農林水産業、森林整備②離島では洋上風力や太陽光などの再エネ、水素利用、船舶の電動化③都市部では住宅や公共施設、駐車場の屋根置き太陽光、再エネ熱利用 ― などの取り組みのほか、廃棄物広域処理・公共交通等の近隣市町村間の連携、再エネの豊富な地方と都市との連携なども掲げている。
◎インフラ維持管理の包括的民間委託で公募 ― 国交省
 国交省は4月23日、自治体のインフラ維持管理の包括的民間委託導入で公募を開始した。民間事業者に複数の業務や施設を包括的に委託することで、自治体には発注業務の負担軽減やコスト縮減などのメリットがある。同省では、包括的民間委託の導入に必要な調査・検討・資料作成などを1~2年間支援する。また、国交省は自治体に向けた維持管理への新技術導入の手引きを作成した。手引きは①担当部局内での事前検討②導入の意思決定・予算確保の調整③現場職員の説明会 ― など各ステップごとに留意点などを解説している。
 一方、同省は4月15日開催された国土審議会企画部会に改正土地基本法に基づく「土地基本方針」改正案を提示した。近く決定する。豪雨防災のため今国会に提出している「流域治水関連法案」を踏まえ河川に近接する農地・低未利用地を「雨水貯留」に活用する土地利用確保を明記するほか、①管理不全空き地に実効性ある行政的措置を可能とする仕組②所有者不明の管理不全化した土地・建物の管理制度③対面によらない地籍調査手続きの活用促進 ― などを盛り込む。
◎社会保障の伸び率など審議 ― 経済財政諮問会議
 政府の経済財政諮問会議は4月26日、経済・財政一体改革に向け社会保障の審議に着手。菅首相は、「財政健全化の旗を降ろさず具体策を検討する」と述べ、社会保障改革では現役世代の負担軽減、医療費の適正化に向けて議論を進めるよう指示した。政府は社会保障の伸びを2019~21年度は「高齢化の相当分におさめる」としたが、新たな3年間の目標を審議する。なお、内閣府が示した試算では21年度の基礎的財政収支の赤字は当初の8.4兆円が、コロナ関連補正予算等で40.1兆円に拡大、税収減も10.6兆円と試算した。このため、有識者議員は、①国保への法定外繰入自治体への普通調整交付金の減額②一人当たり介護費の地域差縮小に寄与する取組をパッケージで提示 ― などを提言した。
 一方、財務省の財政制度分科会は4月21日、地方財政について審議。財政健全化に向け自治体が取り組む①財政健全化条例で財政収支見通しの作成義務付け②高齢化の社会保障経費増加を示し歳入増・歳出削減の必要性指摘 ― などの事例を紹介し、自治体の標準的な財政需要の「標準」そのものの見直しを訴えた。
◎コロナワクチン接種で地方支援本部 ― 総務省
 総務省は4月27日、新型コロナワクチン接種地方支援本部を設置し初会合を開いた。菅首相が4月23日に「希望する高齢者に対し7月末を念頭に各自治体が2回の接種を終えるよう政府を挙げて取り組む」と表明し、武田総務相に自治体支援に万全を期すよう指示したことを受けたもの。総務相は同日の記者会見で「全都道府県・政令市と総務省幹部との連絡体制を構築しワクチン早期接種に向けた働きかけを行う」「進捗に課題のある自治体を個別に丁寧に支援する」と述べた。
 一方、地域医療確保に関する国と地方の協議の場が4月5日に開催され、全国知事会など地方3団体はワクチン接種に向け潜在看護師の掘り起こしや退職医師の派遣など人材確保の支援を要請。さらに、全国知事会は新型コロナウイルス緊急対策本部を相次いで開催、ワクチンの具体的供給スケジュールや配分量などを可及的速やかに示すよう繰り返し要望。全国市長会と全国町村会も4月15日、それぞれ河野担当相とWeb会議を開き、「ワクチンが何日にどのくらいの量が供給されるのか早期に詳細の明示を」(市長会)、「多くの町村が不安。ワクチンの供給時期の迅速な情報提供を」(町村会)と迅速・具体的な情報提供を要請した。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)