地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2021年6月中央の動き


中央の動き


◎環境教育で地域連携が少ないことが判明 ― 環境省
 環境省は5月10日、2020年度の環境教育に関する調査結果を公表した。一般国民の意識調査ではごみ分別やリサイクルについて45%が「日常的に」実施と回答。環境を学んだ場で「学校教育」を挙げた人は60歳以上は19%と低かったが、29歳以下は85%あった。教職員調査では、行っている環境教育分野は「ゴミの分別・紙のリサイクル」が48%と最も多いが、環境教育での地域・NPO・企業等との連携は「ない」が47%、町内会や地域住民等と継続的な協力・連携も8%で、そのガイドラインも「ある」は4%にとどまる。
 また、同省は5月11日、廃プラスチック類処理状況を公表した。不法投棄が1自治体、保管基準違反が7自治体で確認された一方、同省通知を踏まえ11自治体が廃プラスチック類の事前協議等による域外からの搬入規制等の廃止・緩和を実施していた。同省は、プラスチック資源循環促進法案の成立後、「循環型社会形成推進交付金」の交付要件に家庭プラスチックごみをリサイクル資源として収集していることを追加する。


◎自治体情報システム標準化などデジタル関連法成立
 デジタル改革関連6法が5月12日、成立した。柱となるデジタル庁設置(今年9月1日)や自治体情報システムの標準化、個人情報保護関連3法の統合と自治体の個人情報保護制度の個人情報保護委員会への一元化なども盛り込まれた。武田総務相は5月25日の記者会見で自治体情報システム標準化について「目標時期は2025年だが、夏にも標準化手順を公表、財政支援などを講じたい」と述べた。また、総務省は5月18日、高齢者向けのデジタル活用支援講演会を携帯ショップ等を中心に全国1,800カ所で行うと発表した。
 一方、全国知事会は5月21日、「デジタル社会に向けた提言」(案)をまとめた。デジタル社会を支える基盤強化のため、自治体での外部人材確保に向け国の官民人事交流制度と同様の制度創設やマイナンバー制度の利用拡大を見据えた法改正、国と地方の協議の場にデジタル分科会の設置を提案。また、「3つのS」で①利用者の利便性向上を主眼に据えた行政事務の在り方の見直し②テクノロジーを活用した社会課題の解決や社会変革の加速と規制改革の推進③テクノロジーを活用した新しい働き方の加速 ― などを提言した。
◎第8期の介護保険料が初の6,000円台に ― 厚労省
 厚労省は5月14日、第8期(2021~23年度)の介護保険料をまとめた。全国平均月額は6,014円で前期(18~20年度)の5,869円より2.5%上昇した。引き上げは763団体(49%)で、569団体(36%)は据え置き、239団体(15%)は引き下げた。東京都青ヶ島村が9,800円で最も高く、以下、秋田県五城目町、福島県葛尾村、岩手県西和賀町、大阪市、福島県三島町の各団体も8,000円台と高い。逆に、北海道音威子府村と群馬県草津町の3,300円が最も安く、以下、東京都小笠原村、宮城県大河原町、埼玉県鳩山町、千葉県酒々井町も3,000円台と安い。なお、介護保険制度が発足した第1期(00~02年度)は2,911円だった。
 一方、医療法等一部改正が5月21日、成立した。都道府県の医療計画に「新興感染症等への対応」を追加したほか、医師の働き方改革や地域医療構想実現に向けた医療機関の取組支援を盛り込んだ。具体的には、2020年度創設した「病床機能再編支援事業」を地域医療介護総合確保基金に制度化し、再編医療機関への税制も優遇する。公立・公的病院再編をめぐり地方側が反発、コロナ禍で再編論が先送りされていた。
◎2050年の「国土の長期展望」で報告書 ― 国交省
 国交省の専門委員会は5月14日、2050年を見据えた国土の長期展望に関する報告をまとめた。「地方への人の流れを生み出す多彩な地域生活圏の形成」に向け、人口10万人前後の圏域を目安に地域生活圏の維持・強化を掲げた。併せて、人口30万・50万の大都市圏域ではデジタル下での適正な圏域のあり方検討、農山漁村では「小さな拠点」で生活サービス機能と集落機能の維持・発揮が重要だとした。さらに、人口減少の国土利用には「国土の適正管理」が必要だとし、国・都道府県・市町村・地域集落の各レベルで国土管理の指針となる「国土の管理構想」の策定を提言した。
 また、同省は5月21日、地方自治体の入札契約適正化法の実施状況(2020年10月1日現在)を公表した。一般競争入札と総合評価落札方式は、都道府県・政令市は全団体で、市町村はそれぞれ1,426団体(83%)、1,083団体(63%)で導入。また、予定価格の事後公表は34都道府県(72%)、16政令市(80%)、986市町村(57%)で実施。建設キャリアアップシステムを35都道府県(75%)、8政令市(40%)、72市町村(4%)で実施または検討していた。
◎自治体はヤングケアラーの実態把握を ― 厚労省等
 厚労省・文科省のヤングケアラー支援連携プロジェクトチームは5月17日、報告書をまとめた。家族を介護するヤングケアラーは表面化しないため、自治体での現状把握と福祉・介護・医療・教育など関係機関等への研修推進などを提言。さらに、検討すべき支援策に、①悩み相談を行う自治体事業の支援②ヤングケアラー支援のマニュアル作成③スクールソーシャルワーカー等の配置 ― などを挙げた。このほか、ヤングケアラーの家族に対するアセスメントの留意点などを自治体に周知するとともに、2022~24年度をヤングケアラー認知度向上「集中取組期間」とし、当面、中高校生の認知度5割を目指すことも求めた。
 一方、総務省は5月4日、我が国の子ども数を発表した。21年4月1日現在の子ども(15歳未満)の数は1,493万人で前年より19万人減少。40年連続の減少で過去最少となり、全国人口に占める割合も11.9%(前年12.0%)に低下。同割合は1950年の35.4%が65年は25.6%に低下、97年には15.3%と65歳以上の15.7%も下回った。諸外国と比べると韓国12.2%、中国16.8%、フランス17.7%、アメリカ18.6%など日本が最低。
◎小学校35人学級で国と地方の協議の場 ― 文科省等
 小学校の35人学級などをめぐり「今後の教職員定数のあり方に関する国と地方の協議の場」の初会合が5月17日開催された。会合では、萩生田文科相が協議の場での議題に①加配定数を含めた教職員定数②正規教員の配置促進と外部人材の活用③教室不足など教室の環境整備 ― などを挙げた。これを受けて、全国知事会が35人学級に向け加配定数の維持と中学校での少人数学級編成の実現など、全国市長会は35人学級実施で教室数が不足する学校があると指摘するとともにICT機器の整備などを要請。全国町村会は過疎地域では小中一貫教育に取り組んでいるが、小・中教員免許の併有が少なく学校現場で不都合が生じているとし、免許取得の要件緩和など環境整備を要請した。
 一方、全国知事会は5月19日、「これからの高等学校教育のあり方」で報告書をまとめた。高校の魅力化・特色化を推進する分権型の教育制度に向け、①特色あるカリキュラム編成②地域ぐるみのキャリア教育推進③教職員の確保 ― などを提案。また、生徒の学習状況等による就学年限の柔軟化、大学の4月入学・秋季入学と企業・官公庁等の通年採用拡大も求めた。
◎持続的低密度社会の農村政策で中間報告 ― 農水省
 農水省の検討会は5月19日、「人口分散と持続的低密度社会を実現するための新しい農村政策」で中間報告をまとめた。コロナ禍を契機にテレワークや兼業・副業など新たな働き方や田園回帰の流れが加速する一方、農村への再評価も高まっていることを踏まえ、大都市から農村への人口分散による「持続的な低密度社会」実現に向けた新たな農村政策を提言した。具体的には、農村での所得・雇用機会を確保するため農村マルチワーカーや「半農半x」実践者など多様な形で農に関わる者を育成するなど「農山漁村発イノベーション」を推進するとともに、①農村集落の共同活動や農村地域づくり事業体(農村RMO)の育成②有機農業や放牧など持続可能な土地利用を支える農地・農業水利施設の整備③農村ファンづくりや外部人材と農村とのマッチング推進 ― などを提言した。
 一方、同省は5月20日、農業人材の確保に向けた検討会を発足させた。持続的な農業実現のため意欲ある多様な若者を農業に呼び込み新規就農者を増やすのが狙い。初会合では、関連民間企業からヒアリングした。
◎避難所の感染対策など防災基本計画を修正 ― 政府
 政府の中央防災会議は5月25日、防災基本計画等の修正を決めた。新型コロナウイルス感染症拡大を踏まえ、避難所の衛生管理や適切な空間管理、避難者の健康管理、感染症対策に配慮した避難所開設と運営訓練の積極的実施、マスク・消毒液やパーティションなどの備蓄促進も追加した。また、コロナの自宅療養者の危険エリア居住の確認や避難確保への具体的な検討・調整なども盛り込んだ。
 一方、全国知事会は5月27日、「災害時の死者・行方不明者の氏名等公表に係るガイドライン」(案)をまとめた。公表の公益性と個人情報保護の観点から、3つのパターンを示し、「公表の判断基準」を定める必要性を指摘。具体的には、①個人情報保護を重視=家族・遺族の同意と住民基本台帳の閲覧制限がないことを要件に公表②発生事実を速やかに公表=家族・遺族の同意や閲覧制限の確認を前提にせず公表③被災状況から判断=迅速な救出救助が必要な場合は公表 ― を示した。また、「大規模災害への対応力強化に向けた提言」(案)では、感染症に対応した避難施設改修や宿泊施設借上等の財政支援、自宅療養者の避難で個人情報の共有・提供のための法令上の整備を求めた。
◎過労死防止対策大綱で見直し案 ― 厚労省
 厚労省は5月25日、「過労死防止対策大綱」の見直し案を公表した。過労死防止に向け勤務間インターバル制度の導入が低い中小企業の導入率を15%(現行10%)としたほか、時間外労働の上限規制導入などの法整備の遵守の必要性を強調。新型コロナウイルス感染症に伴う医療現場など一部職場での過重労働実態やテレワーク・副業・兼業・フリーランスなど多様な働き方での労働環境の状況把握の必要性も盛り込んだ。
 一方、厚労省の障害者雇用・福祉施策の連携強化検討会は5月21日、報告書素案を提示した。福祉・雇用の各サービス等を選択・決定する前段階で「共通の枠組み」によるアセスメント実施が望ましいとした上で、①雇用と福祉の両分野の基本的知識などを付与する研修制度の創設②企業等で就労しつつ就労継続支援事業の利用の推進③障害者就職・生活支援センターを基幹型機能として強化・充実 ― などを提言した。また、厚労省はこのほど、コロナ禍で特に経済的基盤の弱い人への就労を通じた中長期的な自立支援・住居確保につなげる「ひとり親自立促進パッケージ」を策定した。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)