地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2021年10月中央の動き


中央の動き


◎地球温暖化対策計画の改訂で原案 ― 政府
 政府の地球温暖化対策推進本部は9月3日、地球温暖化対策計画の政府原案を了承した。10月下旬から開催されるCOP26(国連気候変動枠組条約締約国会議)までに正式決定する。原案は、「2050年カーボンニュートラル」宣言と温室効果ガス2030年度46%削減の目標実現に向け、各分野の削減率に産業38%、業務その他51%、家庭66%、運輸35%、エネルギー転換47%などを掲げた。菅首相は同会合で「10月末からCOP26が開催される。我が国の具体的な行動を世界に示し、新興国を巻き込みながら世界の脱炭素化と持続可能な成長を主導していく」と述べた。
 一方、環境省は9月17日から「脱炭素先行地域」の公募に向けた自治体説明会を開始した。政府が今年6月に策定した「地域脱炭素ロードマップ」に「脱炭素先行地域」を全国に100か所設けることが明記されたことを受けたもの。説明会では、選定の考え方やスケジュール、予算措置などを紹介。同省は、来年1月から公募を開始し、春には第1弾を選定し公表する。


◎新重点計画策定へデジタル社会構想会議発足 ― 政府
 政府は9月6日、第1回デジタル社会推進会議を開催した。会議では、①行政サービスのデジタル化②暮らしのデジタル化③産業のデジタル化④デジタルデバイドへの対応 ― などを検討、今年6月策定の「デジタル社会実現に向けた重点計画」を改訂する。具体的には、「国・地方の情報システムや業務プロセスがバラバラで組織横断的なデータ活用が不十分」との認識の下、自治体のシステム統一・標準化や霞が関システムの統合・一体化のほか、医療、教育、防災、契約・決済などの分野でのデジタル化を検討する。
 一方、文科省は9月9日、学校教育情報化推進専門家会議を発足させた。ICTを児童生徒の資質・能力の育成に活用するほか、①誰一人取り残さない環境実現②デジタル化による校務・学習などの変革③ICTを安全に活用できる基盤づくり ― などを検討する。なお、文科省等が9月3日に発表したGIGAスクール構想アンケート調査では、児童生徒・教職員から「ネットワーク回線が遅い」「タブレットを持ち帰れない」「使う授業が限られている」「教職員のICT活用のサポートが必要」などの意見が寄せられた。
◎民間建築物の木材利用促進へ協議会 ― 農水省
 農水省は9月13日、民間建築物の木材利用促進協議会を発足させた。今年6月に改正された公共建築物等利用促進法で木材の利用促進の対象が公共建築物から民間建築物一般に拡大されたことを受け、各界の関係者が一堂に会して木材利用拡大の課題や解決策について意見交換する場を設けたもの。初会合では、各界関係者が木材利用の取組状況、関係各省庁からは利用促進に向けた情報提供が行われた。このほか、同省は9月17日、同改正法が10月1日施行されることを受けて、10月を「木材利用促進月間」、10月8日を「木材利用促進の日」とすると発表した。また、9月29日には合法伐採木材等の流通・利用検討会も発足させた。
 一方、全国知事会と全国町村会は9月21、27日、新規就農者育成総合対策で農水大臣に緊急申入れした。農水省が2022年度概算要求に盛り込んだ同対策は、49歳以下の新規就農を促進するため経営開始資金1,000万円を支援、その償還金を国・地方が支援する。これに対し、両会は「事前に地方の協議や意見聴取もないまま2分の1の地方負担が唐突に盛り込まれた。これは国と地方の信頼関係の毀損につながり極めて遺憾」と批判。地方への納得のいく説明を求めた。
◎災害時の氏名公表で保護条例例外規定も ― 消防庁等
 総務省消防庁と内閣府は9月16日、「災害時における安否不明者の氏名等の公表」を各都道府県に通知した。通知は、今年7月の熱海市土石流災害で静岡県が熱海市・警察と調整し安否不明者の名簿を公表、本人や知人からの連絡で救助対象者の絞り込みにつながった事例を紹介した上で、①氏名等公表の可否や判断基準、寄せられた安否情報の確認・共有の一連の手続きについて市町村や関係機関と連携の上、平時から検討②氏名等公表は都道府県が基本となるが、局所的災害など市町村が行うことが安否情報の収集に資する場合は都道府県との事前調整に基づき市町村が行うことも考えられる③生命・身体の保護など緊急の個人情報の提供を踏まえ、個人情報保護条例に定める個人情報の利用・提供制限の例外規定の適用を検討 ― するよう要請。併せて、DVやストーカー行為など秘匿する必要がある者が不利益を被らない取り扱いも求めた。
 一方、全国知事会・同市長会・同町村会は9月16日、北朝鮮の弾道ミサイル発射に対し、「我が国の自治体を代表して厳重に抗議するとともに、挑発行為の即刻中止を強く要請する」との抗議文を発表した。
◎「こども庁」創設に向け有識者会議を発足 ― 政府
 政府は9月16日、こども政策推進に係る有識者会議を発足させた。菅首相が「デジタル庁」と併せて提唱した「こども庁」創設に向け年内にも基本的方針をまとめる。初会合では、主な検討事項に①安心して妊娠・出産、子育てができる環境整備②各ライフスタイルに応じた切れ目ない対応③児童虐待やいじめ・自殺、不登校への対応強化 ― などのほか、「教育と福祉の連携」も掲げたが、同連携では以前の「幼保一元化」をめぐる縦割り論争の再来を懸念する声も聞かれる。
 また、厚労省は9月7日、乳幼児等医療費に対する援助の実施状況を発表した。2020年4月1日現在、全都道府県・市町村が援助を実施。対象年齢は、うち都道府県では「就学前」が通院25団体(53%)・入院20団体(43%)で最も多く、所得制限は「無し」が通院18団体(38%)・入院19団体(40%)だった。市町村での援助は、「15歳年度末」が通院873団体(50%)・入院895団体(51%)で最も多いが、「18歳年度末」も通院733団体(42%)・入院799団体(46%)あった。所得制限「無し」は通院1,499団体(86%)・入院1,504団体(86%)だった。
◎氏名の読み仮名法制化を法制審議会に諮問 ― 法務省
 法務省は9月16日、氏名の読み仮名の法制化に向けた戸籍法の改正を法制審議会に諮問した。読み仮名の法制化は過去3回浮上したが見送られた。しかし、昨年暮の閣議決定「デジタル・ガバメント実行計画」で、マイナンバーカードに氏名のローマ字表記の法制化方針が示されたことを受けて、改めて法制化を諮問したもの。なお、民間の「氏名の読み仮名の法制化研究会」取りまとめ(今年8月)は、法制化が必要な理由に①情報システムの検索・管理の能率化②各種手続きの不正防止の補完 ― などを挙げた上で、読み仮名の収集方法では、新規分は戸籍届書の記載事項に法規定する一方、既に戸籍に記載されている者には、①一定期間内に届出を義務化②一定期間内の届出を促す③市区町村長の職権で記載 ― との3案を提案している。
 また、侮辱罪の厳罰化も諮問した。インターネット上での誹謗中傷が社会問題化しているため「一年以下の懲役もしくは禁固刑・30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」とするよう諮問した。なお、総務省のプラットフォームサービス研究会が今年7月に発表した中間報告でも深刻化するSNS上での誹謗中傷・偽情報への対応策をまとめている。
◎行政相談員などの認知度の低さ判明 ― 内閣府
 内閣府は9月17日、行政相談に関する世論調査結果を発表した。国の行政全般の苦情・意見を受け付ける「行政相談員」を85%が「知らなかった」と回答、総務省の「行政相談センター」が行政への苦情や相談を電話やインターネットでも受け付けていることも「知らなかった」が82%あった。また、総務省が導入を検討している「パソコンやスマートフォンを活用したリモート相談」は「利用したい」が52%、「利用したくない」が47%と拮抗。リモート相談を利用したい理由では「移動時間・費用が節約できる」66%、「相手の顔が見えるので電話・メールより伝えられそう」48%、「感染対策で安心できる」43%などが多かった。
 また、内閣府は9月1日、満足度・生活の質に関する調査結果を発表した。2021年3月、約5,000人対象に調査した。生活満足度(10点満点)は5.74で、19年の調査開始以降の最低となった。コロナ感染の不安・ストレスは男性49%、女性59%。友人・知人との交流減も男性48%、女性59%で、不安は女性が男性を上回った。地域別では、感染の不安・ストレスは地方圏53%に対し東京圏58%、友人・知人との交流減も地方圏52%、東京圏58%と、いずれも東京圏が高かった。
◎高齢者人口が3,640万人と過去最多を更新 ― 総務省
 総務省は9月19日、「我が国の高齢者」を発表した。2021年9月15日現在、総人口が減少する中、65歳以上高齢者は3,640万人、前年より22万人増加した。総人口に占める割合も29.1%(前年28.8%)に上昇、いずれも過去最高を更新した。うち75歳以上は1,880万人で、前年より9万人増加、総人口比は15.0%だった。また、高齢就業者(2020年)は906万人で17年連続して増加、過去最多となった。全就業者数の14%を占める。年齢階層別では、65~69歳の就業率は50%だが、男女別では、男性が60%、女性が40%と格差がある。また、70歳以上の就業率は18%で上昇を続けている。
 一方、厚労省は9月14日、今年度中に百歳を迎える百歳高齢者表彰の対象者が4万3,633人、前年度より1,831人増えると発表した。また、住民基本台帳に基づく百歳以上高齢者は8万6,510人で前年より6,060人増えた。なお、百歳以上高齢者の88%は女性だった。
◎コロナ禍の影響踏まえ総合戦略を再改訂へ ― 内閣府
 内閣府は9月21日、地方創生有識者懇談会を発足させた。コロナ感染症が地方に及ぼす中長期的な影響を踏まえ、昨年暮れの「第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略」を再改訂する。具体的には、休業や雇用・観光需要の減少、地域イベントの中止などのマイナス面のプラスへの転換方策、コロナ禍に伴う地方への関心の高まりや地方への人の流れ増加、テレワークなど新たな働き方などを中長期的に継続・拡大する方策などを検討、年末にもまとめる。
 一方、文科省は8月30日、「魅力ある地方大学実現のための支援の在り方」を発表した。一極集中の脱却と地方分散型社会の実現には地域の「知と人材の集積拠点」である地方大学にしか果たせない役割があると指摘。支援の具体策として、①地域の産業界や自治体等と地域の将来像・人材像を議論し地域社会と連携した地域ならではの質の高い人材育成②自治体・産業界・金融機関などと高度な連携推進体制「地域連携プラットフォーム」の構築③地域ならではのイノベーション創出など産学官金連携の強化や大学発ベンチャーの創出支援 ― などを提案した。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)