地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2021年11月中央の動き


中央の動き


◎農村地域への移住願望「なし」が73% ― 内閣府
 内閣府は10月1日、農山漁村に関する世論調査を発表した。都市地域と農山漁村地域の交流について「必要」が91%あったが、農山漁村地域への移住願望は「ない」が73%だった。なお、移住願望が「ある」と回答した人(27%)のうち「コロナ感染症が影響した」のは6%にとどまった。また、都市住民が移住する際の問題点では「仕事がない」(57%)、「交通手段が不便」(49%)などが多く、農山漁村地域に移住してくる都市住民に期待することでは「若い世代が地域で子育て」(48%)、「新たな産業の展開」(41%)が多かった。このほか、農泊(農山漁村滞在型旅行)は「知っていた」は34%だった。
 一方、農水省は10月8日、「農業参入フェア2021」を東京(11月17日)、大阪(12月2日)、福岡(12月10日)で開会すると発表した。法人の農業参入促進のため、希望法人と誘致地域のマッチングを行う。なお、法人の農業参入は09年の農地法改正で全面自由化され、19年12月現在3,669法人が参入している。


◎来年度予算ではコロナ対応の検証が必要 ― 財務省
 財務省の財政制度等審議会は10月5日から2022年度予算編成に向けた審議を開始。10月11日には地方財政と医療機関へのコロナ支援を審議した。地方財政では、コロナ対応で地方創生臨時交付金が総額3兆6,500億円措置されたが、「コロナ交付金、既存事業財源に利用」などの報道を挙げ、国費による支援の必要性を精査すべきだとした。また、コロナ対応で1,290医療機関に緊急支援事業補助金が総額1.3兆円支給され、医業収益は6億4,000万円の黒字となったと強調した。
 一方、総務省は9月30日、2020年度の都道府県・市町村決算を発表した。決算規模がコロナ対策のためいずれも過去最大となった。都道府県(通常収支)の歳入は60兆7,691億円(前年度比22.5%増)、歳出は58兆7,808億円(同21.9%増)で、実質収支は1兆285億円の黒字、経常収支比率は94.4%で前年度より1.2ポイント上昇した。市町村(同)は歳入76兆4,371億円(同27.8%増)、歳出74兆3,104億円(同28.0%増)で、実質収支は1兆6,004億円の黒字。経常収支比率は93.1%で前年度より0.5ポイント低下した。
◎農業遺産は「知らない」が63% ― 内閣府
 内閣府は10月8日、農業遺産に関する世論調査を発表した。農業遺産は、国連食糧農業機関が2002年に創設、日本では11年認定の「能登の里山里海」「トキと共存する佐渡の里山」など現在11地域が認定されている。世論調査では、農業遺産を「知っていた」は37%で、「知らない」が63%だった。それでも、同地域の特産品を「買いたい」は78%、「行ってみたい」も76%あった。また、参加したい同地域の取組については「物産展での販売」(58%)、「料理のレストラン提供」(47%)などが多かった。さらに、期待する同地域での取組では「農林漁業の後継者育成」(54%)、「特産物のブランド化」(53%)などが多かった。
 一方、農水省は10月13日、「世界農業遺産国際会議2021」を石川県で11月25~27日に開催すると発表した。国際機関や国内外の認定地域の代表者、研究者が一堂に会し、同認定の観光・産業への波及成果や今後の活用・保全の方策などを議論する。
◎ダンピング対策の取組状況を「見える化」 ― 国交省
 国交省は10月13日、2020年度の入札契約適正化法に基づく実施状況を発表した。ダンピング受注の排除を図るため、各市区町村の①低入札価格調査制度の導入状況、調査基準価格算定式の設定水準②低入札価格調査による排除実績(排除率)③最低制限価格制度の導入状況・最低制限価格算定式の設定水準 ― について「見える化」した。その結果、最低制限価格算定式の設定水準では2政令市、151市区、181町村、調査基準価格算定式の設定水準では1政令市、116市区、87町村で下回る基準を設定していることが分かった。
 一方、内閣府は10月15日、「道路に関する世論調査」を発表した。道路交通の安全性向上対策では「歩行者・自転車・自動車の分離」(58%)などが多く、道路の維持修繕・更新では「予防的な修繕で長持ちさせる」(41%)が多く、利用者が少なくなった橋の対応では「橋の規模を縮小し残す」(38%)と「少数でも修繕など引き続き行い残す」(37%)が拮抗、「撤去すべき」(22%)を上回った。修繕が必要な橋・トンネルの情報公開では「必要」が94%を占めた。
◎日常生活回復へ山際担当相と意見交換 ― 地方3団体
 全国知事会、全国市長会、全国町村会は10月13日、山際経済財政担当相とコロナ感染症の緊急事態宣言解除後の日常生活回復に向けて意見交換した。山際担当相は、緊急事態宣言解除の経緯を説明した上で、「自治体のご意見等も十分に踏まえ『ワクチン・検査パッケージ』の具体的運用、制限緩和の内容や時期について検討していきたい」と述べた。これを受けて、平井全国知事会長は、第5波の早期分析・検証と今後の有効な具体的対策の提示、全事業者への補正予算による大胆・強力な経済対策の断行などを要請。立谷全国市長会長は、3回目のワクチン接種を急ぐこと、ワクチンパスポートの早期体制づくりなどを要請。荒木全国町村会長は、疲弊した地域経済の立て直しに向け「ワクチン・検査パッケージ」「第三者認証制度」を活用した行動制限緩和等を早期に明確化するよう求めた。
 また、全国知事会は10月21日、コロナ感染症に関する国との意見交換会を行った。厚労省は、今後の保健・医療提供体制で都道府県の「病床・宿泊療養施設確保計画」を「保健・医療提供体制確保計画」にバージョンアップするとし、「次の感染拡大に向けた安心確保の取組の全体像」を示した。全国知事会は①第6波に備えた効果的対策の提示②第5波の教訓を踏まえた検査・医療体制・水際対策の強化 ― などを要請した。
◎直接請求の不正防止策検討へ研究会 ― 総務省
 総務省は10月18日、直接請求制度の運用上の課題研究会を発足させた。不正な署名収集の防止策と署名者等の個人情報保護について検討、年度内にも報告をまとめる。大村愛知県知事のリコール署名では8割、約36万人分が無効となり関係者も逮捕され、愛知県選管が総務省に①請求代表者の委任届の再導入②署名収集者の署名の義務付け③署名簿の調査権限の付与 ― などを求める提案書を提出。これを受けて、研究会では不正な署名収集の発生要因となる署名簿や選管の署名確認などのあり方、不正な署名収集の防止策などを検討。署名簿の縦覧も検討する。現行制度は、署名者の氏名・住所・生年月日などを誰もが縦覧できるが、個人情報保護の観点から見直しの必要性などを検討する。
 一方、総務省は10月25日、行政不服審査法の改善検討会の中間まとめを発表した。2014年の法改正の運用状況と評価を踏まえ、①迅速な救済に向け責任体制の整備と標準審査期間の設定促進、運用マニュアルの整備②制度の活用促進・積極的な情報提供のため国民に対する案内所の整備③公正性向上と審理充実のため、実践的な研究実施、審理員候補者や補助者を確保・派遣する仕組み整備 ― などを提言した。
◎エネルギー基本計画に原発抑制明記 ― 政府
 政府は10月22日、2030年度の温室効果ガス46%削減などに向けた第6次エネルギー基本計画と地球温暖化対策計画、気候変動適応計画を閣議決定した。原子力では「安全性を最優先し、可能な限り原発依存度を低減する」との方針を示し、再生可能エネルギーでは太陽光・陸上風力の導入拡大、地熱の導入拡大に向け自然公園法・温泉法・森林法の規制見直しを進める。また、水素を新たな資源と位置付け社会実装を加速。その上で、2030年度の電源構成の「野心的想定」で再エネ36~38%、原子力20~22%、石炭19%などを掲げた。
 地球温暖化対策計画では、46%削減目標の実現に向け部門別削減率を産業38%減、業務その他51%減、家庭66%減、運輸35%減などとした。このため、改正地球温暖化対策推進法に基づき自治体が「促進区域」を設定するほか、100以上の「脱炭素先行地域」を創出する。また、気候変動適応計画では、気候変動による被害防止・国民生活の安全・経済の発展に向けあらゆる関連施策に気候変動適応を組み込むとした。具体的には、農林水産業ではコメの高温耐性品質の導入、自然災害では「流域治水」の推進、自治体の気候変動適応に関する施策の促進などを進めるとした。
◎関係人口で全国フォーラムを開催 ― 内閣府
 内閣府主催の「関係人口全国フォーラム2021」が10月22日、「いま学びたい、かかわりのポイント」をテーマに開催された。基調講演で、指出一正「ソトコト」編集長が「関係人口のいま、これから」と題して講演。各地での「コトアカデミー」の取組を報告するとともに「オンライン関係人口」でその幅が拡大しているとし、関係人口を継続的に維持・推進するための視点に①関係者が集まるスナックなど関係案内所の創設②参加者が未来をつくっている手応えを感じられ、自分ごととして楽しめる ― などが必要だと指摘した。
 分科会「関係人口を迎え入れる取組~自治体の視点から」では、岡山県西粟倉村の上山隆浩地方創生特任参事が「百年の森構想」実現に向けた関係人口との共同事業やスマートフォンの「西粟倉アプリ村民票」などの取組を報告。分科会「関係人口をつくる取組~かかわりしろの見つけ方」では、渡邊享子(株)巻組代表取締役が石巻市で空き家を拠点にした地元住民との接点を生み出す取組などを報告した。これらを受けて、小田切徳美明治大学教授が、①地域課題を定義し打ち出すこと②人口が減少しても地域人口で多様性が出てきて地域が強くなる③関係人口から自治体の役割などを見直すきっかけとすること ― などと総括した。
◎全都道府県でボーナス引下げ勧告 ― 各人事委員会
 全47都道府県の2021年度人事委員会勧告が10月25日、出そろった。月例給は全団体が据え置きとし、ボーナスは全団体が引下げを勧告した。全団体のボーナス引下げ勧告はリーマンショックが影響した09年度以来12年ぶり。引下げ勧告の幅は、37道府県が0.15か月、7都県が0.1か月、青森・鳥取・高知の3県は0.05か月だった。なお、人事院は8月、月例給は改定せず、ボーナスを0.15か月引き下げるよう勧告していた。
 一方、厚労省は10月22日、新規学卒就職者の就職後3年以内の離職状況(2020年度)を発表した。離職率は、大卒が31.2%(前年度比1.6ポイント低下)、短大等41.4%(同1.6ポイント低下)、高校36.9%(同2.6ポイント低下)でいずれも前年度より低下した。新型コロナウイルス感染拡大が影響したとみられる。産業別では「宿泊業・飲食サービス業」が51.5%(同1.1ポイント低下)、「生活関連サービス業・娯楽業」は46.5%(同0.3ポイント上昇)だった。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)