地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2022年4月中央の動き


中央の動き


◎盛土を全国一律基準で規制へ新盛土法案 ― 政府
 政府は3月1日、宅地造成等規制法改正案を閣議決定した。昨年の熱海市盛土崩壊を契機に実施した総点検で必要な点検カ所が約3.6万カ所あったが、現在、盛土は宅地や森林、農地など個別法律で開発を規制。このため、土地の用途にかかわらず危険な盛土を全国一律の基準で包括的に規制する。具体的には、①都道府県知事が盛土で人家等に被害を及ぼしうる区域を規制区域に指定②同区域内の盛土を知事の許可対象とする③盛土エリアに応じて必要な許可基準を設定し、施行状況の定期報告、完了検査を実施④災害防止のため土地所有者だけでなく原因行為者にも是正措置を命令 ― などを盛り込んだ。併せて、罰則も強化する。
 一方、総務省は3月4日、自衛隊の災害派遣実態調査を発表した。自衛隊に災害派遣を要請した市町村の3割が「判断基準」にむずかしさを実感したほか、想定した自衛隊活動拠点が他と競合して使用できない、自衛隊の撤収時期を自治体が情報提供しないなどの事例があった。このため、内閣府に①市町村は早期に自衛隊との相談を準備②活動拠点の選定準備③撤収のため自衛隊と活動期間の見通し共有 ― などを勧告した。


◎賃金引上げ・働き方改革推進など提唱 ― 諮問会議
 政府の経済財政諮問会議は3月3日、所得向上と人的資本の強化を審議。民間議員が、①若者や女性の活躍②壮年期の円滑な労働移動③高齢者の労働参加 ― を促進する賃金引上げ・働き方改革を進めて国民所得を向上させる必要性を強調。併せて、同一労働同一賃金の推進など正規・非正規の処遇格差や男女の賃金格差の是正、「106万円・130万円の壁」是正に取り組むよう提案。これを受けて、岸田首相は「この25年間で働き盛り世帯の所得が100万円以上減少、非正規雇用の若者単身世帯の割合も上昇しており、所得向上と人的資源の強化」に取り組むよう関係閣僚に指示した。政府は、具体策を6月の「骨太の方針」に盛り込む。
 また、内閣府は3月18日開催された男女共同参画推進連絡会議で男女賃金格差の実態を示した。給与月額(50代)が正社員・正職員では男性43.5万円、女性30.3万円、正社員・正職員以外でも男性26.7万円、女性20.1万円と男女間格差があった。同じ学歴でも男女間格差があり、格差は年齢上昇とともに拡大している。
◎市町村に「こども家庭センター」設置 ― 政府
 政府は3月4日、児童福祉法等改正案を閣議決定した。子育て世帯への包括的支援体制として市町村に「こども家庭センター」の設置や保育所等での相談機関の整備を努力義務化するほか、訪問による家事支援、児童の居場所づくり事業も新設。また、一時保護所の設備・運営基準を策定し環境を改善する。併せて、妊産婦等に一時的な居住や食事提供・養育に関する情報提供を行う事業も創設。このほか、児童相談所の一時保護について裁判官に請求する手続を創設する。
 一方、内閣府は2月24日、地方自治体における少子化対策の取組状況を発表した。合計特殊出生率など具体的な数値目標を都道府県は85%、市町村は65%で掲げているが、その効果は「子育てしやすいと思う住民の割合上昇」(都道府県28%、市町村11%)が最も多く、「出生率の上昇」は都道府県13%、市町村8%だった。取組では、都道府県は「結婚支援センターの開設・運営」(75%)、市町村では「婚活イベント」(33%)が多く、結婚支援センターによる成婚組数(2020年度)は「50組未満」が都道府県(63%)、市町村(78%)で最も多かった。
◎学校の手洗いの非接触化など提言 ― 文科省
 文科省は3月4日、「新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方」を発表した。ポストコロナや学校のICT環境整備などから「学級単位で一斉に黒板を向いて授業を受ける」との固定観念から脱し、学校施設全体を「学びの場」として捉え直す必要性を強調。その具体策として、1人1台端末環境に対応したゆとりある教室の整備や室内の木材利用など温かみのあるリビング空間などを提案。また、トイレの洋式化・乾式化や手洗い設備の非接触化も示した。さらに、①地域実情に応じた他の公共施設との複合化・共用化②老朽化対策による安全・安心な教育環境の確保③避難所として自家発電・情報通信設備、バリアフリー、水害対策など防災機能の強化 ― なども提言した。
 一方、警察庁・文科省・国交省は3月4日、通学路の合同点検結果を発表した。昨年6月の八街市での下校中の小学生事故死を踏まえ実施。その結果、対策必要カ所数は全体で7万6,404カ所あった。都道府県別では、神奈川が5,141カ所で最も多く、以下、埼玉、東京、愛知、千葉の各都県が4,000カ所台で続く。
◎人・農地プランを「地域計画」として法定化 ― 政府
 政府は3月8日、農業経営基盤強化促進法改正案を閣議決定した。農水省は、農業者の話合いに基づき地域農業の将来の在り方を市町村が公表する「人・農地プラン」作成を進めてきたが、取組を強化するため「地域計画」として策定を法定化する。具体的には、市町村が①農業者、農業委員会、農地バンク、農協などと協議の場を設け、将来の農業・農地利用の姿を話合う②その結果を踏まえ、地域の将来の農業の在り方や農地の総合的な利用の目標を定めた「地域計画」を策定・公告 ― する。このほか、農地バンクは地域計画の達成に向け「農用地利用集積等促進計画」を策定し農地の貸借を促進するなども盛り込んだ。
 一方、全国市長会は3月22日、同改正案への意見を発表した。意見は、①地域計画の策定では「人・農地プラン」を最大限生かし地域の自主性が発揮できる仕組とし、地域計画を一律策定としない②地域計画の策定には時間を要するため策定期間も柔軟に対応する③都市自治体の農業関係職員の確保・育成や専門人材の派遣等に十分な財政支援を行う ― などを求めた。
◎災害廃棄物処理計画の策定率向上へ ― 環境省
 環境省は3月9日、災害廃棄物対策推進検討会を開き、今後の災害廃棄物処理の対応の方向性を示した。「事前対応」では、中小規模自治体での災害廃棄物処理計画の策定率向上のため「災害廃棄物処理体制と業務」(リーフレット)を検討し、発生量推計の精度向上を進める。「発災時の対応」では「カンタンマップ」活用による災害廃棄物の収集支援や「初期対応の手引き」を改訂。さらに、「関係者間の連携」では支援員マニュアルや要綱を改訂するなどとした。
 一方、総務省は2月25日、災害廃棄物に対する行政評価・監視結果を発表した。災害廃棄物の発生量推計は多くの自治体が地震災害では実施しているが、水害・土砂災害では低調だった。また、仮置場の必要面積を把握しているが、約2割で具体的な候補地を選定していなかった。さらに、仮置場候補地では約3割で競合する他の目的や用途での利用予定があった。このため、同省は①水害の災害廃棄物発生量の推計のため指針を改定②仮置場選定に向け効果的な支援措置を講じる③関係部局との事前利用調整や民間事業者団体と実効性ある連携推進 ― などを環境省に勧告した。
◎農村型地域運営組織の形成でシンポ開催 ― 農水省
 農水省は3月10日、農村RMO推進シンポジウムを開催した。同省は、2022年度から農村型地域運営組織(農村RMO)形成推進事業を創設。集落単位で農用地の保全管理や農業振興、買物や子育て支援などを行うむらづくり協議会設立に取り組む。同シンポでは、小田切徳美明治大学教授が「農村RMOの実態と課題」、濱田健司JA共済総合研究所主席研究員が「農福+α連携地域包括ケア・地域資源管理システムによる地域づくりのススメ」と題して講演。次いで、農水、総務、厚労、国交など関係省が農村RMOへの対応状況を説明。小田切氏が「農村RMO形成は典型的な総合行政だが、今後は、人材育成が必要だ」と結んだ。
 一方、総務省は3月18日、2021年度の地域おこし協力隊の活動状況を発表した。隊員数は前年度比455人増の6,015人、受入自治体は同20団体増の1,085団体に増えた。また、任期終了後も65%の隊員が同じ地域に定住。定住した4,292人のうち41%が起業、39%が就業、12%が就農・就林した。就業では行政関係(自治体職員等)や観光業など、起業では古民家カフェなど飲食サービス業、農家民宿など宿泊業が多い。
◎バイオごみ袋コストは約25%割高に ― 環境省
 環境省は3月24日、地方自治体のバイオプラスチック製ごみ袋導入ガイドラインをまとめた。指定ごみ袋を使用している自治体(82%)のうち、バイオプラスチックごみ袋の導入は43団体、導入予定は67団体で、導入目的は「CO2削減」(94%)、「住民意識の向上」(71%)が多い。ガイドラインは、「ごみ袋の素材が変更されるのみで特段の留意点はない」とする一方、ごみ袋のバイオ配合率が高いほどCO2削減効果は高いが製造単価が従来のごみ袋より平均20~25%高い。このため、導入に際しては住民に対しバイオごみ袋の使用で市町村当たり・ごみ袋1枚当たりのCO2削減効果を説明するなどの配慮を求めた。
 また、同省は3月16日、廃棄物処理システムの脱炭素化普及促進方策シンポジウムを開催した。2050年のカーボンニュートラル達成に向け、日本環境衛生センターの溝田健一氏が「一般廃棄物処理システム指針の意義とSDGsや脱炭素化を念頭においた役割の方向性」、パシフィックコンサルタンツの井伊亮太氏が「地域の廃棄物分野の温暖化対策に向けた実行計画ガイダンスの方向性」について講演した。
◎コロナ対応経費は総額25兆円 ― 22年版地財白書
 総務省は3月25日、2022年版の地方財政白書を公表した。歳出総額は125兆4,588億円、前年度比25兆7,567億円、25.8%増加した。経常収支比率は93.8%で前年度比0.4ポイント上昇、実質公債費比率は7.8%で同0.2ポイント低下。将来の財政負担は192兆3,263億円(0.0%増)となった。歳出増加は新型コロナ対策を反映したもの。同歳出総額は25.6兆円。うち一律10万円配布の特別定額給付金12.8兆円をトップに、制度融資等の貸付金4.8兆円、営業時間短縮等の協力金1.0兆円、生活福祉資金貸付事業1.0兆円、病床確保支援事業0.8兆円、医療従事者等への慰労金0.6兆円などが続く。財源は国庫支出金が20.1兆円で大半を占めた。
 一方、ふるさと納税で巨額な寄付金を集めた泉佐野市に対する総務省の特別交付税減額に対し、大阪地裁は3月10日、減額は法の逸脱として決定を取り消したが、国は14日に控訴した。千代松同市長は同日、判決は「委任範囲を超えた恣意的処分に対するもので、国の交付税行政を質す意義があった」とのコメントを発表。金子総務相は3月15日の記者会見で、控訴について「現在の特別交付税の取扱は地方交付税法の委任に基づく適法なものと考えている」と述べた。

 

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)