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2003年1月のコラム

小 さ な 自 治
武藤 博己
 昨年11月の「西尾私案」の公表以降、小さな自治という概念がよく用いられるようになったように感じる。西尾私案の中では「小さな自治」という言葉は用いられていないものの、西尾教授が他のところで「基礎的自治体のなかでさらに小さな自治の単位をつくってもいいのではないか。自然村をつくり直すということだ。そこでは自前の自治をやり、その代わり国からの仕事は引き受けないという考え方だ」と述べられていることから(『ガバナンス』2003年1月号、p.26)、この言葉が多用されていく一つの契機になっていると思う。
 もちろん、それ以前からも用いられている。年が明けてからの1月8日、群馬県で「小さな自治」の推進について考える検討会議の第1回会合が開催された。同じく群馬県で、昨年11月の「自治体学会関東フォーラム 2002 in GUNMA」の分科会の一つに、“だれもが主役 小さな自治”というものがあった。群馬県でこれほど小さな自治が用いられるようになったきっかけは、小寺知事が1999年3月に朝日新聞に投稿した「小学校を住民の『自治区』に」との提案である。その後、県庁内に政策研究会が設置され、@小学校区ごとに自治区を置く、A自治区は3億円程度の財源をもつ、B住民自治で必要とする事業をする、という内容の提言が行われたという。それをうけて、NPO関係者などに幅広く意見を求めるものとして、この検討会議が設置された。
 西尾私案のなかに出てくる小さな自治の仕組みは、「ア 事務配分特例方式」と「イ 内部団体移行方式」の二つである。先の『ガバナンス』の説明からすれば、後者のイ方式が小さな自治の方式といえよう。前者のア方式も「普通の」自治と比較すれば「小さい」といえるが、西尾教授の「国からの仕事を引き受けない」という意味では、ア方式は含まれないことになろうか。
 このような小さな自治の仕組みは、外国ではきわめて一般的なことである。たとえば、イギリスのパリッシュは19世紀末の改革によって、重要な行政サービスを提供する団体としての機能を終えたが、現在でもフットパスの管理や地域の意見集約などの機能を有している。
 フランスのコミューンやドイツのゲマインデも、小さな自治の機能を有している。またアメリカでは、学校区など特定の機能だけを担う行政団体もある。イギリスにおいても、18世紀までは、特別の機能だけを担う行政団体が数多く存在した。ターンパイク・トラストはその一例である。
 日本においても、小さな自治の類型に含めてもよいと思われる制度はいろいろとある。たとえば、合併特例法で設置できるようになった地域審議会がその典型である。また、財産区は財産の管理という小さな自治を担うものと考えられるし、かつての特別区は都の内部団体だった。政令指定都市を中心に都市内分権として議論されてきたこと(行政区への分権など)も、小さな自治の一類型であろう。また、1960年代末からのコミュニティ論も、めざすところは小さな自治ではないだろうか。
 このように考えることが間違っていないならば、小さな自治の制度を導入することはそれほど困難ではないだろう。小さな自治は国の仕事を引き受けないという意味は、住民がやりたいと思うことしかやらないという意味でもある。このような自治こそ、住民のための自治であるといえるものかもしれない。合併にかかわらず、一般的な制度として盛り込まれることを望みたい。しかしながら、詳細は条例に委ねるべきであると考える。
(むとう ひろみ・法政大学教授)

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