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2007年3月のコラム

地方改革議論の構図

辻山 幸宣

 

 安倍内閣のひとつの特徴として、とにかく会議の数の多いことがあげられよう。官邸には総理大臣または官房長官がトップとなっている政策会議と称されるものが75ある。総理大臣または官房長官以外の者が主宰しているものや、政府・与党協議会を加えるとちょうど90になる。そのほか、内閣官房には4つの重要政策に関する会議(経済財政諮問会議・総合科学技術会議・中央防災会議・男女共同参画会議)と82にのぼる各種の本部・連絡会議が置かれている。さらに、先の臨時国会で設置が決まった地方分権改革推進委員会などがこれに加わる。実におびただしい数の会議が設置されていて、NSC(日本版安全保障会議)のように、その仕事の実質がわかりにくいもの、あるいは、教育委員会改革に関して規制改革会議と教育再生会議とが全く異なった見解を公表した例のように相互関係が複雑化しているものなど、意思形成の場の混乱が指摘されている。

 これを地方制度改革について各種会議の設置状況をみてみると、上と同様の構図が浮かび上がってくる。さらに、政党・地方六団体などの会議も加えると、議論の方向がどのような力学で決定されるのかを占うことがきわめて困難な状況を呈している。

 たとえば、「道州制」にかかる検討状況を概観してみよう。政府部内では規制改革特命大臣が置かれ、その下に「道州制ビジョン懇談会」「道州制協議会」が設置されている。これは上でみた会議の数には入っていない。ビジョン懇談会は14名の各界代表、協議会は11名の地方経済団体代表で構成されている。これに先立ち、副大臣会議に「道州制の検討に関するプロジェクトチーム」を発足させており、2005年10月に「道州制の検討について(中間報告)」を公表している。これの先行的実施という形で、先の国会では「道州制特別区域推進法」を成立させている。

 与党自民党には「道州制調査会」が設置されており、少なくとも3期(中山太郎会長・伊吹文明会長・杉浦正健会長)にわたって議論してきた。この間、2005年10月には「道州制に関する中間報告」をまとめ、現在、@道州制推進、A道州と国との役割分担、B道州の組織・権限、C道州と基礎的自治体、D道州と税財政制度の5つの小委員会を設置して精力的に議論を進めている。4月には結論を得るとのスケジュールで、参院選をにらんだ動きとみられている。

 一方、地方団体サイドでは全国知事会に「道州制研究会」(2004年)が設置され、25道府県知事の参加で審議を行い、翌年の「道州制特別委員会」に引き継いだ。同特別委員会は33都道府県知事が参加し、2006年6月には「分権型社会における広域自治体のあり方」をまとめた。このように多くの会議が錯綜しており、これでは「道州(同床)異夢」(佐藤克廣北海学園大学教授)と揶揄される状態が再現するであろう。「場」の問題を重視する金井利之東京大学教授に触発されて、「同床異夢」あるいは地方分権改革で見られた「混声合唱」(山)的な構図として立ち現れてくるのか、それとも多くの「場」を用いながら「あるひとつの意図」が「腹話術」(金井)的に言葉を発しているのか、見極めていかなければなるまい。その意味で追加しておけば、いま、総務省には「コミュニティ研究会」(名和田是彦座長)が設置され、また自民党地方行政調査会(太田誠一会長)も「コミュニティ」をテーマに検討を開始している。この動きがなにを示しているかは明らかではないが、先に述べた自民党道州制調査会の「道州と基礎自治体に関する小委員会」の4つの主要論点のひとつが「道州制下の基礎自治体のコミュニティ」であることを見逃すわけにはいかない。

(つじやま たかのぶ・(財)地方自治総合研究所所長 )

 

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