地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』2023年2月コラム

「不意を衝く」地方自治法改正ヘの疑問

異例の土曜日審議と喧伝された昨年12月10日の国会会期最終日、話題となっていた旧統一教会の被害者救済法案と同時に、議員提案の地方自治法改正案が可決成立した。地方自治動向をウォッチしている私たちにとっても「不意を衝かれた」感じだ。

12月6日、衆議院総務委員会の終了間際に動議が出され、委員会提出の法律素案として地方自治法改正案が提案される。その後4分間の趣旨説明(あかま二郎議員・自民)があり、13分間の質疑があって動議が可決される。そこから衆議院に上程されるが、「審査省略」で委員会付託はなく、8日の本会議では共産党を除く会派の賛成で可決。さらに参議院では9日の総務委員会で趣旨説明(浮島智子議員・公明)が4分間ほどあり、その後10分間の質疑、3分間の討論があって可決。10日の本会議で可決成立となったものである。経過においても内容においても、今回の改正にはいくつかの大きな疑問符がつく。

改正の最大のポイントは地方自治法92条の二における「請負」について、「業として行う工事の完成若しくは作業その他の役務の給付又は物件の納入その他の取引で当該普通地方公共団体が対価の支払をすべきもの」と定義し、かつ「請負をする者」については「各会計年度において支払を受ける当該請負の対価の総額が普通地方公共団体の議会の適正な運営の確保のための環境の整備を図る観点から政令で定める額を超えない者を除く」としたことである。これらの請負禁止規制の緩和は議員のなり手不足解消を理由としている。

本誌の読者であればご存じのように、自治体議会の議員はここでいう「請負をする者」にはなれない。「請負」について改正法ではあえて「業として」と挿入した。素直に読むと、「業」ではない場合を除くことになるが、「業として」の趣旨やその境目は質疑においても説明されていない。さらに「業として」営んでいるものであっても、「政令で定める額を超えない者」であれば請負ができるとされた。

経過や内容について疑問点を連ねると1本の論文になってしまいそうなので、それは後日、整理したうえで本誌に掲載したいと思うが、根本的な疑問は、これが議員のなり手不足を解消する手段になるのか、むしろ議員個人の私益を高めることで、市民の自治体議会離れを促す危険性はないかという点にある。質疑においても提案者は、癒着リスクは確かにあるが、それより議員の担い手不足の解消が喫緊の課題だ、というロジックを用いている。

百歩譲って、仮にこの改正が議員のなり不足解消に必要だとしても、その基準を政令に委ねるのであれば、あらかじめその内容について審議し、議事録に残しておくことが議員立法の務めではないか。たとえば、「業」の定義をどうするのか。あるいは、都道府県議会議員と町村議会議員とが同じレベルの規制でよいのか。質疑の中で提案者は請負額の上限について、「年間売上高の全国平均の2割程度の水準である300万円と規定することがひとまず適当」としているが、財政や事業の規模に大きな違いのある全国の自治体を十把一絡げに扱ってよいものか。

おまけに附帯決議の内容がひどい。国に対して自治体に助言せよと実質的な行政統制を促している。もはや分権改革の「ぶ」の字も国会には残っていないのかもしれない。老婆心ながら、この程度の法律文と審議を基に、「あとは政令で」と任されたら国(総務省)も困惑するのではないか(あるいは、「してやったり」なのかもしれないが)。国会の現状にまた一つ不安を抱かされる。

今井 照公益財団法人地方自治総合研究所主任研究員