地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』2023年12月コラム

介護保険は第9期事業計画の策定中

2000年から始まった介護保険事業は、3年ごとに事業計画を策定してきた。各計画では、向こう3年間の介護保険料を定める。2023年現在で第9期計画を策定中だ。この事業計画は各市町村ごとに、高齢者のうち、介護を必要とする人がどれぐらいになるか、ニーズ調査を積み上げるのを基本とする。各市町村ごとに高齢化率は違う。これだけでも各市町村ごとの保険料は違ってくる。若い人が多ければ保険料は安い。

具体的に見てみよう。例えば東京23区のうち高齢化率が最も低いのは千代田区の16.4%である(2020年3月時点。以下同じ)。千代田区の介護保険料は、月額基準額で5,400円となっている。

23区で最も高い介護保険料は足立区の6,760円となっている。足立区の高齢化率は24.3%だから、千代田区よりは8%ほど高い。

全国平均の高齢化率は28.7%。保険料は月額6,014円。以上のように見ると、高齢化率が高いと月額保険料基準額が高くなる傾向があることがわかる。

ところで、「要介護認定率」という指標がある。65歳以上の高齢者のうち、要介護認定を受けた人の割合を言う。この要介護認定率が低いと、介護保険のお世話になっていない人が多いことになる。前にも紹介したが(自治総研2020年11月号コラム)、奈良県生駒市は、2020年2月末で認定率は14.2%と奈良県内12市で最も低くなっている。全国平均では18.5%、奈良県内市町村平均も18.4%。この生駒市の認定率の低さは、介護予防・日常生活総合支援事業の自主的な、幅広い取り組みの結果、要支援の状態から元気高齢者になっているためだと考えられる。

この介護予防・日常生活総合支援事業は二つの事業に分かれている。一つは、「介護予防・生活支援サービス」で対象は「要支援1・2」の認定者。もう一つは、65歳以上なら誰でも利用できる「一般介護予防事業」である。これら二つの事業は、具体的にはさらに細かいプログラムからなっているのが、生駒市の特徴の一つである。

「介護予防・生活支援サービス」(通所型・訪問型)は、第8期事業計画では、11プログラムが掲げられているが、うち9プログラムが実施されている。例えば、「通所型サービスB ひまわりの集い」参加者延べ人数518人、「通所型サービスC パワーアップPLUS教室(通所型)」参加者実数42人。

「一般介護予防事業」では、24プログラムが掲げられているが、第8期計画では20プログラムが実施されている。各事業は、老人クラブ連合会や社会福祉協議会などと連携し、会場としては、自治会館などである。そのひとつ、「生き生き百歳体操」は、高知市で始まった体操で錘を使った筋力体操だ。生駒市では2022年では、85か所、94教室となっている。椅子に腰かけDVDを見ながら、準備体操、筋力運動、整理体操を行う。体力に合わせた錘を手足につけ、腕を前にあげたり、椅子から立ち上がったり、日常生活に必要な筋力を鍛える。

またコグニサイズ教室は、体を動かすこと、頭を動かすことを同時に行って、脳の活動を活発にする認知症予防の教室。ステップしながら計算、歩きながらしりとりをするなど、楽しみながら認知症予防に取り組める。

「介護予防・生活支援サービス」と「一般介護予防事業」の行う29プログラムの参加人数は約30,500人になるという(生駒市の福祉健康部次長田中明美さん)。同じく田中さんによれば、これらプログラムに参加し、コーディネーターなどを担うボランティアの数は、「日本一多い」という。

幾つかの市の介護保険事業計画の策定作業を勉強させてもらい、介護保険についていろいろ考えさせられた。その中で、あらためて中央政府の通達行政に振り回されながら、自治の政策形成の現場から、市民とともにそれを覆していく、具体的道筋のひとつを発見したのではないかと思っている。それは、具体的に互助のコミュニティをつくっていくことでもあるのだ。この互助は、「自助、互助、共助、公助」の互助であり、助け合いとボランティアの世界である。

澤井 勝奈良女子大学名誉教授