地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』2024年1月コラム

地域の外国人材受入れ環境整備を考える

人口減少が進む日本社会で、地域の産業や生活を支える人材の不足は、深刻なものとなりつつある。筆者の勤務する職場のある東京都文京区でも、先日、バスの運転手確保が難しいことを理由に、コミュニティバスの減便が行われた。

こうした様々な業種・職種での人材不足に対し、外国人材に期待する声が高まっている。バス運転手をはじめとする人材難の業種について、「特定技能」資格で外国人材を受け入れることについての検討も行われている。すでに、農業や製造業などの様々な産業分野では、技能実習生をはじめとする外国人の「労働」に多くを負っているが、今後、ますます多くの業種や職種において、外国人材の受入れが進むことも考えられる。

他方で、日本は今後、外国人から選ばれない国になるのではないかとの指摘もある。円安の進行による実質賃金等の目減りも理由の一つだが、何よりも、就労環境や生活環境が厳しいことが問題視されている。技能実習生は、実習先を変更することが認められてこなかったこともあり、2022年には年間で約9,000人が失踪したとの報告もある。

政府の技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議は技能実習制度の見直しを掲げ、外国人材に日本が選ばれるよう、技能・知識を段階的に向上させその結果を客観的に確認できる仕組みを設ける等のキャリアパスの明確化や日本語能力の段階的向上、受入れ環境整備の取組等を通じた共生社会の実現を目指すとする報告書を取りまとめた。技能実習から「育成就労」へという方向とともに、中長期的な人材確保策として外国人の受入れに向き合う姿勢が示されたとみることもできる。

だが、そこでもう一つ考えるべきは生活環境の整備である。すでに5割以上の自治体が多文化共生推進計画の策定を行い、外国人住民に対する多言語での情報提供や日常生活支援等について一定の対応を図ることを掲げている。しかしながら、地域の担い手として、外国人の受入れ環境を整備し、必要な業種や職種における人材育成や生活支援までを戦略的に推進する自治体は決して多くはない。

急激なスピードで人口減少が進む状況下で、様々な暮らしのサービスを維持しようとすれば、人材確保が課題となることは想像に難くない。多くの自治体が移住・定住の推進に向けた取組みを進めているが、人口減少対策や地方創生戦略の一つとして外国人の受入れを考える自治体はまだ限定的である。だが近い将来、地域医療や介護、公共交通や観光などの分野において、人材不足が一層深刻になれば、外国人材の受入れを図るかどうかが問われることも考えられる。自治体では、地元企業等における外国人受入れ状況や今後の展望等を把握し、受入れ環境整備について考えることも必要となるだろう。

地域の担い手として外国人材受入れを進めるには、多言語による情報提供体制の整備、日本語や日本の生活習慣を学ぶ機会の確保、住まいの確保やコミュニティとの繋がりづくりなど、生活環境を整えるサポート体制構築が必要となる。出入国在留管理庁による外国人受入環境整備交付金を活用して、窓口整備を行う自治体も少しずつ増えてきた。また、JETプログラムの国際交流員制度やALT(外国語指導助手)制度、JICAの国際協力推進員制度などを組み合わせてサポート人材を確保し、外国人住民の窓口や、地域の国際化に向けた取組みを推進する自治体もある。だが、日本語学習や相談支援の体制については課題も多い。

日本に居住する外国人住民の割合は全人口の約2.6%程度である。また居住地域の多くは三大都市圏や、製造業等の集積する一部の地域に限られており、大半の自治体にとって、外国人住民への対応は限定的なものであった。だが、社会を支える人材として中長期的な受入れが進んでいくとすれば、わがまちでは外国人の受入れをどのように進めていくのか。持続可能な地域づくりに向けて、自治体の外国人受入れ戦略が問われる時代が到来しつつある。

沼尾 波子 東洋大学国際学部国際地域学科教授