地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』2024年8月コラム

自治・分権を支える地方自治体の税財源

三位一体改革で国から地方へ約3兆円の税源移譲が行われてから約20年が過ぎた。地方自治体が自主的、主体的に行財政運営を行うために、国から地方への自主財源の拡充が言われ、更なる税源移譲を進めるべきとする声もある。だが、現実には、地方税の更なる充実を図るには多くの課題がある。

むしろ、近年では地方税の国税化が進められてきた。東京都などに税収が集中する状況を是正し、全国の地方自治体に配分する財源を確保するために、偏在性の高い地方法人二税の国税化が図られてきた。2008(平成20)年度以降、法人事業税の一部を国税化して譲与税として配分したり、法人住民税の税率を引き下げ、その分を地方法人税として地方交付税の原資にする改革が進められてきた。

更なる偏在是正を求める声もある。2024年5月に、埼玉県・千葉県・神奈川県の3知事が「居住する地域にとらわれないこども施策の実現及び税源の偏在是正について」とする申し入れを国に行った。子育て支援に関して、東京都は独自の手厚い施策を行っている。18歳年度末までのこどもに対する月5千円の給付、高校授業料実質無償化における所得制限撤廃、公立学校給食費の無償化、0~2歳児の第2子の保育料無償化、18歳年度末までのこどもに対する医療費助成など手厚い施策が並ぶ。周辺県では財政上の制約からこれらの施策を行うことは難しく、格差が拡大している。東京都にはあれだけ充実した施策があるのに、なぜわが県にはないのか。住民の訴えが、更なる税源偏在是正を求める声につながっているのだろう。

限られた税財源をどのように配分し、私たちの暮らしの安心や快適さを支える基盤を整えるのか。地域間の行政サービスの格差をどこまで許容するのか。税を負担しあうことによって、社会を皆で支えるということへの共感や理解の醸成が大切だろう。東京都においても、首都直下型地震や超高齢化への対応を含め、非常事態を見据えた基金醸成なども必要である。税源偏在についてどの程度まで許容できるのか、その水準や考え方について議論が必要だろう。

他方で、国からの財源保障に依存するばかりでなく、自治体として、多くの人々から地域への共感とともに、地域を守り育むための負担について理解と参加が得られる仕組みが考えられてよい。2000年代に入り、個人住民税の超過課税を通じて、森林や水源環境の保全再生の施策を推進する動きが全国の自治体に広がった。滋賀県では、超過課税方式により、県民が共同で負担をして、地元の公共交通の存続を図ろうという検討も行われている。いわゆる「ふるさと納税」においても、地元の特産品を返礼品として提供することで寄附を集めるのではなく、地域のファンになってもらい、応援してもらうこと、そこで地元との関係を育み、共感を得て寄附をしてもらう仕組みを創出する自治体もある。

税ではなく、民間と連携をして投資を進める動きもある。そこでは民間企業等との連携・協働を通じて「公共」空間を構築する動きや、クラウドファンディングなどを活用して、あらたな「公共」の仕組みを創出しようという動きもある。行政は、民間資金の活用を含めた地域経済循環の創出を考え、魅力ある地域をデザインするための工夫を行い、それに共感する人々が資金提供や投資を行う。岩手県紫波町のオガールプロジェクトや、徳島県神山町の神山まるごと高等専門学校は代表的な事例だろう。

地方交付税等による財源保障を通じて、標準的な行政サービスを確保する環境が構築されている。そこを起点にして、どのようにわがまちの施策や事業を考えるのか。全国レベルでの税源配分のあり方と、地域における負担への理解と共感の創出の両方を考える必要があるだろう。

ぬまお なみこ 東洋大学国際学部国際地域学科教授)