地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2023年1月中央の動き

◎改正所有者不明土地法でガイドライン ― 国交省

国交省は11月1日、改正所有者不明土地法に関するガイドラインを作成した。同改正法では、市町村長の代執行制度創設や市町村の所有者不明土地対策計画の作成、所有者不明土地を利用する「地域福利増進事業」の対象事業追加などが盛り込まれた。その施行を受けて、所有者不明土地の管理適正化措置ガイドライン、所有者不明土地対策計画作成の手引などを作成した。勧告・命令・代執行の対象となる「管理不全所有者不明土地等の基準」では、①所有者が全員不明で現に管理されていない②所有者の一部が判明しているが今後も管理実施の意向がない ― などとしたほか、計画作成の手引では「基本的な方針」「土地所有者の効果的探索」などの記載ポイントを示した。

また、国交省は10月25日、社会資本整備審議会の空き家対策小委員会を発足させた。現在の空き家約850万戸のうち居住目的がない空き家が約349万戸あり、今後も増加が予想されるため、空き家の発生抑制や利活用方策、適切な管理促進、利活用困難な空き家の除去などの方策を検討、2023年1月にもまとめる。

◎マイナンバー活用ロードマップ作成を指示 ― 首相

政府の経済財政諮問会議は11月2日、民間議員がマイナンバーを活用した行政DXの推進・社会保障制度充実のため政府全体で改革年限を区切った具体的ロードマップを作成すべきだと提言。これを受けて岸田首相は、ロードマップの次期会議への報告を指示した。

一方、総務省の検討会は11月1日、郵便局を活用したマイナンバー普及の取組の中間まとめを決めた。2024年秋の健康保険証廃止に向け携帯電話ショップが所在しない自治体や交付率が低い自治体を中心に年内に1,000市町村に働きかけ、年度内に3,000局での委託開始を目指すよう要請。さらに、マイナンバーカードで住民票などが入手できるキオスク端末の郵便局への配置を推進。特に、証明書自動交付サービス対応のコンビニ等が所在しない自治体を中心に設置を支援すべきだとした。なお、総務省は11月7日開催した地方連携推進本部で、申請率が平均を下回っている477市町村の首長に対し10月中に総務省幹部が取組実施を働きかけたほか、申請率40%未満市町村に都道府県自ら申請サポートの実施を要請したことを報告した。

◎首相がワクチン接種加速を要請 ― 政府主催知事会議

政府主催の全国都道府県知事会議が11月7日、首相官邸で開催された。岸田首相は、新型コロナとインフルエンザの同時流行に備え「外来等の保健医療体制拡充と国民への周知、ワクチンの接種加速」に向け都道府県の協力を要請。併せて、旧統一協会問題で都道府県相談窓口での被害者に寄り添った対応を求めた。

これを受けて平井全国知事会長は、コロナ対応で国と地方が協力する意向を示す一方、厚労省の緊急包括支援交付金の病床確保料見直しで「病床確保が難しく病院の反発を受けている」と指摘し、総理のリーダーシップで即刻制度の見直しを要請した。このほか、参加知事から「物価高騰経済対策で全国一律対応が必要な課題は国が対応すべき」(長崎山梨県知事)、「ウィズコロナの新段階移行へ出口戦略・ロードマップの早期提示を」(内堀福島県知事)、「子育て支援の恒久的施策導入には地方負担分に恒久的税財源確保を」(村岡山口県知事)などの意見・要望が出た。また、「マイナンバーカードは国の事務だが、地方交付税は地方固有財源だ」(湯崎広島県知事)、「マイナンバーカード交付率の交付税への反映は制度の趣旨を踏まえ制度設計を」(村岡山口県知事)との意見に対し、岸田首相は「地方全体のデジタル化に関する財政需要を拡大する中で、団体ごとの財政需要を的確に反映するためカードの普及状況を交付税の算定に活用する方向で考える」との政府方針を改めて強調した。

◎下水道汚泥の堆肥化など食料緊急パッケージ ― 政府

政府は11月8日、「食料品等の物価高騰対応のための緊急パッケージ」を決めた。食料安全保障上のリスクが高まっているため、①下水道汚泥資源・堆肥等の利用拡大によるグリーン化推進と肥料の国産化・安定供給②小麦・大豆・飼料作物の国際化の推進③食品ロス削減対策の強化と食品アクセスが困難な社会的弱者への対応強化 ― に取り組む。具体策では、下水道汚泥資源の飼料利用(30億円)、ペレット堆肥流通・下水汚泥資源の肥料利用促進技術の開発(10億円)、米粉の利用拡大支援対策(140億円)、食品ロス削減・フードバンク支援緊急対策(3億円)などを掲げた。

また、農水省は11月15日、東京で農業参入フェア2022を開催した。農業参入を希望する法人と誘致したい地域のマッチングを狙いに開催しているもので、11月22日には大阪、12月7日には福岡でも開催した。2009年の農地法改正でリース方式による法人の農業参入が全面自由化され、20年末には3,867法人が参入、その面積は1万2,260㌶にのぼる。東京会場では、「農業で成長を実現する」「企業の農業参入による地域コミュニティの活性化」「不動産会社のぶどう事業」などをテーマに講演・事例報告と、相談コーナーでの自治体や企業とのマッチングが行われた。

◎「対策強化宣言」などコロナ第8波へ対応策 ― 政府

政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は11月11日、第8波の感染拡大期に向けた感染拡大防止措置を決めた。感染状況をレベル1~レベル4に整理した上で、発熱外来に患者が殺到する「医療負荷増大期」(レベル3)には都道府県が「対策強化宣言」を行い、住民には大人数の会食や大規模イベントの参加見合せなどを要請。膨大な感染者で対応できなくなる「医療機能不全期」(レベル4)では、出勤の大幅抑制や帰省・旅行の自粛、飲食店・施設の時短・休業は要請しないが外出自粛要請に理解を求めるなどとした。

一方、全国知事会は11月7日の全国知事会議で第8波の感染拡大対応の緊急提言を決めた。インフルエンザ・コロナ同時流行とウィズコロナに向けた出口戦略を国が早期に示すとともに、感染者全数届出見直しでは治療を必要とする全陽性者が受診できる体制確保が大前提だと指摘。また、①かかりつけ医がコロナ感染を理由に審査・診察を拒否しないよう国が措置②保健師など必要な人材・施設・設備確保と感染者受入れ医療機関への財源支援③感染症対策の司令塔機能を担う内閣感染症危機管理統括庁の設置 ― などを要望した。

◎分権改革の提案198件を対応へ ― 分権有識者会議

内閣府の地方分権改革有識者会議は11月11日、2022年の地方からの提案等の対応方針(案)を了承した。年内に閣議決定する。22年の提案291件のうち235件を関係省庁と調整。198件(84%)は提案趣旨を踏まえて対応、22件は関係省庁の抵抗で実現できなかった。

対応するのは、公立大学法人で毎年度策定が義務付けられている年度計画の策定、業務実績報告書作成などを廃止するほか、都道府県が策定する医療関係計画を一体的に策定できることを明確化。空き家対策総合事業では2計画を包含した「空き家対策総合実施計画」の策定だけとする。このほか、①住民基本台帳ネットワークシステムの利用事務の拡大(所有者不明土地法等の事務)②固定資産評価額等の市町村から都道府県への通知方法の見直し③罹災証明書の交付に必要な被害認定調査で固定資産課税台帳等の情報利用を可能とする ― などが盛り込まれた。

◎コロナ禍で移住相談が過去最多に ― 総務省

総務省は11月15日、自治体の移住相談の調査結果を発表した。2021年度中に受け付けた相談件数は約32万4,000件で、前年度より3万3,000件増えた。うち窓口は28万5,500件、イベントは3万8,500件で、前年度より2万3,200件、9,600件それぞれ増えた。コロナ禍を背景に相談件数は過去最多となった。また、リアルとオンラインのイベントを組み合わせた複合式のセミナー開催など様々な取組もみられた。都道府県別(市町村を含む)では、長野県の1万7,443件をトップに、兵庫県1万5,245件、福島県1万3,599件などで多い。

また、総務省は10月26日、自治体が誘致・関与したサテライトオフィスの開設状況をまとめた。2021年度は開設505か所、減少73か所で、21年度末時点のサテライトオフィス開設数は1,348か所となった。開設数は年々増え15年度以降も100か所台が続いていたが、20年度は263か所、21年度は505か所と倍増。コロナ感染拡大を反映したものとみられる。市町村別では、札幌市の56か所をトップに、仙台市45、松江市35、岐阜市29、大垣市・松江市の各28、広島市24などで多い。

◎23年度以降は固定資産税の負担調整適用を ― 地財審

総務省の地方財政審議会は11月15日、2023年度地方税制改正に関する意見をまとめた。外形標準課税の対象法人数減少には「課税方式の選択を意図した企業行動」があるとし公平性・税収の安定性に懸念を指摘。小規模企業への影響等に配慮しつつ「追加的な基準を付け加える」よう提言した。また、車体課税では経年ハイブリッド車もグリーン化特例(経年車重課)の対象とすべきだとした。併せて、固定資産税では23年度以降は負担調整の仕組を確実に適用すべきだとした。

一方、政府は11月8日、2022年度の補正予算案(第2号)を閣議決定した。総額29兆円で、物価高騰・賃上への取組7.8兆円、円安を活かした地域の「稼ぐ力」の回復・強化3.5兆円、「新しい資本主義」の加速5.5兆円、防災・減災・外交・安全保障環境の変化への対応等7.5兆円などを計上。地方交付税の0.5兆円増額も盛り込まれた。これを受けて、総務省は同日、「補正予算に伴う対応等」を各自治体に通知。2022年度に限り、基準財政需要額の費目に「臨時経済対策費」を創設するとともに調整額を復活するなど、普通交付税の再算定を行うとした。

◎定年引上中も一定の新規採用を ― 総務省消防庁

総務省消防庁は11月25日、定年引上に伴う消防本部の課題研究会報告書を発表した。定年引上で消防本部では年度間で採用数のばらつきが発生するほか、高齢期職員の増加で消防力低下も懸念されると指摘。その対応策として、①定年引上期間中でも一定の新規採用者を継続的に確保するため各年度を平準化した採用計画を作成②消防力維持のため必要な定員の見直しも選択肢 ― と提案。併せて、高齢期職員の知識・経験・技術等を活かせる配置・新設の検討も求めた。

一方、総務省は11月14日、被災自治体への地方公務員の中長期派遣状況をまとめた。2022年4月1日現在の派遣職員は429人で前年より248人減った。東日本大震災の復興進展を反映、派遣職員数は年々減少している。派遣元は都道府県300人、指定都市43人、市町村86人で、派遣先は市町村316人、都道府県110人、指定都市3人。なお、総務省は被災現場では技術職が不足しているとして、全自治体に対し職員派遣を要請する総務大臣名の書簡を11月18日付けで通知した。

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)