地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2023年2月中央の動き

◎地域インフラを「群」として整備など提言 ― 国交省

国交省の社会資本整備審議会技術部会は12月2日、「総力戦で取り組むべき次世代の『地域インフラ群再生戦略マネジメント』」を提言した。今後もインフラの老朽化が進む中、市町村では財政・人材面から維持・管理が追いつかないため、既存の行政区域にとらわれず広域・複数・多分野の施設を「群」としてまとめて捉え、①自治体は民間活力や新技術活用を念頭に必要な組織体制を構築②メンテナンスの生産性向上に資する新技術の活用と技術開発の促進③インフラメンテナンス分野のデータ標準化などデジタル国土管理の実現④国民が戦略マネジメント計画策定に参画など国民参加・パートナーシップの展開 ― などを提言した。

一方、国交省は12月15日、流域治水施策集をまとめた。気候変動による水害被害の増大が危惧される中、流域全体で水害を軽減させる「流域治水」への転換が求められているため、実施主体別の施策の目的・役割分担・支援制度をはじめ、推進のポイントなどを整理した。同省は、流域治水協議会を通じて関係者の共有を進めるとしている。

◎自然災害対策情報にはハザードマップを ― 内閣府

内閣府は12月6日、防災に関する世論調査を発表した。自然災害への対処方法を家族等と話しあったことについて61%が「ある」と回答。話しあう内容では「避難場所・避難経路」81%、「食料・飲料水」65%、「家族等の連絡手段」59%の順で多い。また、地震への準備対策では「懐中電灯など」54%、「食料・飲料水、日用品、医薬品など」41%が多く、風水害対策では「情報を意識的に収集」が77%で最も多かった。一方、自然災害対策で充実してほしい情報では「ハザードマップ」が52%で最も多く、次いで「避難場所・避難経路」48%、「過去に自然災害が発生した場所を示す地図」43%などが多かった。

一方、総務省消防庁は12月20日、消防団の調査結果を発表した。2022年4月1日現在の消防団員数は78万3,578人で前年より2万1,299人(2.6%)減少。入団者3万3,445人を退団者5万4,744人が上回ったため。うち女性消防団員は2万7,603人で前年より286人(1%)増えたが若年層(30代以下39%)は減少している。

◎地方議員の請負規制緩和など改正自治法が成立

改正地方自治法が12月10日の参議院本会議で賛成多数で可決・成立した。地方議員のなり手不足解消の一環として請負規制の明確化・緩和、民間企業に「立候補休暇」の取組要請などが柱。5与野党が共同提出した。具体的には、請負総額が政令で定める額を超えない者を議員個人による請負規制の対象から除外する。政府は同額を年間300万円未満と想定している。また、政府は事業主に対し、雇用者が立候補できるよう「立候補休暇」を就業規則に定めるよう促すとした。春の統一地方選挙までに施行する予定。

なお、全国都道府県議会議長会など議会3団体は11月11日、「住民の付託にこたえ活力ある地方議会を目指す全国大会」を開き、地方議会の位置付け・職務等の地方自治法への明文化、議員の請負禁止の範囲明確化・緩和などを求める大会決議を採択。また、全国町村議会議長会は11月30日、「町村議員のなり手不足解決に向けた意見」を発表した。前回の統一地方選挙で無投票の町村議員が23%、8町村で定員割が生じたとし、なり手不足解消の一環として兼業禁止規定について個人請負も法人と同じ要件に緩和するよう求めた。

◎農地法の国関与や権利取得規制など検討へ ― 農水省

農水省は12月12日、農地法制のあり方研究会の初会合を開催した。世界の食料事情の不安定化や多様な主体の農地利用など農地をめぐる情勢が大きく変化しているため、①農地確保の国の関与や食料安保の観点からのゾーニング②農地の権利取得規制や営農型太陽光発電など農地の適正利用③担い手の6次産業化や川下等との連携強化の支援策 ― などのあり方を検討する。同省は、農地面積は433万㌶(2022年)でピーク時(1961年)の約7割に減少する一方、法人経営が10年前の2.5倍に増加。また、営農型太陽光発電の約2割で営農に支障があるなどの課題を指摘した。

一方、政府は12月5日、農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略を改訂した。5兆円の目標達成に向け、2023年度以降の実施施策に①都道府県・輸出支援プラットフォーム連携フォーラムを設置し、都道府県の海外プロモーションを推進②都道府県版農林水産物・食品輸出プロジェクトの組織化で産地をサポート ― などを盛り込んだ。

◎青少年のICT活用で検討会発足 ― 総務省

総務省は12月14日、青少年のICT活用のためのリテラシー向上ワーキンググループ(WG)の初会合を開催した。同省は11月4日に「ICT活用のためのリテラシー向上に関する検討会」を発足させている。同検討会は、ICT活用が当然となる中、市民が自分たちの意志で自律的にデジタル社会と関わる「デジタル・シティズンシップ」で求められるリテラシーとその向上方策を検討するもので、検討課題に①デジタル社会で身につけるべきリテラシーのあり方②今後のデジタル社会におけるリテラシー向上推進方策と実施状況 ― などを挙げている。

WGでは、このうち青少年のICT活用に向けたリテラシー向上策と、併せて青少年を保護するためのフィルタリングサービス、ペアレンタルコントロールによる対応の推進方策など青少年のインターネット利用環境整備のあり方を検討する。

◎大学院の授業料後納付制度創設を提言 ― 文科省

文科省の大学院段階の学生支援の新制度検討会は12月15日、在学中は授業料を徴収せず卒業後に所得に応じて納付する新たな「授業料の受益後納付」制度の創設を求める報告書をまとめた。経済的理由から就学が困難な学生や学び続ける社会人が大学院にチャレンジすることを後押しするもので、対象は修士課程・専門職大学院の授業料。本人の収入などに基づき入学前から直後にかけて一定の事前審査を経て対象者を決定する。実施時期は2024年秋入学から開始するとした。

一方、総務省は12月9日、選挙管理委員会の主権者教育の調査結果を発表した。2021年度に出前授業を実施した選挙管理委員会は592。都道府県・政令市はほとんどで実施、市・特別区は40%程度、町村は10%程度と低い。このほか、他部署と連携した主権者教育として、税務署と「税と選挙を絡めた講座」、議会事務局と「自治制度・選挙制度」、環境担当課と「温暖化対策」をテーマにした出前授業も実施されている。

◎新児童虐待防止プランで児童福祉司など増員 ― 政府

政府の児童虐待防止対策関係府省庁連絡会議は12月15日、新たな児童虐待防止対策総合強化プランを決めた。対象期間は2023~26年度で、24年度までに児童福祉司を1,060人増員し6,850人に、26年度までに児童心理司を950人増員し3,300人とする目標を掲げた。このほか、①一次保護開始時の司法審査が25年度までに導入されることを踏まえ弁護士配置など児童相談所の司法対応体制を強化②一次保護時の判断に資するAIの活用など児童福祉司の負担を軽減③創設される「こども家庭センター」の全国展開を図る ― などを盛り込んだ。

また、厚労省は12月7日、「保育所等における虐待等に関する対応について」を各都道府県等に通知した。「初めは虐待でなく少し気になりつつも見過ごされる不適切な事案も、繰り返されるうちに問題が深刻化する」とし、改めて「セルフチェックリスト」による点検を要請。事案が発生した場合の対応では、「隠さない」「嘘をつかない」の周知徹底を求めた。

◎地方議会の位置付け明確化など答申 ― 第33次地制調

第33次地方制度調査会は12月21日、総会を開き「多様な人材が参画し住民に開かれた地方議会の実現に向けた対応方策に関する答申」を決めた。答申は、近年の議員のなり手不足の背景に議員の性別や年齢構成で多様性を欠いていることを挙げ、その対応策として①多様な人材の参画を前提とした議会運営②議会の位置付け等の明確化③立候補環境の整備④議会のデジタル化 ― を提言した。具体的には、勤労者の議会参画のため夜間・休日開催、会議規則に育児・介護の取扱明確化、SNS・タブレット端末等による情報公開の充実、住民と政策等を考える政策サポーター・議会モニターの設置などを求めた。併せて、小規模市町村議員の報酬のあり方の見直しも提言。また、議会の設置根拠規定(地方自治法)に「議事機関として住民が選挙した議員をもって組織される」「議員は住民の付託を受け、その職務を行わなければならない」などの「規定も考えられる」とした。さらに、各企業の自主的取組として立候補に伴う「休暇制度」の創設や議員の副業・兼業を可能とする検討も提言。本会議へのオンライン出席の検討、議会への請願提出・議会から国会への意見書提出のオンライン化も可能とすべきだとした。

総会では、議会3団体から「議会の位置付け明文化など自治法改正案の次期通常国会への提出を強く期待する」(柴田正敏全国都道府県議会議長会長)など評価する意見が相次いだほか、「公務員の立候補の際の辞職規定がなくなれば立候補は増える」(平井伸治全国知事会長)、「災害時に議会の合意形成はむずかしい。オンラインは有効なツールだ」(立谷秀清全国市長会長)などの意見がでた。また、「議会の位置付け明確化など道徳的規範を自治法に書き込むのはいかがか」(馬場伸幸衆院議員)、「地方議会の政策立案のサポート体制も必要だ」(あかま一郎衆院議員)などの意見もでた。

◎2027年度に東京圏・地方の転出入均衡へ ― 政府

政府は12月23日、2023年度を初年度とする新たなデジタル田園都市国家構想総合戦略(2023~2027年度)を閣議決定した。テレワークや地方移住への関心の高まりなど社会情勢の変化を踏まえ「今こそデジタルの力を活用し地方創生を加速化・深化」するとし、東京圏への過度な一極集中是正や多極化を図り、地方の社会課題を成長の原動力として成長につなげるとした。

その具体目標では、地方への移住・定住促進による地方と東京圏との「転入・転出均衡」を2027年度としたほか、サテライトオフィス設置自治体を1,200団体(27年度)、こども家庭センター設置は全市町村、新たなモビリティサービスの取組自治体を700団体(25年度)などとした。また、スマートシティの選定数を100地域(25年度)、「デジ活」中山間地域の登録数を150地域(27年度)、脱炭素先行地域の選定を100か所(25年度)としたほか、デジタル実装の基盤条件整備のため光ファイバーの世帯カバー率を99.9%(27年度)、5Gの人口カバー率を97%(25年度)、デジタル推進委員は5万人(27年度)などを掲げた。

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)