2023年4月中央の動き
◎戸籍に「氏名の仮名表記」を追加 ― 法制審議会
法務省の法制審議会戸籍法部会は2月2日、戸籍法等の改正に関する要綱案を決めた。氏名の仮名表記を戸籍の記載事項に追加するとともに仮名表記の許容性を示した。併せて、市町村長に記載する仮名表記を戸籍記載者に通知するなどの手続きも示した。同省は、今通常国会に改正法案を提出する予定。
戸籍に記載されている者は氏名の仮名表記を届け出るとしたうえで、本籍地の市町村長は法施行1年を経過した日に仮名表記を記載する。このため、市町村長は施行後遅滞なく戸籍に記載されている者に対し記載しようとする仮名表記を通知するとした。併せて、仮名表記の許容性では「文字の読み方として一般に認められているものでなければならない」とし、許容できない具体例に①漢字の持つ意味とは反対の意味による読み方②読み違い(書き違い)かどうか判然としない読み方③漢字の意味や読み方との関連性をおよそ(又は全く)認めることができない読み方 ― を挙げた。
◎子ども対策で地方6団体からヒアリング ― 自民党
自民党の「こども・若者」輝く未来実現会議は2月6日、地方6団体からヒアリングした。同会議は「こども家庭庁」創設に向けた議論をするため昨年発足、今年からは岸田首相が打ち出した「異次元の少子化対策」を受けて連日、関係団体からヒアリング。近く政府の「たたき台」に向けた論点整理をまとめる。
全国知事会は、「子ども予算倍増に向け教育関連政府支出をOECD加盟国の平均並みに引き上げる」とともに幼児教育・保育の完全無償化と全国一律の医療費助成制度の創設、児童手当の所得制限廃止、出産・子育て両立支援のための働き方改革などを求めた。全国市長会も「異次元の対策と言うからには全国一律の子ども医療費助成制度の創設等を実現すべき」だと訴えるとともに、高校教育を含め全ての教育でどの自治体にいても親の経済状態いかんに関わらず満足のいく教育が受けられるよう要望。全国町村会は「財政力の違い等によって地域間格差が生じないよう必要な財政措置と人材確保の支援」を求めるとともに、「妊婦・子育て家庭への伴走型相談支援」等を市町村が実施する場合の地方負担分の恒久的な財源確保を求めた。
◎一般財源総額を62.2兆円確保 ― 2023年度地財計画
政府は2月7日、2023年度の地方財政計画を決定した。地財計画規模は前年度比1兆4,432億円(1.6%)増の92兆350億円で、2年連続の拡大となった。地方交付税は同3,073億円(1.7%)増の18兆3,611億円を確保、一般財源総額(水準超経費を除く交付団体ベース)は同1,500億円(0.2%)増の62兆1,635億円とした。一方、臨時財政対策債は同7,859億円(44.1%)減の9,946億円に抑制。財源不足額も同5,659億円(22.1%)減の1兆9,900億円に縮小した。このほか、デジタル田園都市国家構想事業費1兆2,500億円、脱炭素化推進事業費1,000億円を創設。また、学校・福祉施設・図書館など自治体施設の光熱費高騰に対応するため一般行政経費(単独)を700億円増額した。
一方、財務省は2月17日の財政制度分科会に「将来世代の視点」(フューチャーデザイン)を提出した。「現状を放置すればリスクを増幅し、将来世代に引き継がせかねない」として、2070年の社会について「AI等で少子化は改善するが人手不足と財政悪化が深刻化し、医療・介護サービスは高額な贅沢品となる」などの想定を示した。そのうえで「2070年から2023年への提言」として①何をどう変える必要があるか②誰が何をどうすれば良いか ― などの問題を提起した。
◎「指示権」拡大など感染症法改正案等を決定 ― 政府
政府は2月7日、新たな感染症拡大に対応するため新型インフルエンザ等対策特別措置法と内閣法の改正案を閣議決定した。対策本部長(首相)の各省庁・都道府県知事に対する指示権を「国民生活・国民経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある場合」は対策本部が設置された時から、できるよう要請可能時期・対象事務を拡大。また、クラスター発生で自治体業務がストップした事例を踏まえ自治体の事務代行を政府対策本部が設置された時から行えるよう要請可能時期・対象事務を拡大する。このほか、国庫補助負担率嵩上や地方債発行特例規定も設ける。併せて、内閣官房に内閣感染症危機管理統括庁を設置し感染症事務を一括所管する。
一方、全国知事会は2月8日、政府が決めた感染症の5類感染症への変更に対する要望を決めた。見直しでは十分な準備期間を確保するとともに、①医療機関に対する支援と診療報酬の加算継続②幅広い医療機関の受入体制整備までは十分な病床数確保③自治体の感染症対策に支障が生じないよう財政措置を継続 ― などを要望。このほか、全国市長会は小・中学校でのマスク着用のガイドライン策定、全国町村会はワクチンの接種控を避けるため全額国費負担の継続などを求めた。
◎地方議会のオンライン質問等で通知 ― 総務省
総務省は2月7日、議場にいない地方議員がオンラインで執行機関に質問することや育児・介護を理由にオンラインでの委員会出席を認めることを決め、各自治体に「新型コロナウイルス感染症対策等に係る地方公共団体における議会の開催方法に関するQ&A」で通知した。現在、第33次地方制度調査会で「DX進展と地方行政」を審議していることを踏まえた。
通知は、表決は議員が議場で行わなければならず、そのための討論や質疑は「議員が議場において行わなければならない」「オンラインによる方法で行うことはできないと考えられる」とした。一方、執行機関の見解をただす趣旨の「質問」は形式が法律に定めがなく各団体の会議規則等に基づき行われるので「条例や会議規則、要綱等の根拠規定や議決・申合を講じた上で、欠席議員がオンラインで質問することは差し支えない」とした。また、委員会への出席が困難と判断される事情がある場合もオンラインで委員会に出席することは差し支えないとした。そのうえで、「具体的にどのような場合を可能とするかは各団体で判断されるもの」であり、「災害の発生や育児・介護等」の事由がある場合は「各団体の判断でオンラインでの委員会への出席を可能とすることも差し支えない」とした。
◎デジタル人材は都内大学定員抑制の例外に ― 内閣府
都内の大学学部の定員増加を抑制する法律の施行状況を検討している内閣府の有識者会議は2月16日、定員増加抑制に例外措置を求める「とりまとめ案」を了承した。同法は、東京圏への転入超過の大部分を進学・就職時の若者が占めているため、全国知事会が立法による大学の東京一極集中の是正を要望、2018年に同法が成立している。「とりまとめ案」は、定員増加抑制の例外として①産業界からニーズのある高度なデジタル人材を育成する情報系学部・学科②一定期間後に増加前に戻すことを前提にした臨時的定員増に限る③学生が東京圏外の地方企業の研修等に参加するなど地方の就職促進策を組み込んだプログラムである ― を挙げ、人材を育成するよう求めた。
これを受けて、岡田地方創生担当相は2月17日の記者会見で「デジタル人材の育成はオールジャパンで取り組むべき課題であることは、全国知事会も含めた関係者の意見が一致している。都市部、地方がウィンウィンの関係となるよう検討を進めたい」と述べた。一方、小池東京都知事は同日の記者会見で「(デジタル人材の例外では)不十分だ。今必要なことは世界で戦って貢献する人材を日本全体で育成すること。23区を外す規制の撤廃を強く求めたい」と述べた。
◎男女雇用機会均等対策で基本方針骨子 ― 厚労省
厚労省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会は2月17日、第4次男女雇用機会均等対策基本方針の骨子案をまとめた。均等法施行後35年を経てもなお実態面で男女格差が残っているとし、その背景に①長時間労働を前提とした働き方②仕事と家庭の両立への不寛容な職場風土③固定的な性別役割分担意識の存在 ― などを指摘。その改善策として、就業を継続し能力を伸長・発揮できる環境整備が必要であり、均等法の履行確保とポジティブ・アクションの推進を提言した。さらに、コース等別雇用管理の適正な運用促進、妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱行為の防止対策の推進を求めた。併せて、総合的なハラスメント対策の推進の必要性も強調した。
また、厚労省は1月26日、今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会を発足させた。現行の仕事と育児・介護の両立支援制度の現状と課題、仕事と育児・介護の両立のニーズを分析したうえで、今後の仕事と育児・介護の両立支援制度・次世代育成支援対策の在り方の報告を今年5月にもまとめる。
◎計画策定の簡素化で「ガイド」策定 ― 分権会議
政府の地方分権改革有識者会議は2月20日、国が自治体に求める計画策定の原則を定めたナビゲーション・ガイドを策定した。法律で自治体に求める計画策定関連条項が10年で約1.5倍に増え、自治体や国にも負担となっているため、効率的・効果的な計画行政に向けた原則を定めた。「意思決定の仕方・表現の形式は自治体の判断に委ねる」を原則とするとしたうえで、計画の形式を検討する場合は計画間の重複回避などのため計画等の体系化や代替案との比較検討を求めた。さらに、計画等の形式によらざるを得ない場合も①策定は「できる規定」を優先②既存計画等の統廃合・既存計画等への内容追加③一体的な策定、上位計画への統合が可能なことの規定化 ― も検討すべきだとした。このほか、既存の計画についても計画期間の終了など定期的に在り方を見直すことなどを求めた。
また、2023年の提案募集の方針を決めた。4月25日まで事前相談を受け付け、6月中旬に提案の重点事項を決定。8月初旬までに提案団体や関係省庁、地方3団体からのヒアリングを経て関係省庁との最終調整に入り、12月に対応方針を決定する。
◎障害者差別・偏見「ある」が89% ― 内閣府
内閣府は2月21日、障害者に関する世論調査を発表した。障害に対する差別・偏見では「ある」が89%で、「ない」10%を大きく上回ったが、同差別・偏見を5年前と比べると「改善された」59%、「改善されていない」40%とそれほど差がなかった。また、「共生社会」を「知っている」は49%、「知らない」は19%だったが、「障害者週間」では「知っている」29%に対し「知らない」は70%あった。障害者の手助けの経験では62%が「したことがある」と回答。「したことがない」は37%で、その理由では「機会がなかった」が79%あった。このほか、障害者団体作成マークの知名度は「車椅子で表された障害者のための国際シンボルマーク」96%、「四葉のクローバーで表された身体障害者マーク」73%、「ヘルプマーク」52%など。