地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2023年10月中央の動き

◎ふるさと納税募集費は受入額の47%に ― 総務省

総務省は8月1日、ふるさと納税の現況調査結果を発表した。2022年度の受入件数は約5,184万件、受入額は約9,654億円で、前年度より各1.2倍増えた。また、住民税控除額(23年度)は約6,798億円、控除適用者数は約891万人で、前年度比各1.2倍増加した。受入額のトップは都城市の196億円で、以下、紋別市(194億円)、根室市(176億円)、北海道白糠町(148億円)、泉佐野市(137億円)、佐賀県上峰町(108億円)が続く。一方、控除額が最も多かったのは横浜市の272億円で、以下、名古屋市(159億円)、大阪市(148億円)、川崎市(121億円)など大都市が続く。なお、募集に要した費用は返礼品調達費2,687億円(28%)、返礼品送付費731億円(8%)、事務費834億円(9%)など合計4,517億円、受入額の46.8%だった。

なお、松本総務相は同日の記者会見で「寄附金のうち少なくとも半分以上が寄附先の地域のために活用されることが大切。そのことを徹底するよう先般、告示等を改正した。制度の趣旨を踏まえ節度ある取組を行う」よう各自治体に要請した。

◎避難生活の多様化に対応した支援策検討 ― 内閣府

内閣府は8月1日、避難生活の環境変化に対応した支援実施検討会を発足させた。災害時に避難所以外の集会所や自宅、車中泊などに避難する者が増える一方、被災者支援を担う行政職員が減少するなど避難生活をめぐる環境が変化。これらを踏まえ支援のあり方を検討するもので、年度内に取りまとめを行い、政府の「被災者支援のあり方検討会」に報告する。

また、政府は7月28日、新たな国土強靭化基本計画を閣議決定した。基本方針に新たにデジタル技術活用による国土強靭化施策の高度化などを掲げた。具体的には、①線状降水帯の予測精度向上②事前防災・地域防災に必要な情報のデジタル共有③被災者の救援救護・災害時の住民との情報共有にデジタル活用 ― などを掲げた。一方、松本総務相は8月18日、全都道府県知事・市区町村長に書簡を送付した。大規模災害の被災地では依然各職種で人材が不足していると指摘し、改めて被災地への中長期の人材派遣を要請した。

◎社会保障費がコロナ医療で過去最高額に ― 厚労省

厚労省は8月4日、2021年度の社会保障給付費をまとめた。総額は前年度比4.9%増の138兆7,433億円で、過去最高額を更新した。1人当たりは同5.5%増の110万5,500円。部門別にみると、医療が47兆4,205億円(総額比34%)、年金が55兆8,151億円(同40%)、福祉その他が35兆5,076億円(同26%)で、前年に比べ医療が11%、福祉その他は5%、年金は0.3%それぞれ増加した。医療費の増加は、新型コロナワクチン接種関連費用や医療保険給付の増加を反映した。また、社会保障給付費に対応する社会保障財源は総額163兆4,389億円で、前年度比12%減となった。うち、社会保険料が75兆5,227億円(総額比46%)、公費負担が66兆1,080億円(同40%)だった。

また、同省は8月1日、2023年版厚生労働白書を公表した。単身世帯の増加やコロナ感染症による交流希薄化で引きこもりやヤングケアラーなどの課題が顕在化したとし、新たな包括的「つながり・支え合い」創出の必要性を強調。その具体策に、①世代・属性を超えた様々な人が交差する「居場所」づくり②属性(高齢・障害など)を問わない支援③受動型から能動型支援④デジタルを活用した時間・空間を超えた新たな「つながり・支え合い」創設 ― などを挙げた。

◎官民格差3,869円(0.96%)解消を勧告 ― 人事院

人事院は8月7日、官民格差3,869円(0.96%)の解消などを政府等に勧告した。平均改定率は1級(係員)5.2%、2級(主任等)2.8%など。特に初任給を高卒約8%(12,000円)、大卒約6%(11,000円)引き上げる。1万円超の引上げは33年ぶり。また、ボーナスは4.50月分(現行4.40月分)に引き上げる。期末手当・勤勉手当ともに0.05月分の引上げ。このほか、テレワーク中心の働き方をする職員の光熱費・水道費等の負担軽減のため在宅勤務等手当(月額3,000円)を新設する。さらに、現在、育児介護等職員に認められているフレックスタイム制を活用した「勤務時間を割り振らない日」を一般職員にも拡大する。なお、総務省は同日、地方公務員給与を人勧に準じて改定した場合の所要額は3,340億円程度となると発表した。

一方、厚労省の中央最低賃金審議会は7月28日、地域別最低賃金額改定の目安にAランク(6都府県)41円、Bランク(28道府県)40円、Cランク(13県)39円を答申した。全国加重平均は1,002円で、目安制度創設以来の最高額となる。これを受けて岸田首相は同日、「歓迎したい。賃上げは岸田政権の最重要課題の一つ。中小企業でもしっかり賃上げが行われるよう政府一丸となって取り組む」と述べた。

◎身元保証等高齢者サポート事業で初調査 ― 総務省

総務省は8月7日、高齢者の入院・施設入所時の身元保証などを行う身元保証等高齢者サポート事業の調査結果をまとめ、厚労省等に改善策を通知した。初の全国調査の結果、①契約内容の重要事項説明書を作成している事業者は少数②預託金を法人代表者個人名義で管理③利用者の判断能力が不十分になっても成年後見制度に移行しない④遺言書の内容が本人意思と異なる ― などの実態が明らかになった。なお、同事業を規律・監督する法令・制度や監督官庁・事業者団体はない。このため、厚労省などに預託金の管理方法のルール化や成年後見制度への円滑な移行、解約時の返金ルールや費用・料金内容の明確化、寄付・遺贈の本人意思尊重と判断能力の確認などを求めた。

一方、岸田首相は同日、1人暮らし高齢者割合トップの豊島区を視察。その後の記者会見で「総務省の実態調査も踏まえ、厚労省で実態把握・課題整理の上、安心して民間事業者の身元保証サポートを受ける仕組づくり、資力がない高齢者の相談体制整備などを省庁横断的な視点で検討したい」と述べた。

◎半数がタブレットの議会持込み容認 ― 全国市議長会

全国市議会議長会は8月7日、2022年の市議会活動の実態調査結果を発表した。通年会期制は54市(7%)で採用。休日議会は11市、夜間議会は夕張、大東の2市で実施していた。議会基本条例は571市(70%)、自治基本条例(まちづくり基本条例等を含む)は251市(31%)で制定していた。また、住民の議会参画では議会モニター制度を39市(5%)、パブリックコメントは96市(12%)、市政・議会に関するアンケート調査は114(14%)でそれぞれ実施。大学等との協定は36市(4%)で締結していた。議会のICT化では、タブレット端末を本会議場は422(52%)、委員会室は426(52%)で「全議員持ち込みが原則」としていた。このほか、議員対象ハラスメント研修の実施は105市(13%)、議会におけるハラスメントの相談窓口は議会内部に設置19市、外部に設置4市と少ない。

一方、全国知事会は8月24日、会長に村井宮城県知事を選出した。平井会長(鳥取県知事)の任期満了に伴うもので任期は9月3日から2年間。村井新会長は「自治体を取り巻く環境が厳しさを増す中、結果を残す知事会にしたい」と抱負を述べた。

◎2022年度食料自給率は横ばいの38%に ― 農水省

農水省は8月7日、2022年度の食料自給率を発表した。カロリーベースの食料自給率は前年度と同じ38%だった。また、食料国産率は前年度と同じ47%、飼料自給率も前年度と同じ26%だった。前年豊作だった小麦が平年並みに減少、魚介類の生産量が減少した一方、原料の多くを輸入に頼る油脂類の消費減少などを反映した。生産額ベースの食料自給率は前年度比5ポイント低下の58%。生産額ベース食料国産率も同4ポイント低下の65%となった。なお、都道府県別(21年度)に見ると、カロリーベース食料自給率は前年度と比べ33道府県で上昇、4県で低下、10都府県で同率だった。

また、農水省は8月8日、「不測時における食料安全保障検討会」を発足させた。政府が今年6月に決めた「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」を受けたもので、①不測事態の考え方②不測の発生等に講ずべき措置③関係省庁の役割分担・連携 ― などを検討。年内にも検討結果をまとめる。

◎森林整備に79%の市区町村が取組 ― 総務省・林野庁

総務省と林野庁は8月23日、2022年度の森林環境譲与税の取組状況を発表した。譲与額500億円に対し、活用額は400億円だった。うち市区町村は341億円(譲与額440億円)、都道府県は58億円(同60億円)。使途別では、間伐等の森林整備が235億円で最も多く、木材利用・普及啓発97億円、人材の育成・担手の確保68億円が続く。森林整備関係には市区町村の79%が取り組んだほか、木材利用・普及啓発は52%、人材育成は35%の市区町村が取り組んだ。

一方、総務省は7月28日、2023年度の地方交付税大綱を閣議報告した。決定額は17兆2,594億円(前年度比1.7%増)、うち道府県分が9兆2,089億円(同1.1%増)、市町村分が8兆506億円(同2.3%増)。算定では、地域デジタル社会推進費の増額分500億円の配分にマイナンバーカード保有枚数を反映させた。また、不交付団体は東京都と76市町村で、前年度より4団体増えた。うち7市町村が交付から不交付に、3町村が不交付から交付に転じた。

◎交付税を1.1%増、18.5兆円を概算要求 ― 総務省

総務省は8月31日、2024年度予算概算要求を発表した。一般会計総額で前年度比0.0%増の17兆8,641億円を要求。うち、地方交付税(出口ベース)は同1.1%増の18兆5,690億円を計上、臨時財政対策債は同29.0%減の7,000億円に抑制する。また、地方税は同1.6%増の46兆2,000億円を計上。この結果、一般財源は同1.0%増の約65兆7,000億円、地方財政規模は同0.9%増の92兆9,000億円となる。このほか、主要事項ではマイナンバーカードの利便性・機能向上等624億円、サイバー攻撃への人材育成13億円、デジタル田園都市国家インフラ整備計画に基づく5G整備等127億円、緊急消防援助隊の強化53億円などを計上した。

一方、地方六団体は8月24日、自民党に2024年度予算の要望を申し入れた。地方の安定的財政運営に必要な一般財源総額と地方交付税総額の確保・充実を要請。また、こども・子育て政策では全国一律施策の必要財源は国の責任で確保、コロナ対応では新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の期限延長を求めたほか、①デジタル田園都市国家構想・地方創生の推進②デジタル化の推進③脱炭素社会の実現に向けた取組④防災・減災対策の推進と強靭な国土づくり⑤持続可能な社会保障の基盤づくりと次世代を担う「人への投資」 ― などを要望した。

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)