地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2024年6月中央の動き

◎自治体防災電力データで利活用マニュアル ― 経産省

経産省は4月1日、自治体防災業務の電力データ利活用マニュアルを作成した。電気料金算定に利用される電力データは、発災時には世帯数や在・不在情報などの活用で被災者の在宅状況や要支援者の確認にも利用できる。このため、マニュアルでは災害による停電発生時に自治体が防災業務に電力データを有効に利活用できるよう電力データの取得方法や電力データ活用のユースケース、過去事例などを紹介している。

一方、総務省消防庁は3月29日、2023年中の救急出動件数を発表した。救急車による救急出動件数は763万7,967件(前年比5.6%増)、搬送人員は663万9,959人(同6.8%増)で、いずれも過去最多を記録した。救急出動件数の内訳は、急病が517万2,787件(構成比68%)、一般負傷が118万5,162件(同16%)、交通事故が39万9,593件(同5%)など。年齢別では、高齢者が409万2,759人、成人が196万8,512人、乳幼児が33万5,996人で、乳幼児の割合がやや増えた。

◎労働者協同組合の設立が87法人に ― 厚労省

厚労省は4月1日、労働者協同組合の設立状況を発表した。組合員が出資し組合員自らが事業に従事する組織で、2024年4月1日現在、設立は1都1道2府と宮城、千葉、愛知、岡山、愛媛、佐賀など27県で合計87法人にのぼる。事業分野もキャンプ場の経営や葬祭業、成年後見支援、地元産鮮魚販売、給食のお弁当作り、カフェ・フェスティバル運営、高齢者介護、生活困窮者支援、子育て支援、清掃・建物管理、家事代行など幅広い事業が取り組まれている。

また、厚労省は3月27日、2023年度の障害者雇用実態調査結果を発表した。従業員規模5人以上の事業所に雇用されている障害者数は110万7,000人で、前回調査(18年)に比べ25万6,000人増えた。また、同省は障害者の法定雇用率を達成していない13都道府県教育委員会に対し指導していたが、達成していない福岡県教育委員会に同日、適正実施勧告を行った。また、総務省は3月29日、公的機関における障害者への合理的配慮事例集をまとめるとともに、今年4月の法定雇用率引上げに対応するよう地方団体あてに通知した。

◎集落支援員が2,000人台を超える ― 総務省

総務省は4月5日、集落支援員の活動状況を発表した。集落支援員は過疎地等の集落の維持・活性化のため自治体が委嘱している。年々増加し2023年度は2,214人と2,000人台を超えた。専任・兼任ともに60代が4割近くを占め、地縁団体の長(33%)や地域役員(31%)などを兼務している。具体的には、各地区に市職員と集落支援員のペアを配置し高齢者サロンを開催(糸魚川市)、旧小学校区単位にコミュニティ振興会が集落支援員を選考し市が委嘱(酒田市)、地域コミュニティ組織の「集落活動センター」でイベント等を開催(室戸市)などが取り組まれている。

一方、農水省は3月27日、2023年度の食品アクセスの全市町村アンケート結果を発表した。中山間地域や都市部でも買い物困難者が顕在化しているため、71%の団体で対策を実施。具体的には、「コミュニティバス、乗合タクシーの運行支援」(80%)、「移動販売車の導入・運営の支援」(34%)、「空き店舗等の常設店舗の出店、運営の支援」(28%)、「宅配、御用聞き・買物代行サービス等の支援」(26%)など。このほか、62%の団体で民間事業者が参入している。

◎地域おこし協力隊が過去最多の7,200人に ― 総務省

総務省は4月5日、2023年度の地域おこし協力隊の実態を発表した。隊員数は前年度比753人増の7,200人と過去最多を更新。取組自治体は同48団体増の1,164団体に増えた。隊員のうち男性が60%、女性が40%。年齢は20~29歳が34%、30~39歳が33%、40~49歳が20%を占める。都道府県別では北海道の1,084人をトップに長野県461人、福島県313人、熊本県302人、新潟県287人で多い。23年3月31日までに任期終了した隊員のうち同一市町村内に定住した隊員5,779人のうち43%が起業、37%が就業した。就業先は行政関係、観光業、農業法人・森林組合等などが多い。

また、同省は企業人材派遣制度の状況を発表した。2023年度の地域活性化起業人は前年度比161人増の779人で、活用市町村は同81団体増の449団体となった。うち男性81%、女性19%で、50~59歳が28%、40~49歳が27%など。カテゴリー別では、観光振興・DMO設立等216人(28%)、自治体・地域社会DX200人(26%)、地域産品の開発・販路開拓等75人(10%)など。派遣元企業数は同78社増の330社となった。

◎議員なり手不足に立候補休職制度 ― 全国町村議長会

全国町村議会議長会は4月8日、町村議会議員のなり手不足対策検討会の報告書を発表した。町村議会では無投票・定員割れ議会が年々増加し、今後3分の1の町村議会で無投票となる可能性があると指摘。その要因に、低額な議員報酬や落選・退職後の復職制度の未整備などを挙げ、対応策に住民に議会の役割・意義を理解してもらうSNSなど多様な広報、公民館やスーパー等での住民懇談会の開催、議会事務局に女性を含めた専任職員の配置などを提言。また、立候補のための休職制度や議員退職後の復職制度を整備。さらに、女性議員へのハラスメント対策や「女性模擬議会」、政策サポーターへの女性任命などを提案した。

一方、総務省は3月29日、地方議員・首長の所属党派(2023年12月31日現在)を発表した。都道府県知事は45人が無所属で2人が党派に所属。都道府県議会議員(2,644人)は、無所属が557人(21%)、所属党派では自民党が1,301人(49%)で最も多い。市区町村長(1,741人)では22人が党派に所属。市区町村議員(2万9,135人)は2万4人(69%)が無所属で、所属党派では公明党2,667人(9%)、共産党2,226人(8%)、自民党2,137人(7%)が多い。

◎23年ラスパイレス指数が98.8に低下 ― 総務省

総務省の社会変革に対応した地方公務員制度のあり方検討会給与分科会は4月12日、第4回会合を開き「中間論点整理(案)」について審議した。国では、昨年の人事院勧告の報告で示された給与制度のアップデート骨子案を受けて2025年4月を目途に給与制度全般を見直す。このため、総務省も地方公務員給与のあり方を検討する同分科会を昨年暮れに発足させている。

一方、総務省は3月29日、2023年地方公務員給与の実態調査(4月1日現在)を発表した。全団体のラスパイレス指数は98.8で前年より0.1ポイント低下した。うち、都道府県は99.6で同0.2ポイント低下、市も98.6で同0.1ポイント低下、特別区も98.6で同0.2ポイント低下したが、町村は96.3で前年と同率、指定都市は99.9で同0.2ポイント上昇した。団体別にみると、都道府県では静岡県が102.2で最も高く、鳥取県・鹿児島県が各96.2で最も低い。このほか、最高・最低は指定都市では仙台市102.6、相模原市98.3、市では越谷市103.3、夕張市91.0、特別区では中央区100.9、荒川区96.6、町村では北海道上川町102.0、東京都青ヶ島村73.3となっている。なお、全団体平均が最も高かった1974年の110.6から11.8ポイント低下した。

◎総人口の減少幅が12年連続して拡大 ― 総務省

総務省は4月12日、人口推計(2023年10月1日現在)を発表した。総人口は1億2,435万2千人で、前年比59万5千人(0.48%)減少。また、出生児数は75万8千人で同4万2千人減少、死亡者数は159万5千人で同6万5千人増加し、87万7千人の自然減(17年連続)となった。年齢別では、15歳未満は1,417万3千人、15~64歳は7,395万2千人で、前年に比べそれぞれ32万9千人、25万6千人減少。65歳以上も3,622万7千人で同9千人減ったが、75歳以上は2,007万8千人、同71万3千人増えた。割合は、15歳未満が11.4%で過去最低となる一方、65歳以上は29.1%、75歳以上は16.1%でいずれも過去最高を更新。都道府県別では、人口増加は東京都のみで46道府県で減少した。

また、国立社会保障・人口問題研究所は4月12日、日本の世帯数の将来推計を発表した。世帯総数は2020年の5,570万世帯が2030年には5,773万世帯に増えるが、以降、減少に転じて2050年には5,261万世帯に減少すると推計。平均世帯人員は、2020年の2.21人が2033年には1.99人と2人を割り込む。一方、単独世帯は2020年の38.0%が2050年には44.3%に上昇。高齢単独世帯(65歳以上の独居率)は2020~50年の間に男性は16.4%が26.1%に、女性は23.6%が29.3%に上昇する。

◎来年4月から全新築住宅に省エネ義務化 ― 政府

政府は4月16日、建築物省エネ法の施行期日を2025年4月1日とする政令を閣議決定した。同日以降、全ての新築住宅・非住宅への省エネ基準適合(床面積10平方㍍以下を除く)が義務付けられる。併せて、地方団体の建築主事の事務も整理・改正した。

一方、国交省と総務省は3月29日、地方団体の施行時期平準化の取組状況(2023年度)を発表した。平準化率(年間に占める4~6月期工事稼働数)は、都道府県では全国平均0.80に対し、岐阜県0.93、宮城県・兵庫県の各0.92、秋田県・新潟県の各0.88で高く、高知県0.65、静岡県0.68、千葉県0.69などで低い。市区町村(ブロック平均)では全国平均0.58に対し、沖縄0.69、中国0.68、北海道0.62で高く、中部0.51、近畿0.53、関東0.56で低い。また国交省は同日、23年度の地方団体の工事ダンピング対策を発表した。都道府県では、最低制限価格算定式の設定を15団体が「2022年中央公契連モデル」以上水準で、26団体は同相当水準で設定。調査基準価格算定式は16団体が同モデル水準以上で、31団体は同相当水準で設定。市町村では6割超が最新の中央公契連モデルを採用していた。

◎新たな孤独・孤立対策重点計画を策定へ ― 政府

政府は4月19日、孤独・孤立対策推進本部を発足させた。今年4月に施行された孤独・孤立対策推進法を受けたもので、今年夏にも報告書をまとめる。会合で岸田首相は「新たな孤独・孤立対策重点計画の策定に向け検討を深化させる」と述べ、加藤厚労相に「新たな重点計画案の取りまとめ」を指示した。「孤独・孤立対策の重点計画」は2021年12月に策定(22年12月改定)。孤独・孤立対策の基本方針に①支援を求める声を上げやすい社会②切れ目ない相談支援③見守り・交流の場や居場所の確保 ― などを盛り込んでいる。

一方、内閣府の高齢社会対策大綱策定のための検討会は4月3日の第4回会合で、高齢社会の安心・安全な生活環境整備などをめぐり議論した。同検討会は2018年に策定した同大綱を見直すため今年2月に発足、今年夏にも見直し案をまとめる。旧大綱では「エイジレス社会」を目指すとし、①公的年金制度の安定的運営②介護離職ゼロの実現③高齢社会に適したまちづくりの総合的推進 ― などを盛り込んでいる。

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)