2024年7月中央の動き
◎消滅可能性自治体が744団体に減少 ― 人口戦略会議
総務省は5月4日、我が国のこどもの数を発表した。2024年4月1日のこどもの数(15歳未満)は前年比33万人減の1,401万人で、43年連続減少し過去最少を更新。その割合も11.3%と50年連続の低下となった。都道府県別では、全団体で前年より減少。割合は沖縄16.1%、滋賀13.0%、佐賀12.9%で高く、秋田9.1%、青森10.0%、北海道10.1%で低い。
一方、民間有識者の人口戦略会議は4月24日、「自治体の持続可能性」を発表した。2020年~50年までの若年女性人口の減少率が50%以上の消滅可能性自治体は744団体で、14年調査の896団体より減った。しかし、同減少率20%未満の自立持続可能性自治体は65団体で、全自治体の4%に満たない。このほか、減少率50%未満だが人口流入で維持しているブラックホール型自治体が25団体ある。人口規模別にみると、消滅可能性自治体は5万人未満の団体で増加、1万人未満では6割を超える。自立持続可能性自治体には1~5万人規模も多い。ブロック別では、消滅可能性自治体は東北が165団体、北海道も117団体と多い。九州・沖縄は76団体と少なく、逆に自立持続可能性自治体が34団体ある。これを受けて全国町村会は4月26日、「一面的指標で消滅可能性自治体リストの公表は地域の努力や取組に水を差すもの。一自治体の努力で改善を図れるものではない」と批判するコメントを発表した。
◎職務に応じた報酬設定など提言 ― 人事院会議
人事院の人事行政諮問会議は5月9日、中間報告をまとめた。国家公務員の応募者減少に対応するため、国家公務員に求められる行動を「行動規範」として明確化。併せて、①職務内容や必要なスキルを明確化し職務に応じた報酬を設定②年功的処遇を脱却し能力・実績主義を徹底③公務内での公募活性化など職員が希望する仕事への挑戦を可能とする ― などを提言した。
また、文科省の中央教育審議会特別部会は5月13日、「質の高い教師確保の環境整備に関する総合的方策」をまとめた。「教職調整額」を4%から10%に引き上げるとともに、若手をサポートする中堅向けポスト新設や全教員が残業時間月45時間以内とするなどとした。これを受けて全国知事会など地方3団体は5月21日、教師の勤務環境の変化を踏まえ法改正を含めた処遇の抜本的改善や教職員定数の改善・支援スタッフの配置充実などを求める緊急提言を発表した。
◎孤独・孤立対策重点計画の作成へ推進会議 ― 政府
政府は5月14日、孤独・孤立対策推進会議の初会合を開いた。孤独・孤立対策推進法を受けて政府は4月19日に首相を本部長とする孤独・孤立対策推進本部を設置したが、同会議では孤独・孤立対策重点計画や重要事項を検討する。初会合では自治体等からヒアリングした。一方、警察庁は5月20日、自宅で死亡した一人暮らしの人(2024年1~3月)を発表した。総数は2万1,716人で、うち65歳以上が1万7,034人だった。年間に換算すると6万8千人にのぼる。都道府県別(65歳以上)では東京1,973人、大阪1,448人、愛知1,036人、神奈川1,006人で多い。
◎マイナ情報照会が4割の事務でゼロ ― 会計検査院
会計検査院は5月15日、自治体のマイナンバー制度による情報照会の実施状況をまとめた。情報照会件数は年々増加、2022年度は3万295件に増えた。地方税(68%)や年金(18%)で多い。しかし、合計1,258手続のうち485手続(39%)で照会実績がゼロだった。このため、会計検査院はデジタル庁に対し各省庁が情報照会を十分活用するよう指導するとともに、関係府省に対し国民の利便性向上や行政運営効率化に資する手続を優先して自治体に助言するよう要請した。
一方、総務省消防庁は5月17日、救急隊がマイナ保険証を活用した「マイナ救急」の全国展開に向け全国の67消防本部・合計660隊の消防隊で実証事業を開始すると発表した。実証事業では、マイナンバーカードの所持を確認したうえで、オンライン資格確認等システムにアクセスし薬剤や診療、特定健診情報を閲覧し搬送先医療機関を選定する。
◎空き地の管理に3割の自治体で条例 ― 国交省
国交省は5月15日の土地政策研究会に土地の利用・管理に関する自治体アンケート結果を提出した。管理不全の空き地発生は都市部から地方部まで幅広い地域で問題となっているが、多くの自治体では人員・予算・制度的根拠の制約で実態把握をしていない。一方、3割の自治体で条例を制定。草木の繁茂の規制が多く、行政指導も実施しているが、所有者の規範意識の低さや所在不明、遠方居住などを課題に挙げた。また、空き地等の管理・利活用の促進のため管理不全土地の行政指導や規制、空き地の利用希望者とのマッチング、相談窓口の設置などを実施。このほか、過去3年間で約1割の自治体が空き地の寄付を受け入れていた。
また、総務省は4月30日、住宅・土地統計調査結果(2023年10月現在)を発表した。総住宅数は6,502万戸で、18年に比べ261万戸(4.2%)増え、過去最多となった。一方、空き家は同51万戸増の900万戸と過去最多を更新。総住宅に占める割合も13.8%と同0.2ポイント上昇、過去最高となった。同空き家率は和歌山県・徳島県の21.2%が最も高い。
◎こどもまんなか実行計画2024で意見 ― こども審議会
政府のこども家庭審議会は5月16日、「こどもまんなか実行計画2024の策定に向けて」(意見)を岸田首相に提出した。意見は「実行計画では『こどもをまんなかにする』ことに絶えず立ち戻る」ことが重要だと強調し、こども施策に関する重要事項では①子ども・若者が権利の主体であることを社会全体で共有②妊娠前から出産、幼児期までの切れ目ない保健・医療の確保③子育や教育に関する経済的負担の軽減 ― などを掲げた。また、こども施策の推進事項では①国の政策決定過程へのこども・若者の参画促進②こども・若者、子育て当事者に関わる人材の確保・育成・支援 ― などを挙げた。併せて、数値目標の設定も求めた。なお、こども家庭庁は5月24日、「自治体こども計画策定のためのガイドライン」を各自治体に通知した。
また、こども家庭庁のこども家庭審議会は5月9日、こどもまんなか実行計画策定で地方3団体から意見聴取した。3団体はいずれも安定した地方財源の確保を求めたほか、「子ども医療費助成の全国一律制度を創設」(全国知事会)、「施策の検証・評価では単なる数値達成を目標としない」(全国市長会)、「施策を担う人材確保の支援」(全国町村会)などを要請した。
◎地域公共交通の再構築へ指針策定を ― 国交省会議
国交省の地域の公共交通リ・デザイン実現会議は5月17日、「とりまとめ」を了承した。人口減少や担い手不足により各地で旅客運送サービスの維持が限界を迎えていると指摘。このため、地域の輸送資源の総動員・公的関与の強化、地域公共交通の再評価・徹底活用で持続可能な交通ネットワークの再構築が必要だと強調した。そのうえで、政府に「地域交通を再構築していくための多様な関係者による連携・協働に係る指針」(仮称)の策定を要請。また、スクールバスや介護事業所・へき地患者などの送迎では、混乗や公共交通への委託・集約・空き時間の活用などを求めた。
また、国交省は4月26日、地域交通計画実質化検討会の「中間とりまとめ」を公表した。2030年までに地方都市を中心に全自治体の地域交通計画のアップデートを推奨するとし、国に対しアップデート・ガイドラインの策定のほか、①ポータルサイトの整備②対話を通じてレベルアップする仕組の構築③車両IoT化や国への申請・データ共有などデジタル化④専門人材の確保 ― などを要請した。
◎在宅や車中泊などの避難者対応で提言 ― 政府検討会
内閣府の避難生活の環境変化に対応した支援検討会は5月20日、中間整理をまとめた。在宅や車中泊の避難者が増えているため、①場所(避難所)から人(避難者等)の支援に発想転換②官民連携による被災者支援③平時・生活再建フェーズとの連続性確保④デジタル技術の利活用 ― を提言した。具体的には、支援漏れ防止のため役割分担の明確化と調査票の標準化、避難者が自ら情報発信する仕組、情報収集・集約にデジタル技術の活用などを要請。また、避難所以外の支援拠点の設置検討やハイリスクの人のリスク回避のための広報・誘導も求めた。併せて、在宅や車中泊避難者に対する支援も防災計画に位置付けるべきだとした。
一方、政府の防災気象情報検討会は5月14日、防災気象情報の整理案をまとめた。気象情報技術の向上で防災気象情報が乱立気味との指摘を受けてシンプルで分かりやすい情報体系・名称に整理。洪水・大雨・土砂災害・高潮についてそれぞれ警戒レベルを5段階で示すほか、「極端な現象を速報的に伝える情報」「網羅的に解説する情報」に分類して提供する。
◎「地球3つの危機」へ6つの戦略 ― 環境基本計画
政府は5月21日、第6次環境基本計画を閣議決定した。環境保全を通じた「現在及び将来の国民一人一人のウェルビーイング」「人類の福祉への貢献」の実現を環境政策の最上位の目標に掲げ、①気候変動②生物多様性の損失③汚染 ― の「地球3つの危機」に対応するため「循環共生型社会」の実現を打ち出した。また、環境・経済・社会の統合的向上の高度化のための6つの戦略として「自然資本を維持・回復・充実させる投資の拡大」「自立・分散型の国土構造の推進」「地域経済のグリーン化」「環境外交による国際的なルール作りへの貢献」などを掲げた。
また、政府は5月14日、環境教育等推進の基本的な方針を閣議決定した。気候変動の危機を踏まえた持続可能な社会への変革が急務だとし、学校での環境教育ではユネスコスクールの普及やエコスクール・プラスの推進などを求めた。
◎地財や少子化対策で意見交換 ― 国と地方の協議の場
政府が6月にまとめる「骨太の方針」に向けて「国と地方の協議の場」が5月29日、首相官邸で開催された。岸田首相は「社会全体で子供や子育て世帯を応援する機運を高める取組も重要だ。本年の骨太の方針では、このような取組を始め少子高齢化・人口減少を克服する方策を盛り込む」と述べた。
これを受けて、地方六団体を代表して村井全国知事会会長は「地方の安定的な財政運営に必要な一般財源総額の確保・充実と法定率引き上げを含めた地方交付税の抜本的な改革」を求めるとともに、①「こどもまんなか社会」実現に向け地方の意見反映②地域の脱炭素化では国がイニシアチブを発揮し地域の実施体制を支援③教師の働き方改革や処遇改善、学校の指導・運営体制の充実 ― などを要請した。