地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2024年11月中央の動き

◎「新しい認知症観」の理解促進を ― 認知症基本計画

政府の認知症施策推進関係者会議は9月2日、認知症施策推進基本計画案をまとめた。政府の認知症施策の基本計画となるもので、計画期間は5年間。同計画を受けて都道府県・市町村も推進計画を策定する。基本計画は、認知症高齢者(軽度を含む)が1千万人を超えるが、認知症になっても「自分らしく暮らし続けることができる」との「新しい認知症観」の理解促進を明記。そのうえで、「共生社会の実現」に向けた7つの基本理念に①認知症の人は基本的人権を享有②国民が認知症の正しい理解を深める③認知症の人の日常生活の障壁除去④保健医療サービス・福祉サービスの提供⑤認知症の人と家族の支援 ― などを挙げた。

一方、厚労省は9月3日、2023年度の医療費を発表した。総医療費は47.3兆円で、前年度より1.3兆円増加した。うち、75歳以上は18.8兆円で全体の39.8%を占める。伸び率は2.9%増で、うち75歳以上は4.5%増と75歳未満の1.7%増を大きく上回る。また、診療種類別医療費は、入院18.7兆円(構成比39.5%)、入院外16.4兆円(同34.7%)、歯科3.3兆円(同7.0%)、調剤8.3兆円(同17.6%)などとなっている。

◎デジタル教科書の効果・影響を検討へ ― 文科省

文科省は9月4日、デジタル教科書推進ワーキンググループの初会合を開いた。デジタル教科書は2019年度に制度化、26年度の本格導入でデジタル教科書の提供や学校ICT環境の整備を進めている。さらに、次期学習指導要領やGIGAスクール構想第2期に向け、デジタル教科書の効果・影響などを検証し、そのあり方と推進方策などを検討する。

また、文科省は8月30日、学校の教育情報化の実態調査結果(2023年度)を発表した。児童生徒1人当たり学習用コンピュータ台数は2020年の0.2台が22年には1人1台を達成。普通教室の無線LAN整備率も19年の41%が22年には95%に上昇した。また、23年度中のICT活用指導力研修の受講回数(都道府県)は平均2.3回で、石川県は4.1回と最も多く、山形県・愛知県の各1.7回が最も少ない。一方、財務省の予算執行調査(24年6月公表)では、デジタル教科書を「毎授業で使用」と回答した教員の割合は英語18%、算数13%、数学8%となっており、「十分に活用されているとは言い難い」と指摘している。

◎NIPPON防災資産に22件を初認定 ― 内閣府等

内閣府と国交省は9月5日、「NIPPON防災資産」に22件を初認定した。同制度は、地域で発生した災害の状況を分かりやすく伝える施設や災害の教訓を伝承する活動などを認定するもので、今年5月に創設した。認定されたのは、「洞爺湖有珠火山マイスター」(北海道洞爺湖町)、「3.11伝承ロード」(青森県・岩手県・宮城県・福島県)、「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」(神戸市)、「稲むらの火の館」(和歌山県広川町)、「熊本地震 記憶の廻廊」(熊本県)、「厚真町震災学習プログラム」(北海道厚真町)、「土岐川・庄内川流域治水ポータルサイト」(名古屋市)、「大分県災害データアーカイブ・フィールドツアー」(大分市)など。

また、総務省は9月9日、被災地に対する人的支援を要請する総務大臣書簡を全都道府県知事・市町村長に送付した。先の能登半島地震では、なお土木など技術職等の職種で中長期の人員が不足しているとし、改めて中長期職員派遣の協力を要請した。なお、同省は「復旧・復興支援 技術職員派遣制度」で1,000人の中長期派遣要員の確保に取り組んでいる。

◎新たな高齢社会対策大綱を閣議決定 ― 政府

政府は9月13日、新たな高齢社会対策大綱を閣議決定した。全世代が超高齢社会の「支える側」「支えられる側」になる社会を目指し、後期高齢者医療費の窓口3割負担の判断基準見直しを検討すると明記。このほか、「生涯を通じて活躍できる環境整備」で①高齢期を見据えたスキルアップやリ・スキリングの推進②地域社会の課題解決に取り組むためのプラットフォームの構築③デジタル等のテクノロジーの学び充実 ― を推進する。また、「1人暮らし高齢者の増加に対応できる環境整備」では、介護人材の確保や地域の総合的・包括的な居住支援などを進める。「身体・認知機能変化に配慮した環境整備」では、認知症の早期発見・対応や加齢難聴の早期発見などを盛り込んだ。

一方、厚労省は9月17日、100歳以上高齢者(9月15日現在)を発表した。総数は9万5,119人(前年比2,980人増)と過去最多を更新。人口10万人当たりは76.49人で、島根県の159.54人が最も多く、埼玉県の45.81人が最も少なかった。

◎こども性暴力防止で府省庁連絡会議 ― 政府

政府は9月13日、第1回こども性暴力防止法に関する関係府省庁連絡会議を開催した。こども性暴力防止法が今年6月に成立したことを受け、2026年12月の施行期限に向け関係行政機関相互の連携・協力体制を強化しガイドラインなどを策定する。同防止法では、学校や民間教育機関に教員・教育従事者の特定性犯罪前科の有無確認や従事させない防止策を盛り込んでいる。

また、こども家庭庁は8月30日、「保育所等関連状況(2024年4月1日現在)」を公表した。保育所等の利用定員は304万人で前年より0.6万人減少。保育所等の利用児童数は271万人で同1.2万人減少した。一方、待機児童数は2,567人で同113人減少した。待機児童のいる市区町村は217団体で、同14団体減少した。なお、待機児童が100人以上いる団体も2市あった。待機児童数の減少地域では、保育受け皿の拡大や就学前人口の減少などで減少したが、待機児童数が増えた地域では申込者数の想定以上の増加や保育士が確保できないなどが要因とみられる。このため、こども家庭庁では女性就業率の上昇傾向や共働き世帯割合の増加から今後も保育ニーズについて注視が必要だとしている。

◎出生数が72.7万人と過去最少を更新 ― 厚労省

厚労省は9月17日、2023年の人口動態(確定値)を発表した。出生数は72万7,288人で前年より4万3,471人減少。統計開始1899年以来の最少となった。合計特殊出生率も1.20と前年より0.06ポイント低下し過去最低を更新。一方、死亡数は157万6,016人で同6,966人増加し過去最多に。この結果、自然増減数は84万8,728人減と過去最大の減となった。

一方、財務省の財務総合政策研究所は9月4日、「人口減少下での100年後の日本を考える」をテーマに森知也京都大学教授の講演会を開催した。森氏は、このまま人口減少が進めば「100年後に7割以上の都市が消滅」「150年で日本に住む日本人は消滅」との厳しい予測を示した。さらに、100年後の悲観的未来として①大都市の人口・都心の人口密度は半減から7割減少し都心の高層ビル・タワマンが廃墟化②10万都市は2020年の83市から20~30市に減少、ほとんどの地方都市が廃墟化 ― するとした。一方、楽観的未来では①大都市は低密度化で災害への強靭化、地域コミュニティも再生②地方も豊かな自然資源を活かした収益性の高い1次産業に特化 ― などを挙げた。そのうえで、人口減少問題の議論を今始める必要性を強調した。

◎上下水道の震災対応など検討へ研究会 ― 総務省

総務省は9月18日、上下水道の経営基盤強化研究会の初会合を開いた。人口減少による料金収入減少や施設・管路等の更新投資増大など上下水道事業の経営環境が厳しさを増す中、先の能登半島地震で災害対応の必要性も高まった。このため、同研究会では早急に上下水道事業の地震対策のあり方を検討するとともに、将来にわたり安定的にサービスを提供するための経営のあり方を検討する。なお、国交省も9月30日、第1回水道の諸課題に係る有識者検討会を開催した。

一方、政府は8月30日、新たな「水循環基本計画」を閣議決定した。重点的に取り組む課題に「代替性・多様性による安定した水供給の確保」「施設等再編や官民連携による上下水道一体での持続可能な上下水道への再構築」「2050年カーボンニュートラルに向けた地球温暖化対策の推進」などを掲げた。そのうえで、計画的に推進する施策に①流域連携の推進②地下水の適正な保全・利用③貯留・涵養機能の維持・向上④健全な水循環の教育・人材養成の推進⑤国際的連携の確保・国際協力の推進 ― などを挙げた。

◎主世帯の43%が高齢者のいる世帯に ― 総務省

総務省は9月25日、住宅・世帯基本集計結果を発表した。5年ごとの調査で、2023年10月1日の総住宅数は6,504万7千戸。18年より4%増加したが、空き家数も900万2千戸(14%)と過去最多となった。また、主世帯の43%が高齢者のいる世帯で、うち32%が高齢単身世帯だった。なお、高齢者等のための設備がある住宅は3,115万5千戸(56%)あり、「手すり」(44%)、「段差のない屋内」(22%)、「廊下などが車いすで通行可能な幅」(17%)などが多い。

また、総務省は8月28日、 「ごみ屋敷」対策の実態調査結果をまとめた。30市区町村での「ごみ屋敷」事例をみると、未解消事例の①約3割で居住者が「ごみ」を有価物だと主張し応じないが、国の指針・通知では「廃棄物」との判断が困難で排出指導も困難②居住者の約7割が健康面・経済面の課題を抱えている③3割では一旦「ごみ」が排出されても再発している ― などの実態が分かった。このため、関係省庁に対し「廃棄物該当性の判断」の情報や健康面・経済面で活用できる支援や再発防止事例などを示すよう求めた。

◎都道府県・市町村ともに黒字 ― 2023年度決算

総務省は9月27日、2023年度の都道府県・市町村普通会計決算をまとめた。都道府県の歳入総額は58兆4,890億円(前年度比8.2%減)、歳出総額は56兆6,473億円(同8.2%減)と2年連続の減となった。実質収支は前年度比1,478億円減の8,535億円の黒字で、全団体が黒字。一方、経常収支比率は同0.1ポイント低下の92.5%となったが、実質公債費比率は前年度同率の10.1%。同比率18%以上は2団体あった。また、地方債現在高は84兆6,903億円(同1.6%減)、債務負担行為額は6兆882億円(同6.1%増)、積立金現在高は9兆5,332億円(同6.3%増)だった。

市町村の歳入総額は、68兆6,594億円(前年度比0.4%増)、歳出総額は66兆3,604億円(同0.7%増)で3年ぶりの増加。実質収支は前年度比2,572億円減の1兆7,279億円の黒字で、全団体が黒字。また、経常収支比率は前年度比0.9ポイント上昇の93.1%、実質公債費比率は同0.1ポイント上昇の5.6%となった。同比率18%以上は1団体。また、地方債現在高は53兆8,181億円(同1.5%減)、債務負担行為額は13兆2,274億円(同12.5%増)、積立金現在高は18兆30億円(同3.3%増)となった。

(井田 正夫・月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)