2025年12月気になる地方自治トピックス
多文化共生社会に向けて
●外国人の人口が過去最多に
日本における外国人の人口が過去最多を更新したという報道が、最近相次いでいる。総務省が公表した2025年1月1日現在の住民基本台帳によると、日本人の人口は1億2,065万3,227人で、前年より90万8,574人(0.75%)減少した。それに対して、外国人の人口は前年より35万4,089人(10.65%)増の367万7,463人となり、これは外国人の人口の集計を開始した2013年以降、最多の数値である。外国人の人口が最も多いのは東京都で、73万8,946人と全国の19.6%を占めており、大阪府、愛知県、神奈川県、埼玉県がこれに続く。
さらに、大都市にとどまらず、町村部でも外国人労働者の受け入れが進んでおり、こうした地域においても外国人の人口は増加を続けている。そのうち、町村部で外国人の人口の増加数が最も多いのは北海道倶知安町である。倶知安町は、スキーをはじめとする豊富な観光資源を有している。観光需要の高まりに伴い、宿泊施設や観光施設などで働く外国人労働者が増加している。町の統計によると、2025年1月1日現在の人口は1万7,120人で、そのうち外国人は3,627人である。前年より833人の増加となった。また、外国人の人口の割合が10%を超える市区町村(政令市の行政区を含む)が2025年1月時点で全国27市区町村にのぼった。最も高いのは北海道占冠村の36.6%である。前年から2.8ポイントの増加となった。
2025年7月に法務省が主催した有識者勉強会による推計では、日本の総人口に占める外国人の割合が、早ければ2040年には欧米諸国並みの10%を超えるとの見通しが示された。これは、国立社会保障・人口問題研究所が2023年に示した「2070年に10%を超える」という推計と比較して、約30年早まる形となる。
●外国人労働者の住民税滞納問題
外国人の人口急増に伴い、外国人による交通事故や医療費の未払いなど、様々な問題が発生している。これらの問題の中でも、外国人労働者による住民税の滞納がしばしば取り上げられている。すなわち、日本を出国した外国人労働者において、個人住民税の未納事例が多発していることが指摘されている。
総務省は2025年8月に、全市区町村を対象に「2024年に日本を出国した外国人労働者らの個人住民税滞納実態調査」を実施した。調査は、「前年の所得に応じて課される住民税が、出国等によってどの程度徴収されていないか」を把握し、徴収漏れ対策を検討することを目的としている。
住民税滞納の原因としては、外国人労働者が給料から源泉徴収はされており、納税済のはずであるなどと制度の仕組みを誤解しているケースがあると報道されている。また、1年程度就労した外国人労働者が、住民税の請求通知が届く前に出国したため、納付義務を認識していなかったような状況も存在していると思われる。すなわち、住民税納税義務の存在や対象となる所得、納付の時期などについて、外国人労働者に十分に説明していない問題がある。他方で、最近、「ルールを守らない外国人を速やかに日本から退去させる」との方針の下で、「違法外国人ゼロ」という言葉が頻繁に用いられている。しかしながら、外国人に法令遵守を求めるには、まず法制度や義務についての十分な周知と理解の促進が前提となる。それが不十分なまま「違法外国人ゼロ」を掲げることには、一定の慎重な姿勢が望まれるであろう。
したがって、外国人労働者による住民税納税義務の遵守を促進するためには、住民税制度の周知強化および請求制度の見直しが急務である。第1に、住民税制度の周知については、多様な主体による複数回の周知が求められている。具体的には、入国手続時における出入国管理局、住民登録時における市区町村、外国人学生の就職時における教育機関、さらに就職後または退職時における事業主による通知などが挙げられている。第2に、住民税の請求制度については、請求通知が届く前に外国人労働者が出国してしまう場合もあるため、たとえ請求通知の前倒しが困難であるとしても、請求の予告制度を導入することが検討されるべきである。例えば、外国人を雇用する事業主による雇用外国人労働者への予告や、地方自治体(以下「自治体」という。)による外国人個人事業主への予告などが考えられる。
また、滞納発生後の対策としては、自治体・入国管理局・税務局間における情報共有体制の強化が求められている。外国人労働者の出国時に未納状況を確認し、可能な場合には「一括徴収」や「納税管理人」指定の利用などを制度的に義務付ける方策も検討されている。ただし、請求通知が届く前に外国人労働者が出国した場合には対応が困難である。そのため、情報共有体制の強化を前提とし、今後、滞納者が再入国申請または入国手続を行う際に、徴収を実施できる仕組みの構築も検討に値すると思われる。加えて、滞納発生後の対策を含む外国人の納税に関する諸事項については、法律によって明記されることが望ましい。
●多文化共生政策への取組み
自治体においては、外国人の人口の増加に伴い、多文化共生に向けた多種多様な取組みが進められている。外国人の日常生活を支援する措置として、例えば、佐賀県においては、日本語研修や外国人向けの就職支援の強化が行われている。長野県白馬村においては、多文化共生支援サイトが設置され、ごみの分別方法や災害時の避難場所などの情報が英語・中国語を含む10言語で提供されている。また、外国人と日本人住民との相互理解と交流を促進する取組みとして、倶知安町においては、多文化体験イベントの開催や交流サロンの開設などが実施されている。
各自治体が独自に多文化共生政策を模索しているのみならず、国も、2025年7月23日・24日に開催された全国知事会議の提言を踏まえ、今後は主体的に司令塔組織の設置など、外国人受け入れのための環境整備を制度的に進めていく方針を示している。
しかし、高市首相の所信表明演説等において示された「司令塔」の機能は、外国人による違法行為や社会的ルールからの逸脱に対する規制強化に重きが置かれており、多文化共生の促進という観点は相対的に後景に退いているように見受けられる。このことは、多文化共生社会の実現よりも、むしろ管理・統制を重視する政策的傾向を示唆しているといえる。
この状況を踏まえると、司令塔組織の設置を含む外国人受け入れのための環境整備においては、国は一方的に規制強化を強調するのではなく、外国人が受け入れやすい多文化共生社会の構築とその実現方法を具体的に提示することが肝要である。例えば、外国人の生活支援を目的とする制度設計や、海外における多文化共生の先進事例の紹介などを通じて、国は自治体による多様な取組みを尊重しつつ、それらを支援・補完する立場を明確にすることが求められると思われる。
外国人の人口増加が進む中、住民税制度を含む関連制度については、外国人に関する諸事項を整備・補完した上で、その運用過程において外国人の理解と協力を得ることが重要である。さらに、国および自治体が共生社会の実現に向けた制度を設計するにあたっては、例えば、外国人住民を対象としたインタビューの実施や、外国人住民に向けた市民会議の開催などを通じて、外国人に意見表明の機会を付与し、双方向に議論を重ねながら制度の設計を進めていくことが、多文化共生の理念に照らしても望ましいであろう。