2026年11月 気になる地方自治トピックス
地域から考えるデータセンターの可能性とリスク
データセンターは、AI(人工知能:Artificial Intelligence)時代の基幹インフラとして地域に投資や税収をもたらす一方、環境や電力供給への負荷が懸念され、コンフリクトが起こっている地域もある。各地の事例と国の推進政策を踏まえ、地域にとってのデータセンターの可能性とリスクを考える。
1. AIとデータセンター
あっという間に、多くの人がスマートフォンやパソコンでAIと日常的にやりとりをする時代となった。AI関連のニュースが、新聞紙面に掲載されない日はないのではないだろうか。2025年5月にはAI法(人工知能関連技術の研究開発及び利用の推進に関する法律)が制定され、総務省が2026年7月に公表した『令和8年版 情報通信白書』(1)は、第Ⅰ部で、「AIの進展がもたらす多面的影響~人間とAIが健全に協働するデジタル社会の実現に向けて~」としてAIを特集している。AIの技術の進展・利用の普及は著しく、生成AIの急速な進化にその暴走を懸念する動きも出始めている(2)。また、AIの進化や業務への浸透が人の仕事を奪うのではとの指摘もある(3)。しかし、個人の利用に加え、幅広い業種の多様な業務へのAI導入の流れは止まることはなく、そのAIを支える重要なインフラがデータセンターである。
データセンターは、企業や団体が、収集し、保有する膨大なデータ(情報)を安全に保管・管理・処理するための設備・専用施設である。AI利用だけでなく、IT機器やスマートフォンを使用してアクセスする情報はすべて、クラウド・サーバーの場合でも、どこかの物理的なサーバーを利用している。情報量の増大で、サーバーを集めた大規模なデータセンターが必要となり、日本では2000年頃からさかんに建設されるようになった(4)。現在は、国内外で建設ラッシュともいえる状況がある。さらに膨大なデータの収集・処理を前提とするAIの進展は、さらに多くのサーバーを備えた巨大なデータセンターを要請している(5)。
2. データセンター建設計画と地域
日本では東京圏、大阪圏を中心にデータセンターの建設が進んでいるが、住宅地などでは、住環境をめぐる摩擦も起こっている。「公害」を出さず、クリーンな印象のあるデータセンターだが、2025年から2026年にかけては、東京圏などでデータセンター建設についての反対の動きが目立っている。
2-1. 日野市東京都日野市では、三井不動産が、2023年9月、日野自動車の工場跡地、約11万4,000㎡を取得し、翌2024年7月、データセンター3棟などを整備する計画(日野DC計画)を公表した。2026年10月頃に着工、2031年2月完成の予定と報じられている。
第1種低層住居専用地域に近接する立地に、最高72mの高さ(20階建マンション相当)の建物が建つこととなり、地域住民は、「巨大データセンターから住民の暮らしと環境を守る市民の会」を結成、三井不動産に対し、データセンターの電力使用量やCO2排出量、空調設備からの排熱量などの開示を求め、日野市に対しては、データセンター計画を認めた「適合通知」の撤回を求め、行政不服審査法に基づく審査請求を提出したという。一方、日野市はまちづくり条例に基づき適正に対処しているとし、三井不動産側も、セットバックや公園の付設などで環境面を考慮しているとして、計画が止まる様相は見られない(6)。
2-2. 昭島市東京都昭島市でも日本GLP㈱がゴルフ場跡地約58万㎡にデータセンターの建物8棟・物流倉庫などを建設する「GLP昭島プロジェクト」を計画。地域住民は「昭島巨大物流センターを考える会」を立ち上げ、見直しを求めている(7)。
2-3. つくば市茨城県つくば市では、大穂地区で計画されているデータセンター(グッドマンジャパン社が2026年2月から建設開始し、将来的には1,000MWの電力利用が見込まれている)計画を巡り、地元の住民が「データセンターから市民を守る会」を設立した(8)。
2-4. 印西市データセンターが集積し、「DC銀座」とも呼ばれる千葉県印西市では、千葉ニュータウン中央駅前のデータセンター計画(印西ファイブ)について、2026年3月、住民が、県に代わって建築確認を出した民間の検査機関(日本ERI)を相手取り、建築確認処分の取消訴訟を提起した。訴訟では、データセンターの法的な位置づけが争点となったという。事業者側は、データセンターを「事務所」または「その他」として届け出るが、住民側は、データセンターは地区計画上認められない「工場」または「倉庫」に当たるのではないかと主張している(9)。住民側はその後、印西市景観審議会に関する支出について住民監査請求を行ったが棄却されたのを受けて、市長に損害賠償を求める訴訟を行っている。
データセンターは、多くの人が集まって製品を製造するような工場ではないため、工場のような排気ガスや騒音は発生しないが、多数のサーバーが24時間稼働し、その冷却のため排熱し、大量の電気を使用する。また、非常電源装置などの騒音が発生する場合がある。窓の少ない巨大な建物であるデータセンターは、これまでになかった類型の建築物であり、建築確認申請などについて「法整備の課題」があり、「事務所」としてよいのかという意見が住民から起こっている(10)。
2-5. 江東区自治体で、独自の制度を設けたところもある。
東京都江東区では、塩浜地区や千石3丁目でデータセンター建設が計画されており、区民から、生活環境への影響を懸念する意見が寄せられていることを受け、2025年12月に「江東区大規模データセンターに係る建築計画の早期周知に関する指導要綱」を制定し、2026年2月から施行した。また、2026年3月には、区民向けに「江東区大規模データセンター建設計画における話し合いガイドライン」を策定している。建築物の高さが10mを超え、延床面積3,000㎡(増築の場合は2,000㎡)を超え、床面積の過半をデータセンターの用に供しているものを対象としている(11)。
2-6. 都市型データセンターあり方検討会データセンターの要素は、建物、サーバーなどのICT機器、通信設備、電気設備、空調設備、セキュリティ設備などである。持続的なサービス提供のために、建物には耐震性と、巨大なサーバーなどの機器を設置した際の荷重に耐える堅牢な構造が求められる。サーバーは多量な電気を使用し、冷却・排熱するためにも電気が必要である。そして、セキュリティ上、必要最小限の人員が厳重なセキュリティチェックの上、建物に入るシステムが求められる。
データセンターが地域にもたらすマイナス面、地域住民に与える不安は、巨大な建築物ができることでの景観破壊、立地によっては自然環境の破壊、騒音、排熱による気温上昇などの環境負荷、多量の電気を使用することでの地域の電力供給逼迫の不安、火災やセキュリティ上の不安などである。また、大量の情報を高速処理するAIサーバーは発熱量が大きく、これまでのデータセンターの空冷式の冷却よりも効率のよい水冷式が求められていることから、AIデータセンターが多く建設されると水需要が増大し、「水リスク」が生じるのではないかとの懸念も指摘されている(12)。
防災拠点や公園を付設するといった地域との共生のための策を講じるデータセンターもあるが、東京、千葉、埼玉の住民・有識者による「都市型データセンターあり方検討会」の座長を務める寺西俊一・一橋大学名誉教授(環境経済学)は、「海外からの投資マネーの大量流入」を指摘し、「この30年、工場跡地などが再開発の対象となり、データセンター建設に転用されるケースが増え」、「大手ディベロッパーや投資ファンドが『利益の最大化』を優先し、地域への『責任ある対応』をしていないのではないか」(13)と指摘している。都市型データセンターあり方検討会は、2026年3月、日本データセンター協会(JDCC)(14)と東京都に対し、データセンター建設のあり方に関する要望書を提出し、都からは3月末に、JDCCからは5月にそれぞれガイドラインが出された。要望事項の多くは反映されたが、法的拘束力はないことから、寺西座長は、データセンターが建築基準法上の「特殊建築物」に該当することを明確にしていくべきであり、自治体レベルで住宅近接地での建設を規制できる条例の整備が必要ではないかと述べている(15)。
3. 世界各地のデータセンター問題
データセンター建設は、日本だけではなく世界各地で問題となっている。
3-1. アイルランド/オランダ北半球の海底ケーブルの約4分の3が周辺を通過するとされるアイルランドでは、1990年代からの誘致策でグーグル社やマイクロソフト社などが拠点を持ち、消費電力のうちデータセンターが占める割合は、2024年で22%を占め、2025年下半期の平均電力価格は0.4ユーロ/1kW時で、EU平均より4割高いという。環境団体「地球の友」は、アイルランドの市民が高い電気料金負担を強いられ、電気料金に隠された「データセンター税」を払わされてきたと告発している。2025年に、新設するデータセンターの電力需要の80%以上を新規の再生可能エネルギーで調達する方針を打ち出したが、電気料金の滞納者が32万人を超える事態が発生しているという(16)。
オランダでは、2025年、アムステルダム市内のデータセンターの新規建設を2030年まで禁止する規制を打ち出した。データ主権を掲げるEUは、域内でのデータセンター設置を推進してきたが、急増する電力消費に再生可能エネルギーや送電網の整備が追いつかない事態が生じているという(17)。
3-2. デンマークデンマークのロスキレに滞在する倉地真太郎・明治大学准教授は、平日の午後に突然の停電を経験し、因果関係は不明だが、自宅近くに2026年3月から稼働しているマイクロソフト社のデータセンターがあり、デンマーク国内では54のデータセンターが稼働し、総電力消費にデータセンターの占める割合は2021年の3%から2024年には7%に上昇していることを報告している(18)。
また、倉地准教授は同稿で、デンマークがGAFA等のデータセンターを誘致してきたが、電力や水の供給の計画がなかったという問題点や、市民がデータセンターを「鉄の野原」と呼び、景観破壊と住宅地の地価の低下などを問題視する報道があることを指摘している。 3-3. 米国世界の約4割を占める4,767のデータセンターが建設されている(建設中も含む)(19)という米国だが、データセンターの建設中止や「モラトリアム」の事例も出てきているという。
データセンターが密集しているバージニア州北部のプリンスウィリアム郡で、国立公園の隣接地域で計画された最大37のデータセンターを含むプロジェクトについて、2023年から住民が裁判で争い、工事差し止めとなっていたが、2026年7月、開発業者が最高裁への上訴を取り下げて計画が白紙となった(20)。
カリフォルニア州とネバダ州の州境のタホ湖周辺の住民は、リバティー・ユーティリティ社からネバダ州の電力会社が売電した電気の供給を受けていたが、ネバダ州リノ市でのデータセンター建設が進み、電力会社が州内への供給を優先するとしたことから、安定した電気供給が見通せなくなった。タホ湖周辺住民とリノ市民が、データセンター建設に抗議し、リノ市議会がデータセンターの建設許可を保留する「モラトリアム(一時停止)条例」を2026年6月に可決した。「モラトリアム」は期限付きの一時停止ではあるが、2026年6月末の時点で116の自治体でデータセンター建設に対し導入されているという(21)。
また、中間選挙を前に、カンザス州知事選挙で巨大なデータセンター投資が論争となるなど、AIによる雇用喪失や莫大な資金力をもつ事業者による野放図なデータセンター投資への懸念が強まっている状況もあるという(22)。
4. データセンター誘致自治体
日本では、データセンターについて指導要綱を制定した自治体がある一方で、投資先、地域活性化の方策として大胆なデータセンター誘致策を打ち出す自治体が増え、地方での立地の動きも目立つ。
2021年から総務省・経済産業省主管で開催されてきた「デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合」でも、東京圏・大阪圏に集中するデータセンターの地方分散の方向性が打ち出され、支援策が検討されてきた(23)。
4-1. 北九州市北九州市では、すでにIDCフロンティア社のデータセンターが稼働、九州最大級となるAPLJ(アジア・パシフィック・ランド・ジャパン)社のデータセンターが建設中であるが、市の『基本計画』の「バックアップ首都構想」の一環として、データセンター誘致の強化を打ち出している。目標として、データセンター5件、関連産業3件、投資決定額1兆円(2026-28年度の3年間)を掲げ、①企業立地促進補助金(設備投資額に対して、市外企業・市内大企業2%、市内中小企業3%を補助、最大10億円)、②最大6年度分の固定資産税免除(地域未来投資促進法に基づき産業用地開発や施設整備を行う事業者の土地、施設(家屋、構築物)対象)、③事業計画の策定や電力、通信インフラの調整などの伴走支援を行う新たな専任組織の設置(課長1名、係長2名、職員1名)といったデータセンター誘致支援策を打ち出した(24)。
データセンターの8割強が東京圏及び大阪圏に集中しているのは、利用者に近い方が通信の遅延が少ないといった理由が挙げられているが、原子力発電所と再生可能エネルギーである太陽光発電・風力発電を擁する九州地方の安価で安定的な電力事情および千葉県・三重県に次ぐ新たな拠点として期待される福岡県北部での国際海底ケーブル接続拠点の整備計画(ソフトバンクグループ)などが、九州北部へのデータセンターの立地を後押しするという(25)。
武内和久・北九州市長は「事業者が地域にどう寄与できるか聞き取り、市も共生に向けたノウハウや知恵を提供する。創造的な誘致をしていきたい」、「市民とデータセンター共生の北九州モデルをつくる」と発言したことが読売新聞のインタビューで報じられている(26)。
4-2. 石狩市2026年7月28日、石狩市は「石狩データセンターコンソーシアム」の設立を発表した。同コンソーシアムには、さくらインターネット、京セラコミュニケーションシステム、石狩再エネデータセンター第1号、Flower Communications、ブロードバンドタワー、東急不動産、NTT ME、石狩地域エネルギー、リエネ、NTT東日本、北海道総合通信網など、地元の事業者の他、大企業が顔をそろえ、AI需要の拡大を見据えた国内有数のデータセンター集積地をめざす(27)。石狩市はこれまで、石狩湾新港地域を洋上風力発電などの再生可能エネルギーを活用したRE(リニューアブル・エネルギー)ゾーンと設定し、データセンター誘致などに取り組んできた。同コンソーシアムは、再生可能エネルギーや通信インフラ、札幌市から車で30分という石狩市の強みを生かして、共同インフラ基盤の強化、市内に立地するデータセンターの価値向上、行政との連携・地域経済の確立を柱に活動するという(28)。
4-3. 秋田市2026年8月、「秋田にAIデータ拠点、日本最大級建設費2兆円」、「国内最大規模のAI向けデータセンター誘致」(29)などの見出しが新聞各紙を飾った。秋田市北部の工業団地の、日本最大級(総受電容量500MW)のAI向けデータセンターの建設は、UAEに拠点を持つ米国ビットグリット社と秋田市のエスツー社を中心とした計画で、UAEの政府系ファンド・ムバタラなどから中長期で数兆円の投資を呼び込むとしている。2026年8月には、UAEのアルファヒーム駐日大使が秋田市を訪れ、造成中の工業団地を視察し、鈴木健太・秋田県知事や沼谷純・秋田市長らと面会した。データセンターは大量の電力を消費するため、秋田県が導入する再生可能エネルギーである洋上風力発電が強みを発揮すると秋田県では期待している。データセンターの建設・運用には日本の大手企業の参画も見込まれる。秋田市の担当者は、UAEの投資、最大級のデータセンター建設が最終決定されたわけではないとしているが(30)、ビットグリット社とエスツー社は2025年10月に秋田市とデータセンター建設に向けた連携協定を結んでおり、2026年5月には、秋田県を交えた産官学組織「秋田AIデータセンターキャンパス設立準備委員会」が発足、県・市も取り組みを加速させ(31)、2026年9月にはGX戦略地域(後述)の認定も受けている(32)。
AIデータセンターは、AIの学習・推論などに使用する大量のデータ処理に特化した施設で、高性能なGPU(画像処理半導体)や高速ネットワーク、大量の電力供給、高度な冷却システムが必要とされる。「世界のAI市場規模は2026年に3,200億ドル(約50兆円)、2030年には8,267億ドルへ拡大」し、国内のAIシステムも2029年に4兆円を超えると予測されている(33)。
国内で稼働中のAIデータセンターは、2026年時点で210拠点、世界の3%ということであるが(34)、国内の大型AIデータセンターの計画は、秋田市(500MW)の他、ソフトバンク社が2026年4月に稼働させている苫小牧市(300MW)、堺市(270MWの拡大計画)、NTTデータグループの千葉県白井市(200MW)と栃木県栃木市(100MW)、鹿児島県薩摩川内市(台湾投資会社など、350MW)などがある(35)。
5. 国のアクセル
国は日本成長戦略の柱として、AIインフラ、データセンターの整備にさらに力を入れようとしている。
「政府は、クラウドデータセンターを成長戦略の主軸に据え、2035年度までに蓄電池も含めて32.7兆円を官民で投じる。電力確保や経済安全保障上の観点から、地方への分散立地も重視する」(36)と報じられている。
5-1. 日本成長戦略と概算要求『令和8年版 情報通信白書』によれば、世界各国のデータセンター数は、米国4,165、2位以下の15か国合計で4,061、日本は242となっている。2025年の世界の売上高見込は5,275億ドル(約82.8兆円、1ドル157円で換算、以下、同)、日本は253億ドル(約4兆円)となっている。2030年の世界のデータセンター市場規模は7,391億ドル(2025年比140%、116兆円)と予測されており、日本についても同程度の伸び率で351億ドル(139%、5.5兆円)との予測が示されている(37)。
同白書では、政府の政策の方向として、2025年11月に設置された「日本成長戦略会議」で「情報通信」が掲げられ、総務省では2026年1月から「情報通信成長戦略官民協議会」を開催し、情報通信分野における官民連携の戦略的投資策等について検討を行い、検討内容を踏まえて「強い経済」の実現に向けた「取組を強力に推進していく」としている(38)。
「日本成長戦略」(2026年7月)の官民投資を促進する17の戦略分野の中には、(1)AI・半導体、(2)デジタル・サイバー・セキュリティ、(3)情報通信が挙げられており(39)、総務省は、2027年度予算の概算要求で、AIインフラ関連予算として、AIの開発・活用、データセンター、海底ケーブルの整備費などで3,495億円を要求、関連経費の一部は上限の定めのない「新たな投資枠」を活用するとしている。次世代通信技術の研究開発1,317億円、AIの信頼性を評価するシステムの開発459億円など、情報通信研究機構での研究開発などを進める。また、自治体のAI活用・DX支援として1,493億円を要求するとしている(40)。内閣府もAIの産業利用の促進で1,000億円を概算要求に挙げている(41)。
5-2. 地域未来投資促進法とGX戦略地域経済産業省所管の地域未来投資促進法(企業立地促進法を2017年に改正、2026年8月最終改正)は、自治体が策定した計画を国が承認すると、自治体が事業者に対して固定資産税・不動産取得税を課税免除または不均一課税を行った場合の減収額の一部を地方交付税で補填する制度(42)、事業者に対して法人税等の特別償却(最大50%)または税額控除(最大6%)などの投資促進税制などで支援する他、農地転用などをスムーズに行う土地利用調整の制度もあり、観光、データセンターなどの事業でも活用されるようになっている。
経済産業省はまた、2025年8月、脱炭素電源等を核とした産業集積の実現に向けて、①コンビナート等再生型、②データセンター集積型、③脱炭素電源活用型の3類型について地域を選定し、支援と規制・制度改革を措置する「GX(グリーントランスフォーメーション)戦略地域制度」を創設し、9月には、第一弾として18地域を認定した。AIデータセンター誘致を進める秋田は、データセンター集積型・脱炭素電源活用型の2類型で選ばれた。データセンター集積型は他に、北海道(石狩市/苫小牧市)、宮城県(富谷市)、栃木県(矢板市)、茨城県(常総市/つくば市)、富山県(南砺市)、香川県(綾川町/坂出市/丸亀市)、福岡県(北九州市/直方市/鞍手町)、鹿児島県(薩摩川内市)が選ばれ、計9地域が認定された(43)。
経済産業省の概算要求は、AI・半導体産業基盤強化フレーム5,272億円、GX推進対策費1兆2,594億円などを含む、7.7兆円余りとなっている(44)。
そして、「地域未来戦略」では、戦略産業クラスター計画、地域産業クラスター計画、地場産業成長プランの3類型の計画で強い地域経済の構築をめざし、『「強く豊かな日本」投資枠』も活用して強力に推進していくため、2026年度は1,600億円でスタートした地域未来交付金の拡充や、「地域未来戦略予算のイメージ」に基づく「地域未来戦略予算パッケージ」の作成が提起されている(45)。
6. データセンターはバブルか地域経済の救世主か
6-1. 推進政策とデータセンター投資の拡大2026年7月に閣議決定されたAI基本計画では、「AI主権」の確立が掲げられ、基盤整備が急ピッチで進められようとしている。データセンターやAI関連事業について、計画承認・地域指定などの制度・財政措置が設けられ、莫大な投資や税収増を期待して、多くの地域が建設・導入競争に加わろうとしている。
省庁挙げての取り組みの様相で、金融庁は年内にも、地方銀行などの大口融資の規制を緩和し、地方企業がAI向けデータセンターや再生可能エネルギー開発に参入しやすくすることをめざすという(46)。
日本経済新聞の調査では、国内のデータセンター運営主要26社のうち22社が国内でのAI向け拡充を計画しており、計画の集計では、データセンターの受電容量は、2025年末の1.1GWから、2033年までに4.9GWに拡大し、3.8GW分のデータセンター建設費は10兆円近く、サーバーや半導体など関連の投資額は数十兆円にのぼると試算している。また外資系も10社以上が日本の拠点の拡充を予定しているという。それらデータセンターの拡充・新設で必要となる電力は「原発4基分近く」とも試算する。そして、世界のデータセンター投資額は年間数百兆円に膨らんでおり、供給過剰となれば、日本での「投資回収に影を落としかねない」と指摘している(47)。
三井住友信託銀行は、国内インフラに特化したファンドの規模を2030年までに5,000億円に拡大するとしている一方、日本生命は2035年までに米国のAIデータセンターなどのインフラに2兆円を融資し、三菱UFJ銀行は米国のAIインフラ投資ファンドに4兆円を超える出資を決めたことが報じられた(48)。AI投資の動きは活発だが、地域間、国際間の競争が激しくなっている。電力不足などでデータセンター建設が進まない事例も出てきており、投資回収の目算が狂うことがあるのではないかとの指摘もある(49)。
データセンターは、地域に膨大な投資をもたらす可能性がある一方で、周到な計画がないと、景観・自然破壊、気温上昇等の環境負荷をもたらし、電力や水の需給を逼迫させる可能性もある。
6-2. 期待される固定資産税データセンターで莫大な建設投資や関連企業の集積などが期待されるが、地域には他にどのようなメリットがあるのだろうか。
建設時の投資額は規模が大きく、2028年操業予定のNTTグローバルデータセンターが建設されることになった栃木市では、投資額2,500億円、固定資産税・都市計画税が年約20億円増えると見込んでいる(50)。データセンターは建物の他、データセンター内に設置される高価で大量のサーバーなどのIT機器の固定資産税が大きい。先に挙げた北九州市のように、データセンター誘致のため、固定資産税の減免をする自治体もあるが、地域未来投資促進法の適用で地方交付税の補填を受けられる。11事業者30棟のデータセンターがあり、「DC銀座」といわれる印西市では、2024年度の固定資産税は10年前より86億円増の約165億円だという(51)。市町村税に占める固定資産税の割合が平均より2割程度高い。サーバーなどの設備は減価償却していくが、通常5年程度で更新されるため、識者は「半永久的に市町村固有の税収が担保される」としている(52)。
6-3. 次世代型へのキャッチアップしかし、データセンターやAIをめぐる技術革新のスピードは速い。
現在、AIサーバーに用いるGPUは性能向上とデータセンターのサーバーラックへの高密度実装が進んでいることから、エヌビディア社のGPUの消費電力は現在の150kW(1ラックあたり)から、次世代型となると1,000kW(1ラックあたり)を超える可能性もあるという。そうしたAIサーバーは処理により消費電力が大きく変動するため、800Vの直流による給電とリチウムの蓄電池システムが提案されているが、800Vとなると設備類がこれまでの「低圧」から「高圧」の扱いとなり、様々な規制がかかる。リチウムイオン電池も危険物扱いとなることや火災の対策なども必要になる…といったことにより、設計変更につながる可能性もある(53)。
今後、どのような技術革新が起こるか見通すことは難しく、地域で運用されている、あるいは計画されているデータセンターが、ワールドワイドの競争に打ち勝てるものであり続けられる保証は心許ないといってはいい過ぎであろうか。
6-4. 限定的な雇用とリスク対応データセンターの雇用は、巨大な建物であっても工場と異なり限定的で、数十人程度といわれる。直接的に人口が増加するといった経済効果はそれほど期待できないが、栃木市では、2棟で80人の雇用、地元から10人以上の雇用を見込み、立地奨励金を1事業所3億円から10億円にひきあげて交付予定ということである(54)。
データセンターの現場に管理・運営の人手はそれほど必要ないが、逆にセキュリティのために、人が近づきにくい形状・構造としていることが多い。また、データセンターは24時間稼働する高い信頼性が求められ、管理・運営のセキュリティの他、建物の安全性や電源、通信の回線、UPS(無停電電源装置)・非常用電源、空調設備など設備の複数装備といった冗長性(リダンダンシー)が必要とされる(55)。信頼性の高いデータセンターを整備するには、それだけ多額の投資が必要となる。
データセンターの建物の耐震性はいうまでもなく、立地は地盤が強固で津波や水害の恐れのないところが適地となる。データセンターは、工場・流通倉庫の跡地や工業団地などに計画されることが多いが、人口減少のなかで、経済性の観点から、農地や住宅地に適した場所にも計画されるようになることは想像に難くない。
6-5. 多面的な地域への影響先に挙げたように、データセンター建設にあたって、米国やオランダでは、電力供給面から休止・中止となるケースが出てきており電力供給が大きな課題となっている。メタ社などのデータセンターが立地するイリノイ州デカルプ市では、メタ社の納めた固定資産税は約116.5億円(2022-25年)になるという。新たにエッジド社が建設するデータセンター計画が承認され、690haほどの農地でトウモロコシ・大豆・小麦などを栽培する農家は、そのうちの200haほどを太陽光発電のため発電事業者に貸し出すという。貿易戦争による農産物価格の低下と肥料等の高騰で農業経営は厳しく、土地を貸した方が収入が「何倍にもなる」という(56)。
日本は人口減少で電力需要は下がるはずだが、データセンターの電力需要増に対応して電力会社は設備投資を進めている(57)。環境負荷低減のために、大量に必要になるデータセンターの電力を、脱炭素電源で賄うことがめざされ、前述のGX戦略地域制度などの活用も進むと思われる。2026年9月、地域未来投資促進法のデータセンター集積型に指定された地域の一つに鹿児島県薩摩川内市がある。計画中のデータセンターは国内最大級、電力容量350MWというもので、川内原発で増設予定だった「3号機の計画が動き出すのではないか」と期待する向きもあるという(58)。巨大データセンター計画は、様々な面から地域のあり方を変えていきかねない。
6-6. 過熱のなかで見極めるべきリスク2026年6月18日、日経平均株価終値が7万円台を記録した。AIや半導体関連の銘柄が上昇し、「AI相場」が続くなか、米国とイランの停戦合意署名報道が契機となった(59)。半導体需要の背景には、データセンターなどAIの開発・普及などの事業への旺盛な投資があるが、データセンターの建設が遅れたり、中止されたりすれば、データセンターへの「投資の回収が想定通り進まないリスク」(60)があり、株価の下振れの可能性も指摘されている(61)。
先に見たようにAI向けなど大規模なデータセンターへの投資の額は、数千億円、さらには兆の桁にもなる。資金の調達手段が複雑になっているとの指摘もある(62)。データセンター建設は様々な事業者の連携が必要となるが、データセンターの運用に際しても、建設事業者と運用事業者が異なっていたり、また利用者は遠く離れた事業者であったり、国外の事業者も含めて様々な主体が複雑に関わる場合もある。秋田や石狩のように、コンソーシアムを設置するなど、自治体の対応、地域との連携・協力にも工夫が必要となろう。
投資が過熱してはいないかといった指摘もある(63)。金融庁は、金融機関のファンド向け融資・不動産向け貸し出しなどとともに、データセンターなどの投融資方針や案件審査、リスク管理などの条項も重点的に確認するとしている(64)。「AIバブルはこうして終わる」というタイトルの記事も登場している(65)。
データセンター、AI関連事業は、人口減少社会のなかでも、今後とも需要増・成長が見込めるものとして地域の期待は大きい。しかし、地域の生活者である住民にとっては、データセンターの建築の巨大さ・景観、環境負荷や電力供給といった面が十分考慮されるべきである。
今後も、データセンターの誘致競争、投資獲得競争が予想されるが、自治体は、競争に身を投じる前に、地域のリスク管理として、地域への負の影響はないか、どのように対応していくべきか、計画は身の丈に合っているかを慎重に検討し、AIやIT関連技術の驚くほどの進歩で環境が変わらないかを注視する深慮した地域づくりが求められる。