地方自治総合研究所

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月刊『自治総研』

2024年4月中央の動き

◎21%が「農山村に定住してみたい」 ― 内閣府

内閣府は2月4日、森林と生活に関する世論調査を発表した。農山村への定住意向では「定住したくない」が63%だが、「定住してみたい」も21%あった。「定住してみたい」との回答者が就いてみたい職業は「農業」が56%で最も多かった。また、農山村滞在の過ごし方では「森林浴で気分転換」43%、「森や湖、農山村の家並みなど景観を楽しむ」41%が多い。なお、「森林・林業行政への要望」では、「土砂崩れなどの災害を防ぐ施設整備」73%、「間伐や植林などによる森林整備」52%などが多かった。

また、内閣府はこのほど、食料・農業・農村の役割に関する世論調査を発表した。国産品と輸入品の選択では「国産品」が89%と圧倒的に高く、その理由では「安全性」が89%あった。さらに、将来の食料輸入について「不安がある」が93%にのぼり、その理由に「国際情勢の変化」56%、「異常気象や災害」50%、「地球環境問題で食料増産に限界」47%などを挙げた。

◎一般財源総額は0.9%増加 ― 2024年度地財計画

政府は2月6日、2024年度の地方財政計画を決めた。地方交付税は前年度比1.7%増の18兆6,671億円、地方税・地方譲与税は同0.0%減の45兆4,622億円、臨時財政対策債は同54.3%減の4,544億円で、一般財源総額(交付団体ベース)は同0.9%増の62兆7,180億円となった。また、「こども・子育て支援加速化プラン」の24年度地方負担分の増(2,251億円)は全額地財計画に計上し必要財源を確保。うちソフトでは地財計画の一般行政経費(単独)を1,000億円増額。ハードでは新たに「こども・子育て支援事業費」(500億円)を計上し、「こども・子育て支援事業債」を創設する。このほか、①定額減税による個人住民税の減収(9,234億円)は地方特例交付金で全額国費で補填、地方交付税の減収(7,620億円)は法定率分の増(1兆1,982億円)で対応②給与改定経費(3,267億円)と会計年度任用職員への勤勉手当支給経費(1,810億円)は所要額を計上③自治体施設の光熱費高騰を踏まえ一般行政経費(単独)に700億円を計上 ― した。

一方、財務省は2月9日、2023年末の国債・借入金・政府保証債務の現在高が1,286兆4,520億円となったと発表した。過去最大を更新した。社会保障費などの増加を税収で賄えない状況が続いている。

◎団員確保へ「消防団地域貢献表彰」創設 ― 消防庁

総務省消防庁は2月6日、消防団の更なる充実を求める総務大臣書簡を全都道府県知事・市町村長に送付した。今年1月の能登半島地震発災などを踏まえ、改めて消防団充実の必要性を指摘。消防団員の担い手不足解消には「やりがい」と「負担感の軽減」が必要だとし、「消防団地域貢献表彰」(総務大臣表彰)を創設するとともに、消防団の活動基盤改善のため①デジタル技術の活用②機能別団員・機能別分団制度の活用 ― を要請。併せて、処遇改善のため幹部・中堅団員の年額報酬の地方財政措置を拡充する。なお、消防団員数(2013~23年)は3大都市圏で9.1%、地方部で13.3%それぞれ減少。アンケート結果では「十分確保されていない」が地方部で69.8%あった。

また、消防庁は2月16日、「防災まちづくり大賞」受賞団体を発表した。同賞は、阪神・淡路大震災を契機に1996年に創設。総務大臣賞に三重県立北星高等学校、(株)とくし丸(徳島市)、若松区東28区市民防災会(北九州市)の3団体を選定したほか、消防庁長官賞に5団体、日本防火・防災協会長賞に9団体を選定。2月27日に都内で表彰した。

◎浄化槽の不適正管理で環境省に改善勧告 ― 総務省

総務省は2月9日、浄化槽行政の調査結果を踏まえ環境省に改善勧告した。全国約753万基ある浄化槽の約半数は生活雑排水を公共用水域に直接放流する単独処理浄化槽で、2001年以降は新設が禁止され、19年の法改正では「特定既存単独槽」として除去の指導制度も創設された。しかし、実態調査の結果、環境省指針では同単独槽に判定されない場合があるほか、清掃・保守点検の情報を収集する都道府県が少なく、浄化槽台帳も活用されていない実態が分かった。このため、環境省に①判定の考え方の見直しと定量的基準の設定②清掃業者や保守点検業者からの情報収集③維持管理に向けた浄化槽台帳の整備・活用 ― などを勧告した。

一方、環境省の中央環境審議会は2月16日、「脱炭素型資源循環システム構築に向けた具体的な施策のあり方」を意見具申した。2050年カーボンニュートラル社会実現に向け、廃棄物を排出する動脈企業と処理・再生する静脈企業が連携する「動静脈連携」と、地方自治体が主導する官民連携処理による地域特性を踏まえた資源循環の推進などを提言した。

◎生活困窮者の自立支援強化へ改正法案 ― 政府

政府は2月9日、生活困窮者自立支援法改正案を閣議決定した。住宅確保が困難な者への自治体による居住相談支援を強化するとともに見守り支援を自治体の努力義務とする。また、生活保護世帯の子ども・保護者に対し訪問等による学習・生活環境の改善、奨学金の情報提供・助言の事業を法定化。さらに、生活保護世帯の子どもが高校を卒業し就職する際に一時金を支給する。このほか、生活困窮者の就労準備支援・家計改善支援・居住支援を新たに生活保護受給者も利用できる仕組みを創設。また、生活困窮者向けの支援会議の設置を努力義務化する。

一方、内閣府は1月29日、「生理の貧困」に対する自治体の取組(2023年7月現在)を発表した。実施団体は950団体で前年より235団体増えた。内訳は、予算措置や防災備蓄などの取組が779団体、交付金活用が221団体など。周知方法では、広報誌やLINE・SNS活用のほか、利用者への配慮では学校トイレに生理用品を設置(葛飾区、川口市)、スマートフォンの画面提示で生理用品を受け取れる(広島県)、外国語のポスター・カード作成(久留米市、指宿市)などの工夫がみられる。

◎二地域居住促進へ市町村が計画を作成 ― 改正法案

政府は2月9日、広域的地域活性化のための基盤整備法改正案を閣議決定した。「二地域居住」の普及・定着により人口減少地域への人の流れを創出するため、①二地域居住促進のための市町村計画(特定居住促進計画)を作成②二地域居住者に「住まい」「なりわい」「コミュニティ」を提供する活動に取り組むNPOや民間企業などを「特定居住支援法人」に指定 ― などを盛り込んだ。特定居住促進計画には、二地域居住の基本方針と拠点施設の整備などを記載。また、市町村は計画作成のため都道府県や支援法人、地域住民、不動産会社、交通事業者、商工会議所、農協などによる「二地域居住等促進協議会」を組織するとした。

一方、国交省と厚労省は「居住支援全国サミット」を3月11日に開催した。高齢者や生活困窮者、障害者、子育て世帯など住宅確保要配慮者に対する居住支援の一環として開催しているもの。基調講演「住まいの相談窓口から体制整備を考える」・井上由起子日本社会事業大学教授に続き、日向市、廿日市市、熊本市の居住支援協議会の取組などが紹介された。

◎都道府県が都市緑地で広域計画策定 ― 改正法案

政府は2月13日、都市緑地法等改正案を閣議決定した。世界と比較しても低い都市緑地率を向上させるため、国交大臣が「都市における緑地保全に関する基本方針」を策定し、都道府県知事が緑地保全に関する広域計画(仮称)を策定する。また、都市計画における緑地の位置付けを明確化。さらに、緑地の機能の維持増進のための事業を「機能維持増進事業」(仮称)と位置付け、特別緑地保全地区で行う同事業の手続を簡素化できる特例を創設。このほか、都道府県等の要請に基づき特別緑地保全地区内の緑地の買入や機能維持増進事業を行う都市緑化支援機構(仮称)の指定制度を創設する。また、都市の脱炭素化に資する都市開発事業者と同都市開発事業を認定する制度も創設する。

なお、国交省は「まちづくりGX」で都市における緑地確保を進めるとし、2030年度のKPI(重要業績評価指標)に①自治体による特別緑地保全地区の指定面積1,000㌶増加(21年度6,671㌶)②民間事業者による緑地確保の認定件数300件 ― を掲げている。

◎少子化対策で「子ども・子育て支援金制度」 ― 政府

政府は2月16日、子ども・子育て支援法等改正案を閣議決定した。こども未来戦略(2023年12月22日)の施策具体化と財源措置などを盛り込んだ。児童手当の支給を高校生にまで延長するとともに支給要件の所得制限を撤廃。また、保育所に通っていない満3歳未満の子どもの通園のための「こども誰でも通園制度」を創設するほか、「ヤングケアラー」を国・自治体の子ども・若者支援の対象に明記。さらに、「妊婦等包括相談支援事業」を創設するとともに、産後ケア事業を地域子ども・子育て支援事業に位置付ける。このほか、両親ともに育児休業を取得した場合に支給する「出生後休業支援給付」と育児期に時短勤務を行った場合に支給する「育児時短就業給付」を創設する。

これらの給付を支える財政基盤として「子ども・子育て支援金制度」を創設する。支援金の費用は医療保険料とあわせて徴収するが、「歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で26~28年度に段階的に導入」する。具体的には、26年度6,000億円、27年度8,000億円、28年度1兆円を徴収する。同日の記者会見で、加藤こども相・武見厚労相はともに『実質増税』を否定した。

◎出生数が75万人と過去最少を更新 ― 厚労省

厚労省は2月27日、2023年の人口動態統計(速報)を発表した。出生数は75万8,631人で、前年より4万1,097人(5.1%)減少。8年連続の減少で過去最少を更新した。一方、死亡数は159万503人で、同8,470人(0.5%)増加。3年連続の増加で過去最多を更新した。この結果、自然増減数は83万1,872人の減で、過去最大の減となった。17年連続の減少。このほか、婚姻件数は48万9,281組で、同3万542組(5.9%)減少。その一方で、離婚件数は18万7,798組で、同4,695組(2.6%)増加した。

また、総務省は1月30日、2023年の住民基本台帳人口の移動報告を発表した。転出入状況を都道府県別にみると、転入超過は東京都の6万8,285人をトップに、神奈川県2万8,606人、埼玉県2万4,839人、大阪府1万792人など7都府県。一方、転出超過は広島県の1万1,409人を筆頭に愛知県7,408人、兵庫県7,397人、福島県6,579人など40道府県。うち、長野県、茨城県、宮城県、山梨県は前年の転入超過から転出超過に転じた。市町村別では511団体(30%)が転入超過、1,208団体(70%)が転出超過だった。

井田 正夫 (月刊『自治総研』編集委員・委嘱研究員、元自治日報編集長)